これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
タスクは止まらない。
ガッ‼︎ ゴッ‼︎
「はっ……!! はっ……!!」
袈裟と逆袈裟の連撃。
ユウキは過呼吸気味になりながらもきちんとそれらをいなす。
「よし……!!」
キリトが思わず呟きを漏らす。
「くっ……この!!」
ユウキもやられっぱなしは気が済まないのであろう。
攻勢の逆転を狙う。
ビュンビュン‼︎
「!!」
相変わらず突っ込んでくるタスクに足を踏みかえて突きを2連。
……しかし。
「なっ……あ!?」
ドゴォ‼︎
2回の突きを完璧に避け切ったタスクは、刀も構えぬまま懐に入ると、そのまま肩をユウキの喉元に当てた。
場所も相まって、ユウキは思わず動きが止まる。
「間合いが離れた……まずい」
店主の目が険しくなった。
「やぁぁぁぁ!!!!」
ユウキはすかさず距離を詰めにかかる。
大上段。
思い切り振り下ろす構え。
するとその瞬間。
「な……!?」
ユウキは思わず目を見開いた。
なぜならそれは。
タスクが、
それどころか、笑ってユウキの目を見つめている。
「くっ……!!」
ユウキは思わず手を緩めそうになる。
しかしその瞬間。
バチィ‼︎
「がっ……あっ……!?」
ユウキの剣を、タスクの刀が思い切り弾いた。
剣筋が大きく乱れ、ユウキも一緒に吹っ飛んでいきそうになる。
「ぐっ……はっ……!?」
何とか体勢を倒さず、足で踏みとどまったユウキは、タスクを驚いた顔で見る。
あの時、今まさにユウキが剣をタスクに振り下ろさんとした時。
タスクは、まるで試すかのような笑みで、ユウキを真っ直ぐ、それこそまるで
力を抜いて、刀を構えるどころか持ち上げすらせず。
「ユウキ……」
「……」
動きを止めたユウキを、アスナは心配ならない顔で見つめる。
スリーピング・ナイツの面々はもはや黙り込んでいる。
対し、ユウキは。
《この人……》
眉間に皺が寄ったまま。
動きを見せずに立ち尽くしていた。
自分としては、今までにないくらい本気のつもりだった。
アスナにタスクの本気の戦い方を聞いてから、格闘もある程度修練してきたし、キリトに色々聞いては対策を練ったりもしたのだ。
でも。
《分かった、よ。キリト君。君の言う……『違い』ってやつ》
全てが分かった気がした。
タスク、彼の使う剣は、自分を含め周りの全ての人たちの剣とは『違う』。
自分たちの剣は、あくまで「模擬」。
相手と自分の差を見せる、見せられる。
あるいはモンスターなどの作られ、用意された脅威を乗り越え、達成するための剣。
しかし彼、否、彼と店主の剣は違う。
彼らの剣は、単純かつ明晰。
相手を
もはやそうするしかない、そうしなければ自分の命がない。
決して認めてはならない、自分たちの剣の世界では徹底的に排除された要素、
キリトたちも命を賭けていたとはいえ、それよりも残酷な世界。
そんな世界で戦い続け、その末に「歓喜」を見出した彼ら。
《そんなの……わっかんない、よ》
ユウキはわずかながら苛立ちを覚える。
彼らがいかに高い次元に存在していたかを思い知らされ。
そしてそれを……完全に見くびり、
その上そんな自分を完全に見抜き、半ば嘲笑のような形で思い知らされた自分の情けなさ。
「あなたは、強いですよ」
「っ!!」
すると突然。
タスクの声がユウキを思索から引っ張り戻す。
「な、な……!?」
「ユウキさん、あなたは十分すぎるくらい強い」
「……!!」
タスクのゆっくりとした語り口が、ユウキの中に響く。
「だからこそ勿体無くて仕方がないんだ」
「……!!」
タスクの声が、少し
「ユウキ、アンタは戦いに命を賭けれるか?」
その瞬間、全てを知られているかのような感覚になる。
ユウキの心臓が、また一段と跳ねた。
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