これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode151 立っていたのは 〜Who stood〜

気づけば、そんな顔をしていたらしい。

隣に座るリーファが、明らかに怯えて声をかけてきたから。

 

泣きはらして真っ赤になった目をクシャクシャに歪ませて。

歯をこれでもかと食いしばって彼らを見つめている。

 

それはまるで、獣のように。

 

瞳に映るは一人の男。

広い舞台にたった一人佇む男。

 

手をぶら下げて、息は荒く、やっとの事で立っている。

 

その男の下には倒れた男。

佇む男に見下ろされながら、定まらぬ視界を見つめている。

 

色々砕け、息は止まり、微動だにせず横たわっている。

 

「行きましょう、シノンさん」

「……グスッ」

 

肩を抱えられ席を立つ。

 

本当は今すぐ駆け寄りたい。

飛び立ってすぐに傍に行きたい。

 

でもできなかった。

体は力を抜くばかり。

 

 

 

 

 

 

観客の惜しみない拍手だけが、その場に響いていた。

 

 

気づけば、そんな顔をしていたらしい。

隣に座るシウネーが、明らかに怯えて声をかけてきたから。

 

体の奥で高鳴るなにかに揺らされて、思わず口角が上がっている。

探していた何かを見つけたが如く、食い入るように彼らを見つめている。

 

それはまるで、獣のように。

 

瞳に映るは一人の男。

広い舞台にたった一人佇む男。

 

手をぶら下げて、息は荒く、やっとの事で立っている。

 

その男の下には倒れた男。

佇む男に見下ろされながら、定まらぬ視界を見つめている。

 

色々砕け、息は止まり、微動だにせず横たわっている。

 

「ねぇ、シウネー」

「な……なに?」

 

目線を外さず一言問う。

 

相変わらず怯えたシウネーが返事を返すが、その続きはない。

 

しばらく間を置いて言葉が続いた。

 

 

 

 

 

 

 

「僕……今……()()()()?」

 

 

 

 

 

 

「う……!! うん……」

 

そう言ってゆっくりシウネーを見るユウキ。

シウネーはこくりと頷いてユウキを見返す。

 

「そっ……かぁ、これが……」

「……?」

「確かにその通りだったよ、タスクくん」

「??」

 

独り言をポツポツと呟くユウキを、相変わらず怯えた様子で見つめるシウネー。

 

「あは、いよいよだね!!」

「え……!? う、うん……?」

 

するとユウキはたん、と立ち上がった。

目線はしっかり闘技場を見つめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただその目は、あの時のタスクとそっくりな、殺気に満ちた笑みだった。

 

 

視界に映るかの城。

 

超然と浮かんでいる。

青い空も変わらず。

 

やれることは全てやった。

その上で負けた。

 

後悔はない。

 

負けたと言っても、HPがほんのわずか、見えないくらいだが残っていた。

判定上は、タイムアップ。

 

つまり、HP残量での決着となる。

 

とは言うものの、もう動くこともできなかった。

首がへし折れ、全身付随のデバフを受けているからだ。

 

決め手に決め手を返されて、完全に負けた。

 

しかも火の玉にさせてもらえず。

まるで現実の格闘技のように、勝者と敗者がただただ立っている。

 

実に僕らしい。

思わず笑みがこぼれる。

 

 

 

 

 

「おかえりなさい」

 

 

 

 

 

 

するとその時、頭上から声が聞こえる。

それにつられて上を見る。

 

 

 

 

そこに立っていたのは……。




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