これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode163 正解と不正解 〜Correct and incorrect answers〜

「ああ、どうも、すみませんわざわざ」

「いえいえ、こちらこそ……」

 

3月の頭。

とある男が、とある大きな病院に訪れていた。

 

「……彼女は、どこに」

「ええ、すぐご案内します」

 

訪ねてきた男は、早速と言わんばかりに応対した医師に詰め寄る。

医師も医師で、早々に頷くと足早に歩きだす。

 

「えと……話が通ってるはずです」

「あ、はい……」

 

途中、受付カウンターに寄り、その男はそう言って名刺を差し出す。

医師は黙って後ろに立っている。

 

そこに書いてある名前は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『菊丘』

 

 

「タスク」

「?」

 

一方、GGO。

店主の店でくつろぐタスクの元に、シノンがログインしてやってきた。

 

「おやシノンさん」

「今日は暇そうね……よかった」

 

あたりを見回し微笑むシノン。

タスクはそんな彼女を見上げ、見つめている。

 

「シノンさん?」

「……ええ」

 

タスクの鋭さは相変わらず。

 

観念したかのように頷くシノンは、彼の隣にストンと腰を下ろした。

タスクはどこか得意げに、ふふんと笑って少し横にずれる。

 

対し、少し不服そうに息をついたシノン。

ぐっ、と何か決心したかのように手を握りしめる。

 

そしてたった一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの話……正解」

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ……ですよね」

 

少し呆れた感じのシノンの言葉に、タスクは嬉しそうにはにかんだ。

 

「アスナびっくりしてたわ。何なら若干引いてた」

「まあ……そりゃ気持ち悪いですよね」

「自覚あるのね……」

 

シノンは今度こそ呆れたようにため息をつく。

 

……が。

 

「……までも、そう……ですか」

「……!!」

 

すぐ隣から、低く重たい声が聞こえてくる。

それを聞いたシノンの顔も暗く沈む。

 

「やっぱり……残念?」

「……まぁ」

 

シノンが問う。

タスクは窓の外を眺めて息をつく。

 

「まあでも」

「?」

 

しかし、次の瞬間。

タスクがたん、と立ち上がると、窓の外を眺めつつ微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女は生き続けます。()()()()()()ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

 

タスクの横顔を見つめるシノン。

彼女は思索を巡らす。

 

「いろんな形」とは。

技が残る? 思い出が残る? それとも記録?

 

視線を感じる。

ふと顔を上げる。

 

「……!!」

 

すると、いつの間にかタスクがシノンを見て微笑んでいた。

 

「な……なによ?」

「ん……ふふ」

「……?」

 

シノンの怪訝な目に微笑みを返すタスク。

不思議そうに首を傾げる彼女を見つめる穏やかな目つき。

 

……そんなタスクは、たった一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その考えは全部、不正解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不正……解!?」

 

穏やかながら全てを見抜いた彼の目は、相変わらず黒く澄んでいた。




大変、お待たせしました。
お久しぶりです、駆巡 艤宗でございます。

3月はまるまる音沙汰無し、4月もあわや、と言うところでの投稿になってしまいました。

Twitterで心配のお声を下さった方、何も言わずただただ信じて待って下さった方、ありがとうございました。皆様大変ご心配をかけました……

実は私。
新型コロナ陽性が出てしまっていました。

しかもしっかり体調を崩しまして……。

もちろん、今はとっくに完治しております。
3月の半ばあたりの話です。

それに伴い、色んなところへの復帰やらなんやらに勤しむあまりこんな時期に……。

大変申し訳ございませんでした!!!!

実は今話の原稿は3月頭には完成しておりました。
ただ、今話、「新しい試み」を導入した記念すべき回であり、どうしても中途半端には出せず、この時期になってしまいました……。

ではその「新しい試み」とは、一体何か。




それすなわち、『伏線話』の導入です!!




今話の文字数がかなり少ないことに、皆様お気づきかと思います。

実はそれが『伏線話』の最大の特徴です。

文字数を減らして、余計な話をあまり挟まず。
記憶に残しやすく、かつ伏線であると明確に察してもらう。

これが今回の新しい試みです。

当然、伏線というのは本来、あまりおおっぴらに言うものではないことは承知しています。

しかし、読み返しやすさだったり、ネット小説はおろか、小説自体がまだ初めたての人にもなるべく読みやすくしよう、と言うのがこの作品の根底にあります。

もちろん玄人向けにかなり手の込んだ伏線も散りばめてあります。

……が。
そんなのよりもまず、伏線というものの面白さを知りたい!! と言う人向けに、今回導入してみました。

わかりやすいように、今話の伏線の回収はすぐにやってきます。

今後ともぜひ、お楽しみください!!



駆巡 艤宗

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