これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

160 / 189
Episode158 負けてもいい 〜I can lose〜

ユウキの動きが、明らかに変わった。

 

より俊敏に、より繊細に。

そして最も感じられるのは……。

 

 

 

 

 

 

 

より、()()()

 

 

もう、止められなかった。

タスクのあの一言を聞いた時。

 

体が動くのは、もはや本能に等しかった。

 

ガッ‼︎ キィ‼︎

「はっ……ぁぁぁぁああああ!!!!」

 

二連撃したユウキの剣は当然の如く弾かれる。

それでもユウキは止まらない。

 

《命……賭けてやるよ、姉ちゃん!!》

 

ユウキは脳裏に大好きだった姉の姿が浮かぶ。

 

アスナは「話していない」という。

自分の境遇を。

 

 

 

 

 

否…………()()を。

 

 

 

 

 

バチィ‼︎ ガキィ‼︎

「がっ……ああああ!!!!」

 

タスクの刀がユウキの剣にあたり、後ろに飛ばされそうになる。

 

ユウキはもう何もかも知られているようにしか思えなかった。

あまりにそう思わせる言い方をタスクがしたから。

 

ゴッ

「ぐっ……ああああ!!!!」

 

タスクの刀は相変わらず重い。

それでも止まれない。

 

とにかく、全てを叩き込む。

 

「いけ、いけぇぇぇぇ!!」

「ユウキーーー!!!!!!」

 

観客の中から、はっきりと聞こえる。

いつものみんなの応援が。

 

ユウキの剣がタスクのこめかみを掠める。

すぐさま飛んでくるタスクの剣を弾いて防ぐ。

 

 

 

ゾクゾクする感覚がしてくる。

 

 

 

《ああ……これが》

「……!! ふふ」

 

ユウキの顔に気づいたタスクはしかと微笑む。

 

 

 

 

 

 

《これが……獣!!!!!!》

 

 

 

 

 

 

バチィ‼︎

「ちぃ……!!」

 

その瞬間、ユウキの剣がタスクの刀に若干食い込んだ。

初めて、タスクの顔が少しだけ歪む。

 

「いけぇぇぇ!!!! ユウキぃぃぃ!!!!!」

 

シウネーの珍しい大声が聞こえる。

だがその声はどこか蚊帳の外だ。

 

ビュンビュン!!

「っ……と」

 

ユウキが得意の突きを二連撃。

タスクは当然見切って避ける。

 

《この戦いに……命を懸けた戦いに……》

ガンガン!!

 

ユウキの剣がタスクの上段斬りで揺れる。

 

 

 

 

 

 

《「()()()()()()」は…………ない!!!!》

 

 

 

 

 

 

ゴッ!!

「がっ……あ!?」

 

その瞬間、タスクのみぞおちにユウキの拳がくい込んだ。

 

斬撃をいなして、その直後。

すかさず懐に潜り込んでの一撃。

 

タスクの体が若干浮く。

 

 

 

キィィィィィ!!!!

「きっ……来た!!!!」

 

 

 

ユウキの剣が紫の光を放つ。

 

アスナは直感で分かる。

この構え、この間合い、このタイミング。

 

間違いない。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()!!!!」

 

 

 

 

 

「はぁぁぁっっ!!!!」

「っ……!!!!」

 

アスナの叫んだ声が、まるでアニメのナレーションのように聞こえる。

ユウキはその声を背中で感じつつ、また背中を押される感覚で、タスクへ剣を突き出す。

 

その瞬間。

 

パリィッ……‼︎

「なっ……!?」

 

ユウキの剣の光が、一瞬にして消えた。

 

剣術破壊(スキルブラスト)……!!」

「あっ……!!」

 

キリトが思わず厳しい目を見せる。

 

そう、キリト自身が対タスク戦で敗北の決定打として受けたことがある、あの技。

キリトの武器破壊(アームブラスト)の、言ってしまえば上位互換。

 

ソードスキルを無効化し、()()()()()

 

「うーわ、よくやるよ。はは……」

「店主……さん?」

 

店主のぼやきにアスナが反応する。

 

「ん? あ、いや、ね」

「?」

「今タスクくん、ユウキさんの剣を上から叩き斬ったんだよ。よくやるなあって」

「な……!?」

 

店主のあっけらかんな言葉に、アスナはもちろん周りは絶句する。

 

突きで出てきた剣を、上から叩き斬るのは想像に難くない至難の技だ。

横から飛んできた剣とは訳が違うし、そもそも当たる確率がこの上なく低い上外した時のリスクがデカすぎる。

 

「上からぶっ叩かれりゃ、さすがのマザロザとて止まるよね」

「……!!!!」

 

店主の言葉はゆっくりだが、戦いは続く。

 

ソードスキルは、通常繰り出した後に「クールタイム」と呼ばれる硬直時間がある。

滅多にない無効化を受けた後でも、それは同じだ。

 

しかし。

 

「なっ……んでだよ!?」

「はあああああああ!!!!!!」

 

タスクは思わず悪態を吐く。

なぜならそれは、()()()()()()()()()()()()()()

 

クールタイムの長さは、そのプレイヤーの技量に準ずる。

 

つまり、極端な話。

そのプレイヤーが極端に強ければ、クールタイムも極端に短くできる、ということだ。

 

キィィィィィ!!!!

「今度こそ……!!」

 

アスナは思わず、自分の手を握りしめる。

 

「おあああああああ!!!!」

「ぐ……!!」

 

再び光った剣が、タスクの体へ叩き込まれる。

 

……しかし。

 

「……!!!!」

キィィィィィ!!!!

 

タスクの目が少し鋭くなる。

同時に、タスクの刀が輝き始めた。

 

「……来る!!」

 

キリトは察したのか、目を細める。

 

 

 

 

 

「『紫電(シデン)』……!!」

 

 

 

 

 

店主の声が脳裏に蘇る。

 

あれは確か……タスクとの決闘のあと。

ダイシー・カフェで、店主と話した時。

 

『ちなみにあれの名前は、『紫電(シデン)』』

『『紫電(シデン)』……』

『そ。その『紫電(シデン)』っていう単語は、元は「研ぎ澄ました刀の反射する光」って意味』

『……』

『その鋭い光のように……刀で敵の弱点を穿つ。それも1回じゃなくて、確かあれは……3箇所、かな。つまりは、あの一瞬の間に3連撃してるのさ』

『……!!!!』

 

キリト自身の感覚では、()()()()()()()()()()と感じた、あの技。

 

「はは、()()()か……タスクくん……!!」

「そっち……!?」

 

しかしその瞬間、店主の一言で、キリトは戸惑いを見せる。

そして。

 

「ああっ!!」

 

アスナが、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ユウキが『マザーズ・ロザリオ』を繰り出した瞬間。

 

タスクは一瞬で、ユウキを貫いたかのように通過した。

 

 

 

 

 

 

 

「決まっ……!?」

「い、いいえ、まだよ」

 

タルケンが身を乗り出すが、シウネーは震えながら首を振る。

 

空に浮かぶ二人のHP表示がガクンと減る。

やっとと言うべきか、赤ゲージに突入した。

 

「キリトくん……ユウキさんに『紫電(シデン)』のこと……言った?」

「え、ああ、まぁ……!!」

 

店主の息をのみつつの声に、キリトは答える。

 

「もしかしたら……、タスクのやつ、()()()()を持ってきてるかも」

「え……!?」

 

その声に、キリトはもちろん、アスナも驚いていた。

あんな、『紫電(シデン)』などという、到底真似できないような技に、まさか()()()()があるのか。

 

「はは、そういうことね。してやられたよ」

「……?」

 

そう言って、店主は納得がいったかのような、少し悔しそうなため息をつく。

 

「キリトくん」

「?」

「あれは『紫電(シデン)』じゃない」

「え……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれはね。『紫電 改(シデン・カイ)』だ」




あけましておめでとうございました!!
もうあけちゃってますからね(笑)

改めてましてご拝読ありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

実は年末から年明けで、色々込み合っておりまして投稿がこんなに遅くなってしまいました。

ごめんなさい!!

ユウキ編は楽しみにしてくださってる方が多くいるかと思います。
色んな意味で、ね。

今後の展開は、できる限り多くの人が楽しんでもらえる展開を予定しています。
来たる、『例の分岐』に関しても、ね。(笑)

乞うご期待!!




【作者Twitter】
https://mobile.twitter.com/P6LWBtQYS9EOJbl
作者との交流、次話投稿の通知、ちょっとした裏話などはこちら!!

【作者 公式LINE】
https://lin.ee/wGANpn2
公式LINE限定セリフ、各章あらすじ、素早い作中情報検索はこちら!!

【今作紹介動画】
https://youtu.be/elqnCcV7R_0
この動画にしかない物語の鍵があります……。

【感想】
下のボタンをタップ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。