これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
気づけば、そんな顔をしていたらしい。
隣に座るリーファが、明らかに怯えて声をかけてきたから。
泣きはらして真っ赤になった目をクシャクシャに歪ませて。
歯をこれでもかと食いしばって彼らを見つめている。
それはまるで、獣のように。
瞳に映るは一人の男。
広い舞台にたった一人佇む男。
手をぶら下げて、息は荒く、やっとの事で立っている。
その男の下には倒れた男。
佇む男に見下ろされながら、定まらぬ視界を見つめている。
色々砕け、息は止まり、微動だにせず横たわっている。
「行きましょう、シノンさん」
「……グスッ」
肩を抱えられ席を立つ。
本当は今すぐ駆け寄りたい。
飛び立ってすぐに傍に行きたい。
でもできなかった。
体は力を抜くばかり。
観客の惜しみない拍手だけが、その場に響いていた。
✣
気づけば、そんな顔をしていたらしい。
隣に座るシウネーが、明らかに怯えて声をかけてきたから。
体の奥で高鳴るなにかに揺らされて、思わず口角が上がっている。
探していた何かを見つけたが如く、食い入るように彼らを見つめている。
それはまるで、獣のように。
瞳に映るは一人の男。
広い舞台にたった一人佇む男。
手をぶら下げて、息は荒く、やっとの事で立っている。
その男の下には倒れた男。
佇む男に見下ろされながら、定まらぬ視界を見つめている。
色々砕け、息は止まり、微動だにせず横たわっている。
「ねぇ、シウネー」
「な……なに?」
目線を外さず一言問う。
相変わらず怯えたシウネーが返事を返すが、その続きはない。
しばらく間を置いて言葉が続いた。
「僕……今……
「う……!! うん……」
そう言ってゆっくりシウネーを見るユウキ。
シウネーはこくりと頷いてユウキを見返す。
「そっ……かぁ、これが……」
「……?」
「確かにその通りだったよ、タスクくん」
「??」
独り言をポツポツと呟くユウキを、相変わらず怯えた様子で見つめるシウネー。
「あは、いよいよだね!!」
「え……!? う、うん……?」
するとユウキはたん、と立ち上がった。
目線はしっかり闘技場を見つめている。
ただその目は、あの時のタスクとそっくりな、殺気に満ちた笑みだった。
✣
視界に映るかの城。
超然と浮かんでいる。
青い空も変わらず。
やれることは全てやった。
その上で負けた。
後悔はない。
負けたと言っても、HPがほんのわずか、見えないくらいだが残っていた。
判定上は、タイムアップ。
つまり、HP残量での決着となる。
とは言うものの、もう動くこともできなかった。
首がへし折れ、全身付随のデバフを受けているからだ。
決め手に決め手を返されて、完全に負けた。
しかも火の玉にさせてもらえず。
まるで現実の格闘技のように、勝者と敗者がただただ立っている。
実に僕らしい。
思わず笑みがこぼれる。
「おかえりなさい」
するとその時、頭上から声が聞こえる。
それにつられて上を見る。
そこに立っていたのは……。
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