これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「あの話、通したのかい」
「あぁ……うん、彼女は快諾してくれたよ」
「そうか……」
都内、とあるバー。
菊岡と店主、もとい多門が、カウンター席に並んで座っている。
「いやはや……ね」
「?」
「厄介になると思っていた親権者とかの話が驚くほどすんなり進んだんだ」
「……」
「複雑な気分になったよ……こんな僕でもね」
「……そうか」
首を傾け息をつく菊岡。
多門も少し複雑そうな顔になる。
「かわいそう、という単語を使うのがかわいそう……かな」
「……」
「あんな子が……いるんだな」
「ああ……」
菊岡の独り言のような語り口に、多門はただただ聞き入っていた。
「お待たせしました」
するとその時。
マスターが頼んでいた飲み物をトレイに乗せて持ってきた。
「ああ……ありがとう」
「どうも」
二人は各々、自分が頼んだものを受け取る。
……と、その時。
「お顔が……暗いですね多門」
「ん……ああ、まぁね」
マスターが、優しげに微笑みながら多門を見た。
「マスター」
「はい?」
すると多門が顔をあげ、マスターを見る。
「もし君が……」
「?」
「自分が恵まれていない、と感じたら、どう考える?」
「恵まれて……いない?」
そんな質問は至極当然、というような顔をしている多門と、きょとん、としているマスター。
今度は菊岡が、ただただ二人を見つめて聞き入っている。
「私は……きっとこう思うでしょう」
「……」
すると。
マスターは下を向いてグラスを拭き始めた。
「
「……なるほどな」
「ええ」
多門が不意に微笑んで、飲み物を仰ぐ。
マスターもそれに応えて微笑みを返し、語り続ける。
「その逆境は、きっと恵まれていなければいないほど、大きく、困難でしょう」
「……」
「それを乗り越えれるか否か……そこにその人の強さがあるのではないか、と」
「……さすがだな」
「ふふ……恐れ入ります」
その他方、菊岡は二人を見つめている。
顔はどこか沈み気味だった。
✣
「……ああ、そういえば」
バーからの帰り道。
多門が思い出したように話し出す。
「今度のSJ、君らは来るのかい?」
「……!!」
SJ。
そういえばなんかついこの間、開催の案内が来てたような。
菊岡も今更思い出したような顔になる。
「んー……まだ検討中だ、お陰様で向こうがなんて言うか分からないし……」
「あーっ……は、それは……すまない……」
菊岡の言わんとしていることを多門は察する。
前回のSJでは、リアルにこだわりを見せた菊岡のチームを、ゲームならではすぎるやり方で圧倒してしまったのだ。
そりゃ、向こうも考えが変わるだろう。
それがいい方向か悪い方向かは……ともかく。
「いや、でも」
「?」
「ひょっとしたら……出ない方がいいかもね」
「……?」
多門の意味ありげな言葉に首を傾げる菊岡。
「いや、その……」
「?」
「次、
「なっ……!?」
菊岡は目を丸くした。
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