これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「やあ、急にごめんね」
「お久しぶりです」
GGOは、少しお高めなレストラン。
タモン、と名前を伝えると、上階の個室に通された。
昨晩の招集に応じ、ALOからやってきたキリトである。
「キリトー、ここ」
「ありがとう」
シノンに促されるまま、指定された席に収まるキリト。
「……さて、あと一人、だね」
「あと一人……」
「
「そ!!」
店主とタスクの言葉に、二人はキョトンとする。
「そういえば、キリトくんはもちろんだけど」
「はい」
「シノンさんも、初めてだよね」
「そう……ですね」
ここ最近よく耳にする
シノンは、あ、またか、と気づく。
それこそ、ほんとに最近。
その
シノン自身、かなり活動しているため、そこそこメンバーや協力者の顔と名前を覚えた気でいたが。
その
「あぁ、ここだよ」
「……!!」
すると、店主が手を挙げて誰かを呼ぶ。
それにつられて振り返る。
「待たせたね」
その瞬間、シノンは目を見開いた。
✣
それから30分ほど。
4人は次々運ばれてくる料理を頂きながら、近況の報告などに花を咲かせていた。
タスクとシノンは言わずもがな、日々の任務の話だが。
キリトの話は面白かった。
ユウキが現実で羽を伸ばせている話。
色んなところにアスナと共に向かい、学校にも訪れて。
授業に参加までしているそうな。
話はその場を和ませて、皆の雰囲気はとてもよかった。
店主も相変わらずのニコニコ顔だ。
「はぁ、料理も落ち着いたし」
「……」
「そろそろ話そうか」
……そして。
話が切れたタイミングで、店主が食器を置いて話し始める。
いわゆる『本題』、だろう。
「……そうですね」
「あの話してもいいかい、タスクくん」
「ええ、そろそろ」
ワインのような何かを飲みながら、ふぅと息をつくタスク。
店主はそんなタスクを見て笑う。
そして。
「……では」
「……!!」
店主の笑みが、少しだけ固くなった。
シノンは思わず緊張する。
「次の任務なんだけど」
「「……」」
「メンツはここにいる4人+依頼者2人で」
「「!!」」
「『SJ2』に、出てもらう」
「え……!?」
驚きを隠せないシノンとキリト。
微笑みを崩さない店主と、その横ですまし顔のタスク。
そして……相変わらず眠そうな
「どっ、ど、え、あの」
「……」
「いいん……ですか? 私達が……
「ううん、ダメ」
「……?」
狼狽えるシノンの言葉に、店主が微笑んで答える。
「だから、少しだけ……そうだな」
「工作、ですかね」
「うん、まぁ、タスクくんの言う通りそんなとこ」
「工作?」
「そう。工作したんだ、僕ら……
「「???」」
店主とタスクの言葉は相変わらず分からない。
シノンとキリトは掴めない顔をして店主を見つめる。
「大丈夫、ちょっとややっこしいけど」
「「……」」
「説明するね、色々あるんだ」
そう言って、店主は飲み物をテーブルに置いた。
✣
「いやぁ、なんでも聞いてみるもんだな!!」
「はは……ほんとに、フカのそゆとこ、すごいよね……」
時は戻って、数日前。
SBCグロッケンの大通りである。
2人のチビ……レンとフカは、並んで歩いていた。
「でもこれで安心だな!! 傭兵貸してもらえるんだから!!」
「よ、傭兵……なのかなぁ、なんか少し違くなかった?」
「でも強い人って」
「まぁそう……そうだけど」
フカの言葉に、レンは疑問を呈す。
ついさっきまで二人は、例のプレイヤーショップ……『ガン・マリア』にいた。
本来は、フカの装備を揃えるために行ったのだが。
その先で、思いがけぬ収穫を得たのだ。
「本物の傭兵さんはダメだって言われたじゃん、たしか」
「あぁ……そうか、そうだった」
「やっぱり仕事にしてる人は厳しいよ、そりゃ」
「……」
フカがたまたま見つけたチラシ。
そう、言わずもがな……『傭兵』のチラシだ。
事情が事情ゆえ、懐や時間が許す限り、拾える助け舟は拾いたい。
そこで、その『傭兵』を出してもらえないか掛け合ったのだが……。
結果はNG。
なんでも、仕事柄表に出てはいけないような仕事も沢山こなすそうで。
そんな人達だから、そもそも表に出せないんだそうだ。
……しかし、こっちもそんなこと聞いてられない。
「でもやっぱ話してみるもんだよ、何事も」
「……」
「こっちも色々やばいんだよねって言ったら、理解してもらえたじゃん」
「そうだ……ね、そうだよね」
そこでレンは、フカに背中を押されて意を決して話してみたのだ。
命が絡んだ話であること。
だからどうしてもあの大会で勝てるだけの戦力が必要であること。
すると。
「でも……
「んー、傭兵じゃないけど、傭兵レベルの人達って言われたよ」
「まとにかく強いってことか」
「そうだね」
店主の顔が明らかに変わったのだ。
常に協力的な姿勢の彼が、それすら飛び越えて積極的に。
色々話を聞かれて話して。
色々考えてくれた末、彼は一言二人に言ったのだ。
『傭兵は出せないけど、こちらから強い人を紹介することはできるよ』
と。
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