これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「ああ、どうも、すみませんわざわざ」
「いえいえ、こちらこそ……」
3月の頭。
とある男が、とある大きな病院に訪れていた。
「……彼女は、どこに」
「ええ、すぐご案内します」
訪ねてきた男は、早速と言わんばかりに応対した医師に詰め寄る。
医師も医師で、早々に頷くと足早に歩きだす。
「えと……話が通ってるはずです」
「あ、はい……」
途中、受付カウンターに寄り、その男はそう言って名刺を差し出す。
医師は黙って後ろに立っている。
そこに書いてある名前は。
『菊丘』
✣
「タスク」
「?」
一方、GGO。
店主の店でくつろぐタスクの元に、シノンがログインしてやってきた。
「おやシノンさん」
「今日は暇そうね……よかった」
あたりを見回し微笑むシノン。
タスクはそんな彼女を見上げ、見つめている。
「シノンさん?」
「……ええ」
タスクの鋭さは相変わらず。
観念したかのように頷くシノンは、彼の隣にストンと腰を下ろした。
タスクはどこか得意げに、ふふんと笑って少し横にずれる。
対し、少し不服そうに息をついたシノン。
ぐっ、と何か決心したかのように手を握りしめる。
そしてたった一言。
「あの話……正解」
「ふふ……ですよね」
少し呆れた感じのシノンの言葉に、タスクは嬉しそうにはにかんだ。
「アスナびっくりしてたわ。何なら若干引いてた」
「まあ……そりゃ気持ち悪いですよね」
「自覚あるのね……」
シノンは今度こそ呆れたようにため息をつく。
……が。
「……までも、そう……ですか」
「……!!」
すぐ隣から、低く重たい声が聞こえてくる。
それを聞いたシノンの顔も暗く沈む。
「やっぱり……残念?」
「……まぁ」
シノンが問う。
タスクは窓の外を眺めて息をつく。
「まあでも」
「?」
しかし、次の瞬間。
タスクがたん、と立ち上がると、窓の外を眺めつつ微笑んだ。
「彼女は生き続けます。
「……!!」
タスクの横顔を見つめるシノン。
彼女は思索を巡らす。
「いろんな形」とは。
技が残る? 思い出が残る? それとも記録?
視線を感じる。
ふと顔を上げる。
「……!!」
すると、いつの間にかタスクがシノンを見て微笑んでいた。
「な……なによ?」
「ん……ふふ」
「……?」
シノンの怪訝な目に微笑みを返すタスク。
不思議そうに首を傾げる彼女を見つめる穏やかな目つき。
……そんなタスクは、たった一言。
「……その考えは全部、不正解」
「不正……解!?」
穏やかながら全てを見抜いた彼の目は、相変わらず黒く澄んでいた。
大変、お待たせしました。
お久しぶりです、駆巡 艤宗でございます。
3月はまるまる音沙汰無し、4月もあわや、と言うところでの投稿になってしまいました。
Twitterで心配のお声を下さった方、何も言わずただただ信じて待って下さった方、ありがとうございました。皆様大変ご心配をかけました……
実は私。
新型コロナ陽性が出てしまっていました。
しかもしっかり体調を崩しまして……。
もちろん、今はとっくに完治しております。
3月の半ばあたりの話です。
それに伴い、色んなところへの復帰やらなんやらに勤しむあまりこんな時期に……。
大変申し訳ございませんでした!!!!
実は今話の原稿は3月頭には完成しておりました。
ただ、今話、「新しい試み」を導入した記念すべき回であり、どうしても中途半端には出せず、この時期になってしまいました……。
ではその「新しい試み」とは、一体何か。
それすなわち、『伏線話』の導入です!!
今話の文字数がかなり少ないことに、皆様お気づきかと思います。
実はそれが『伏線話』の最大の特徴です。
文字数を減らして、余計な話をあまり挟まず。
記憶に残しやすく、かつ伏線であると明確に察してもらう。
これが今回の新しい試みです。
当然、伏線というのは本来、あまりおおっぴらに言うものではないことは承知しています。
しかし、読み返しやすさだったり、ネット小説はおろか、小説自体がまだ初めたての人にもなるべく読みやすくしよう、と言うのがこの作品の根底にあります。
もちろん玄人向けにかなり手の込んだ伏線も散りばめてあります。
……が。
そんなのよりもまず、伏線というものの面白さを知りたい!! と言う人向けに、今回導入してみました。
わかりやすいように、今話の伏線の回収はすぐにやってきます。
今後ともぜひ、お楽しみください!!
駆巡 艤宗