これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode156 解禁 〜Lifting of the ban〜

「くっ……!!」

 

ユウキの顔が歪む。

タスクの顔が微笑む。

 

ギッ!!

「っ……と」

 

纏糸によって触れたままの剣に、ユウキが加圧する。

タスクはそれを一歩下がって受けた。

 

「さぁ……どうする、ユウキさん」

「ユウキ……!!」

 

店長が面白そうに眺め、シウネーが不安そうに見つめる。

 

……ただ、次の瞬間。

 

 

 

 

ゴッ

「がっ……!?」

 

 

 

 

()()()と共に、()()()の体勢が崩れた。

 

右横腹にフック。

ユウキがいつかアスナにされた初歩的な格闘。

 

バチィ‼︎

「離れた!!」

 

剣が離れ、すかさずユウキが一発叩き込んで距離をとる。

シウネーが思わず声を上げる。

 

「はは……そうくるか」

「ええ」

「さては……アスナさん、あなたやったね?」

「……もちろん」

 

店主がやれやれと言わんばかりにアスナを見やる。

アスナは目元こそ厳しいものの、口はたしかに笑っていた。

 

 

「アスナがさ」

「?」

 

距離が離れ、一息ついた二人。

ユウキがおもむろに話し出す。

 

「初めて戦った時、おんなじ事をしたんだよね……僕に」

「……」

「初めてだったよ……剣と魔法の世界でさ、まさか拳を食らうなんて思わなかった」

「……?」

 

淡々と話すユウキ。

黙って聞いてはいるが、真意が分からないのか不思議そうな顔をするタスク。

 

「アスナ、言ってたんだ。『あれはとある人の真似なんだ』って」

「!!」

「そしたら、その人についてすごく興味が湧いてさ。それで今日ここに呼んだの」

 

ユウキの目が、タスクの目を真っ直ぐに射抜く。

タスクは少し引いてその目を見返した。

 

()()()()、それ即ち、タスクの事だろう。

 

剣と格闘を織り交ぜたスタイル。

キリトとの試合で見せた……否、()()()、あの戦い方。

 

「だから……さ、僕はね、本当の君とやりたいんだよ」

「……!!」

「アスナ、タスク君は剣しか使わないかもしれないって言ってた。でも僕、そんなのいやなんだよね」

「……」

 

だんだん、ユウキの真意が分かってくる。

タスクの顔が下に俯いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……来なよ、()()()。準備は……してきたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

タスクの雰囲気が変わった。

 

 

「っ……!?」

 

シウネーは、肌で感じる。

この雰囲気、この感覚。

 

間違いない。

店主とやった時の、あの感じ。

 

「起こしたよ、彼女」

「え……」

「タスクの獣」

「……!!」

 

店主がいつになく真剣なトーンでシウネーに言う。

 

「獣……!!」

「うん、それに彼女、ただ起こしただけじゃない」

「え……」

()()()()()。寝起きは相当悪いね」

「そ、それって……」

「うん。そゆこと」

 

ゾクリ、と背中に何かが這う。

そゆこと、つまりは。

 

「容赦なくなるよ。起こしちゃった以上は」

「っ……!!」

 

店主の少ししかめた笑顔は、いつになく高揚を醸し出していた。

 

 

「……」

「……」

 

2人の距離は変わらないが。

緊張度はあからさまに変化していた。

 

タスクは刀を前ではなく下に落としている。

……そう、()()()()

 

「ほんとに……やるんですか?」

「さぁ……どうだか」

 

リーファがシノンの方に向く。

 

タスクは本当にユウキに格闘技を使うつもりなのか。

彼はそういうことをあまり好まないような気がする。

 

ただ。

獣が起きちゃった以上は関係ないのか。

 

「動いた!!」

「「!!」」

 

すると次の瞬間、観客が大いに沸き立つ。

自ずと視線は闘技場に釘付けになる。

 

ゴッ、キィ

「……!!」

 

仕掛けたのはタスク。

ユウキの剣に上からと下からを一発づつ。

 

剣が震えたユウキ。

 

「くっ……!?」

 

タスクが左足を上げる。

蹴りが来る、ユウキは直感で悟る。

 

しかし。

 

「わっ……!?」

バキィ

 

足が来るのと反対、右から刀がすっ飛んできた。

 

ユウキは慌てて剣で受ける。

そして、すかさずタスクの脇腹に肘打ち。

 

ゴッ

「……っ」

 

タスクは今、刀がユウキの剣で受けられ、反対の片足がユウキの背中に沿ってて浮いている。

 

つまり彼はバランスが決していいとは言えない状況。

 

ユウキもユウキで剣は使えない。

しかしタスクのすぐそばにいることは確かで、最短最速で繰り出せるものといったら肘打ちしかなかった。

 

「崩した!!」

 

観客が湧く。

タスクの体勢が後ろに傾いていく。

 

剣が離れたユウキは、すかさず上段切り縦一線を繰り出す。

 

しかし。

 

パン!

「あっ……」

 

タスクはすぐさま左足を地面に下ろすと、そのまま右足で回し蹴りを繰り出す。

降りてきた剣の横腹をしっかり捉え、はじき飛ばした。

 

するとそこで止まると思いきや。

 

ビュン!!

「わっ!?」

 

体が横向きのコマのように地面の上で回転し、通過した右足が地面に着く前に左足がまた浮いて、ユウキの眼前を掠めた。

 

かかと後ろ回し。

 

「はっ……!! はっ……!!」

 

あれがもし、もろに当たってたら。

そう考えるだけでゾクゾクして、歓喜のような感情が込上がる。

 

 

 

 

これが、『獣』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《まぁ……さすがに、ね》

 

店主とシノンの視線が、一瞬険しくなった。




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