これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode176 強い人 〜strong person〜

「やあ、急にごめんね」

「お久しぶりです」

 

GGOは、少しお高めなレストラン。

タモン、と名前を伝えると、上階の個室に通された。

 

昨晩の招集に応じ、ALOからやってきたキリトである。

 

「キリトー、ここ」

「ありがとう」

 

シノンに促されるまま、指定された席に収まるキリト。

 

「……さて、あと一人、だね」

「あと一人……」

()()()、ですか」

「そ!!」

 

店主とタスクの言葉に、二人はキョトンとする。

 

「そういえば、キリトくんはもちろんだけど」

「はい」

「シノンさんも、初めてだよね」

「そう……ですね」

 

ここ最近よく耳にする()()()

シノンは、あ、またか、と気づく。

 

それこそ、ほんとに最近。

その()()()、という言葉をよく聞くようになった。

 

シノン自身、かなり活動しているため、そこそこメンバーや協力者の顔と名前を覚えた気でいたが。

その()()()、の存在によって、ここにきて未だなお知らないメンバーがいることを知ったのである。

 

「あぁ、ここだよ」

「……!!」

 

すると、店主が手を挙げて誰かを呼ぶ。

それにつられて振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたね」

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、シノンは目を見開いた。

 

 

それから30分ほど。

4人は次々運ばれてくる料理を頂きながら、近況の報告などに花を咲かせていた。

 

タスクとシノンは言わずもがな、日々の任務の話だが。

キリトの話は面白かった。

 

ユウキが現実で羽を伸ばせている話。

 

色んなところにアスナと共に向かい、学校にも訪れて。

授業に参加までしているそうな。

 

話はその場を和ませて、皆の雰囲気はとてもよかった。

店主も相変わらずのニコニコ顔だ。

 

「はぁ、料理も落ち着いたし」

「……」

「そろそろ話そうか」

 

……そして。

話が切れたタイミングで、店主が食器を置いて話し始める。

 

いわゆる『本題』、だろう。

 

「……そうですね」

「あの話してもいいかい、タスクくん」

「ええ、そろそろ」

 

ワインのような何かを飲みながら、ふぅと息をつくタスク。

店主はそんなタスクを見て笑う。

 

そして。

 

「……では」

「……!!」

 

店主の笑みが、少しだけ固くなった。

シノンは思わず緊張する。

 

「次の任務なんだけど」

「「……」」

「メンツはここにいる4人+依頼者2人で」

「「!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『SJ2』に、出てもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……!?」

 

驚きを隠せないシノンとキリト。

微笑みを崩さない店主と、その横ですまし顔のタスク。

 

そして……相変わらず眠そうな()()()

 

「どっ、ど、え、あの」

「……」

「いいん……ですか? 私達が……()()()()

「ううん、ダメ」

「……?」

 

狼狽えるシノンの言葉に、店主が微笑んで答える。

 

「だから、少しだけ……そうだな」

「工作、ですかね」

「うん、まぁ、タスクくんの言う通りそんなとこ」

「工作?」

「そう。工作したんだ、僕ら……()()()()()()が、表に出ないように」

「「???」」

 

店主とタスクの言葉は相変わらず分からない。

シノンとキリトは掴めない顔をして店主を見つめる。

 

「大丈夫、ちょっとややっこしいけど」

「「……」」

「説明するね、色々あるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、店主は飲み物をテーブルに置いた。

 

 

「いやぁ、なんでも聞いてみるもんだな!!」

「はは……ほんとに、フカのそゆとこ、すごいよね……」

 

時は戻って、数日前。

SBCグロッケンの大通りである。

 

2人のチビ……レンとフカは、並んで歩いていた。

 

「でもこれで安心だな!! 傭兵貸してもらえるんだから!!」

「よ、傭兵……なのかなぁ、なんか少し違くなかった?」

「でも強い人って」

「まぁそう……そうだけど」

 

フカの言葉に、レンは疑問を呈す。

 

ついさっきまで二人は、例のプレイヤーショップ……『ガン・マリア』にいた。

本来は、フカの装備を揃えるために行ったのだが。

 

その先で、思いがけぬ収穫を得たのだ。

 

「本物の傭兵さんはダメだって言われたじゃん、たしか」

「あぁ……そうか、そうだった」

「やっぱり仕事にしてる人は厳しいよ、そりゃ」

「……」

 

フカがたまたま見つけたチラシ。

そう、言わずもがな……『傭兵』のチラシだ。

 

事情が事情ゆえ、懐や時間が許す限り、拾える助け舟は拾いたい。

 

そこで、その『傭兵』を出してもらえないか掛け合ったのだが……。

 

 

 

 

 

 

結果はNG。

 

 

 

 

 

 

なんでも、仕事柄表に出てはいけないような仕事も沢山こなすそうで。

そんな人達だから、そもそも表に出せないんだそうだ。

 

……しかし、こっちもそんなこと聞いてられない。

 

「でもやっぱ話してみるもんだよ、何事も」

「……」

「こっちも色々やばいんだよねって言ったら、理解してもらえたじゃん」

「そうだ……ね、そうだよね」

 

そこでレンは、フカに背中を押されて意を決して話してみたのだ。

 

命が絡んだ話であること。

だからどうしてもあの大会で勝てるだけの戦力が必要であること。

 

すると。

 

「でも……()()()って、一体どんな人なんだろうな」

「んー、傭兵じゃないけど、傭兵レベルの人達って言われたよ」

「まとにかく強いってことか」

「そうだね」

 

店主の顔が明らかに変わったのだ。

常に協力的な姿勢の彼が、それすら飛び越えて積極的に。

 

色々話を聞かれて話して。

色々考えてくれた末、彼は一言二人に言ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『傭兵は出せないけど、こちらから強い人を紹介することはできるよ』

 

 

と。




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