これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode169 淑女 〜The Boss〜

パキパキ。

薪が割れて、火の粉が散る音。

 

グツグツ。

何かを煮込む、お腹の空く音。

 

「ん、んんぅ……」

 

()()()()は、ぼやける視界に目を擦る。

 

「んん……?」

 

ようやく見えてきた視界に映るは薄暗い空間。

だんだん体の感覚も起きてきて、ほのかに温かい感触を横から感じる。

 

目を凝らすと木目が見えた。

 

 

 

 

 

 

ここは……ログハウス?

 

 

 

 

 

 

「……ああ、起きたか」

「……?」

 

するとその時。

聞き覚えのない声が彼女に気づく。

 

「いいタイミング。ちょうどできたんだ……ほら」

 

そう言って、コツコツと音を立てて歩いてきたのは、()()()()()

かたり、と彼女の前のローデスクに料理をのせた盆を置いた。

 

少女はそれを見ると、ゆっくり体を起こす。

 

「体の調子は。動かないところ、痛みはないか」

「……は、はい……大丈夫」

 

淑女の言葉に答えつつ、その少女は寝ていたソファーに座り直す。

 

正面の暖炉から暖かい風を感じる。

手前のローデスクに置かれたシチューがとても美味しそうだ。

 

その淑女は、彼女のシチューを見る目を見て、安心したように微笑む。

 

「ん……よさそう、だな」

「……」

 

美味しそうなシチューを見つめ続けるその少女。

 

「さ、召し上がれ。()()()()に来て最初の食事だ」

「!!」

 

すると淑女はそう言って、台所だろうか、元いた場所に戻っていく。

対して少女は、何かを思い出したかのようにその淑女を見た。

 

「……ふむ、記憶も正常のようだな」

「あ、あ、あの。ここが……」

「まあまあ、そう先を急ぐな。時間は無限にある」

「……!!」

 

何かを聞こうとするが言葉に詰まる。

 

少女に向けられた淑女の目。

まるで()()()()()()()()()()()()………、見覚えのある、あの目。

 

「……まずはそれを食べなさい。腹が減ってはなんとやら、だ」

「……いただき……ます」

「はい、どうぞ」

 

淑女の優しい声色が後ろから聞こえる。

 

乳白色、とはまさにこの色と言わんばかりの美しい色。

具材は全て適切に火が通され、どれも気持ちのいい歯応えを返して噛み切れる。

 

味もくどくなく薄くなく、極めて美味。

 

「お、おいひっ……!!」

 

久しぶりに食べた、()()()の料理。

その少女の額には涙が。

 

「ふふ……」

 

淑女は、そんな少女の横顔を眺めつつ、台所から持ってきた自分の分のシチューを口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少女はもう。

何もかも忘れてそのシチューに夢中になっていた。

 

 

「ごちそう……さま……でした」

 

数分後。

シチューをあっという間に食べ終えた少女は、我に返ったように手を合わせていた。

 

「……いい食べっぷりだったぞ」

「おいしかった……から……」

 

淑女は微笑みながら、空になった器を下げていく。

その様子を一瞥し、会釈程度に頭を下げるその少女。

 

コツコツ、と足音が遠ざかって。

また近づいてくる。

 

……そして次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

その少女は飛び上がった。

他でもない、()()()()()を、知るはずのない人から呼ばれたから。

 

「……そんな驚かなくても」

「……!!」

 

そう言って微笑みつつ、その淑女は少女……否、ユウキの斜め向かいのソファーに座る。

 

「まぁ……なんだ。色々聞きたいことはあるだろうが」

「……?」

「まずはあなたのことを、()()()()()()()、聞かせておくれよ」

「……」

 

穏やからがら、どこか儚げな……。

()()()()によく似た、優しい目。

 

ユウキは相対するその淑女を、食い入るように見つめる。

 

外見は30代程だろうか。

淑女、というにはまだ若いかもしれないが、もう十分なほど高貴さと儚さを備えた美しい女性。

 

体は細く身長は高い。

しかししっかりと肉付きがある。

 

ユウキにはわかる。

この女性は、間違いなく…………()()

 

「名前くらいは、述べておこうか」

「……」

 

 

 

「私の名前は……ユリエ」

「ユリ……エ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やりあってみてどうだった…………私の()()は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っ!!!!」

 

その瞬間。

ユウキは全てを理解した。




お久しぶりでございます、駆巡 艤宗でございます。

いやぁ、やっと終わりました『ユウキ編』。
間隔が大幅に空いてしまったこともあり、なんだかんだ言ってほぼ二年かかってしまいました。

お付き合いいただき本当にありがとうございました。

……さて、では本題に入りましょう。




『第二弾大型アップデート』を行いました!!




【。」を全解消】
以前より御指摘があり、あえて残してきましたが、この度全話において全撤廃しました。

【公式LINE 大幅更新】
・各単語追加
・隠し要素2つ追加
・7章あらすじ追加
・キャラ情報を最新バージョンにアップデート

【設定集 更新】
・キャラ情報を最新バージョンにアップデート
・ガジェット欄から奥義と禁忌技の削除(文章量調整のため。詳細は全て公式LINEに移行済です。)





以上になります。

この作品も、なんだかんだ言って続けてこれております。
最近は地味にお気に入り数が伸びており、また嬉しい限りです。

これもひとえに。
ここまで読んでくださる皆様のおかげです。

ひとまずユウキ編、これにて完結になります。
お付き合い頂き、ありがとうございました。

この章は思い入れのある方が多いでしょう。
今作の結末はいかがでしたか? ぜひ感想をお聞かせください!!

ではまた。


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この動画にしかない物語の鍵があります……。

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