これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
開始のゴングは既に鳴り響いた。
闘技場の真ん中に立つリーファは、前に佇むタスクをきっ、と睨む。
「…………」
ビーッ、と鳴ってから5秒。
戦うどころか動きすらしない。
観客の声援は徐々に小さくなる。
剣すら抜かない二人を、不思議そうな目で見始める。
するとリーファは拳を握りしめ、タスクに向かって一言。
「
「っ……!?」
そう、言い放った。
流石にタスクも驚いたのか、目を見開いてリーファを見つめている。
観客はもはや声援など送りもしない。
どういうこと? なんて言いながら、ガヤガヤと音を立てている。
「ただっ……!!」
「!!」
……が、観客のガヤが、続く一言でピタリと止んだ。
タスクは変わらず驚き顔でリーファを見つめる。
そしてリーファはぐっと息を吸い込み、一段とタスクを睨むと……
「だから私は、思っきりあなたに
そう宣言して、腰の剣を抜いた。
オオオオオオ !!!!
「いいぞー!!」「やっちまえー!!!!」
観客は、まるで先程までの静寂の反動かのように特段に沸き上がる。
彼らは見てきた。
噂の存在でしかなかったタスクの快進撃を。
そして定評通りのリーファの健闘を。
これは決してエンターテインメントではない。
しかし、そうでないからこそ得られる興奮も確かに存在するのだ。
リーファはそれを一段と引き出したのである。
「………なるほど」
「!!」
相対するタスクはニコリと笑うとリーファを見やる。
リーファはその視線に警戒の色を隠さない。
するとタスクは、そんな彼女の目を見つつ、ゆっくりと
観客はさらに沸き上がる。
「
「っ……!?」
「流石に
「…………!!」
そして彼は、そう言いつつ笑みを一段と深めて、
《まさか……いや、そんなわけない。私が恐れてるだけよ、大丈夫。》
リーファは不意に、そんな思考が頭をよぎる。
タスクの言った言葉が、つい先程までの自分を暗に意味しているように聞こえたからだ。
そんなわけない。そんなわけない。
リーファは繰り返し頭の中でそれを否定する。
いくら彼とはいえ、あんな弱い気持ちは想定できないに決まってる。
少なくとも義兄、キリトは微塵も察してなかった。その隣のアスナでさえ、だ。
いくらかのタスクとて同じなはず。
「くっ……!!」
「……ふふ」
しかし、タスクの射抜くような視線と微笑みに、リーファは動揺の顔を見せてしまった。
まさか。いや、そのまさかなのかもしれない。
ギリッ、と奥歯が擦れる音がする。
ユウキは何も感じないと言っていたこの目の前のケット・シーが、リーファは今恐ろしくてたまらない。
「すーっ……くっ……!!」
「……!!」
鼻から息を吸い込み、喉元で止める。
剣を前に、両手で持つ。
タスクは明らかに警戒の色を見せる。
そしてついに、戦いが始まった。
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