これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode157 嘲笑 〜Mockery〜

タスクは止まらない。

 

ガッ‼︎ ゴッ‼︎

「はっ……!! はっ……!!」

 

袈裟と逆袈裟の連撃。

ユウキは過呼吸気味になりながらもきちんとそれらをいなす。

 

「よし……!!」

 

キリトが思わず呟きを漏らす。

 

「くっ……この!!」

 

ユウキもやられっぱなしは気が済まないのであろう。

攻勢の逆転を狙う。

 

ビュンビュン‼︎

「!!」

 

相変わらず突っ込んでくるタスクに足を踏みかえて突きを2連。

……しかし。

 

「なっ……あ!?」

ドゴォ‼︎

 

2回の突きを完璧に避け切ったタスクは、刀も構えぬまま懐に入ると、そのまま肩をユウキの喉元に当てた。

場所も相まって、ユウキは思わず動きが止まる。

 

「間合いが離れた……まずい」

 

店主の目が険しくなった。

 

「やぁぁぁぁ!!!!」

 

ユウキはすかさず距離を詰めにかかる。

 

大上段。

思い切り振り下ろす構え。

 

するとその瞬間。

 

 

 

 

「な……!?」

 

 

 

 

ユウキは思わず目を見開いた。

 

なぜならそれは。

 

 

 

 

 

タスクが、()()()()()()()()()()から。

 

 

 

 

 

それどころか、笑ってユウキの目を見つめている。

 

「くっ……!!」

 

ユウキは思わず手を緩めそうになる。

しかしその瞬間。

 

バチィ‼︎

「がっ……あっ……!?」

 

ユウキの剣を、タスクの刀が思い切り弾いた。

剣筋が大きく乱れ、ユウキも一緒に吹っ飛んでいきそうになる。

 

「ぐっ……はっ……!?」

 

何とか体勢を倒さず、足で踏みとどまったユウキは、タスクを驚いた顔で見る。

 

あの時、今まさにユウキが剣をタスクに振り下ろさんとした時。

タスクは、まるで試すかのような笑みで、ユウキを真っ直ぐ、それこそまるで()()()()()()()見ていた。

 

力を抜いて、刀を構えるどころか持ち上げすらせず。

 

「ユウキ……」

「……」

 

動きを止めたユウキを、アスナは心配ならない顔で見つめる。

スリーピング・ナイツの面々はもはや黙り込んでいる。

 

対し、ユウキは。

 

《この人……》

 

眉間に皺が寄ったまま。

動きを見せずに立ち尽くしていた。

 

自分としては、今までにないくらい本気のつもりだった。

 

アスナにタスクの本気の戦い方を聞いてから、格闘もある程度修練してきたし、キリトに色々聞いては対策を練ったりもしたのだ。

 

でも。

()()()に貫かれた瞬間。

 

《分かった、よ。キリト君。君の言う……『違い』ってやつ》

 

全てが分かった気がした。

 

タスク、彼の使う剣は、自分を含め周りの全ての人たちの剣とは『違う』。

自分たちの剣は、あくまで「模擬」。

 

相手と自分の差を見せる、見せられる。

あるいはモンスターなどの作られ、用意された脅威を乗り越え、達成するための剣。

 

しかし彼、否、彼と店主の剣は違う。

 

彼らの剣は、単純かつ明晰。

相手を()()ための剣。

 

もはやそうするしかない、そうしなければ自分の命がない。

決して認めてはならない、自分たちの剣の世界では徹底的に排除された要素、()()()()()()

 

キリトたちも命を賭けていたとはいえ、それよりも残酷な世界。

()()()()()()()()世界。

 

そんな世界で戦い続け、その末に「歓喜」を見出した彼ら。

 

《そんなの……わっかんない、よ》

 

ユウキはわずかながら苛立ちを覚える。

 

彼らがいかに高い次元に存在していたかを思い知らされ。

そしてそれを……完全に見くびり、()()()()()()ことを自覚したから。

 

その上そんな自分を完全に見抜き、半ば嘲笑のような形で思い知らされた自分の情けなさ。

 

「あなたは、強いですよ」

「っ!!」

 

すると突然。

タスクの声がユウキを思索から引っ張り戻す。

 

「な、な……!?」

「ユウキさん、あなたは十分すぎるくらい強い」

「……!!」

 

タスクのゆっくりとした語り口が、ユウキの中に響く。

 

「だからこそ勿体無くて仕方がないんだ」

「……!!」

 

タスクの声が、少し()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウキ、アンタは戦いに命を賭けれるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、全てを知られているかのような感覚になる。

ユウキの心臓が、また一段と跳ねた。




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