これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
3月最初の週のとある日。
レン、もとい、香蓮は、2月最後の週から今日まで、久々に北海道に帰っていた。
まあいわゆる「帰省」と言うやつである。
とは言っても、もう帰り道なのだが。
「……楽しかった」
飛行機のシートに背中を預けると、ふっと息が抜けて思い出が脳裏に浮かんでは消える。
帰省、といっても、したことといえば実家にいるか親友の美優と懐かしの場を巡るかしかしてない。
相変わらず彼女は元気だった。
懐かしのカラオケで、SJの話から始まり、ALO統一なんとかの様子を興奮気味に話す様子が既に懐かしい。
「ふふ」
結局、懐かしの場所、その場にいさえすればそれでいいのだ。
そこで生活を営むこと、それが最も心安らげる瞬間なのである。
香蓮は息をつくと、窓の外で離れゆく故郷を眺める。
次帰れるのはいつになるだろうか。
そんなことを思いつつ眺め……そして。
次第に眠りについた。
✣
「……ん?」
その後香蓮が目を覚ましたのは、意外にも数分後の事だった。
ズボンのポケットの中で、しきりにスマホが震えたからである。
おぼつかない視線をまぶたでおさえつつ、香蓮はスマホを取り出す。
すると。
「!!」
スマホの画面にあったのは。
『SJ2 開催決定のお知らせ』
「や、やるんだ……!!」
香蓮は目を見張る。
まぁでも、それもそうか。
みんなやる気満々だし。
聞けば、前回大会はかなり好評だったらしい。
そもそも、BOBが個人戦であること自体、不満に思うプレイヤーが沢山いるのだ。
モンスター狩るにも、それを狩らんとするPKプレイヤーも。
言ってしまえば絶対にスコードロンを組んでいる。
『スコードロンとして強い奴がいちばん強い!!』なんてことを言い出す者もいる始末。
「……はは」
でも。
香蓮はさらさら、出る気が起きなかった。
よく見ると、日程に「予選」なんてものが追加されている。
参加者爆増を予見しているのだろう。
尚更出る気が失せる。
前回はマイナーだったから何とかなったのだ。
そもそもレン自身、最後の戦いは相手のリザインで終えている。
譲られたにすぎない、というのが、彼女の考えなのだ。
今回なんて、ただでさえ前回で苦しめられたガチモンスコードロンが爆増するに過ぎないのだ。
そもそも仲間がいない香蓮……いや、レンには、到底無理なお話。
「……ふぅ」
香蓮は、そそくさとスマホの画面を閉じると。
また眠りに落ちてしまった。
アマゾネス達からのメールが来ていることも知らずに。
✣
「……お」
一方。
GGOの『ガン・マリア』。
「……へぇ」
店の奥、工房スペースで、コーヒー片手にくつろいでいた店主がぐい、と体を起こした。
おもしろそうにページをスクロールする。
「……なるほど」
一通り読み終わったのか、ページから目を離すと天井を見上げて少し笑う。
「ちょうど彼、新しくなるし。タイミング最高じゃない」
そう呟いて、前に向き直ると。
「んん〜、僕も、少し頑張っちゃおうかな」
そう言って、目の前の机に置かれた
その顔には、少しだけ悪巧みが……。
✣
「……ねぇ」
「ん?」
一方、GGOフィールド。
小高い丘に、いつもの2人が構えている。
ヘカートIIを構え、地面に寝そべるクワイエットが、後ろでしゃがむボスに問う。
「……あの銃、使わないの」
「……」
あの銃。
言わずもがなゲパードであろう。
ボスは覗いていた単眼鏡を目元から下げ、クワイエットを見た。
こちらを見もせずヘカートを覗き続けるクワイエット。
言わずもがな、答えを待っているのが分かる。
「……あれは……な」
「……」
ボスがゆっくり話し出す。
「あれは、俺のじゃない」
「……え?」
予想外の答えに、思わず言葉を返すクワイエット。
スコープの視線は外さないが、明らかに反応している。
「あれは、な」
「……」
「僕の、です」
お久しぶりです。
大変お待たせ致しました。
明日、またこれくらいの短いものを投稿します。
繋ぎ話をどうにかしようとしましたが、もう開き直っちゃいます。
うはうは!! (?)
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