これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode126 いってらっしゃい 〜Good luck〜

「んー、ふふ」

「?」

 

早速刀を腰に据え、満足そうに歩くタスク。

そのすぐ隣を、まだ紅く頬を染めながら続くシノン。

 

彼らは、先程の進路とは一転、闘技場へ向かっていた。

 

すると、タスクは手を後頭部で組んで、空を見上げてふと呟く。

 

「あれが……ユウキさん、ですか」

「……なにかあったの? タスク」

 

ユウキのことを考えているタスクを見て、シノンは不思議そうに覗き込む。

 

「いや、なんか……ね」

「?」

()()()()、そんな気持ちなんですよね」

「懐かし……い?」

 

意味がわからない、と言いたげなシノン。

相変わらず空を見上げるタスク。

 

「どういう……意味?」

 

すると、シノンもタスクにならい、空を見上げつつタスクにそう問う。

ただ、その瞬間。

 

 

 

 

「……あ」

 

 

 

シノンは、タスクがただ空を見上げていた訳では無いことを知る。

そこに浮いていたのは、「()()()」。

 

 

 

 

 

 

タスクは、GGOでたまに見せる、暗い目をしていた。

 

 

午前に行われる予選A・Bブロックは、ほぼ予定通りに、滞りなく進み、そして終わった。

 

大方の予想通り、Aブロックはキリトが、Bブロックはユウキが優勝し、明日の本戦の準決勝への切符を手にしている。

 

そして昼休憩を挟み、午後。

 

「ついに……来たね」

「うん」

 

いち早く観客席に着いていたユウキは、アスナとそう、息を飲んだ。

 

 

 

Cブロック予選、第一回戦。

タスク vs ルージアである。

 

 

 

 

オオオオオ!!!!

「うわぁ〜お……すぅごいすごい」

 

Cブロック予選開幕のファンファーレが響き渡ると同時に、観客席は大いに沸き立つ。

 

それを、選手控え場所の観客席の真下の部屋でタスクとシノンは聞き、感嘆しつつ笑っていた。

 

「大丈夫なの? そんな悠長な……」

「んぇ? ああ。さすがに……ですよね」

 

すると、タスクの余りの悠長さに心配を隠せないシノンが、ついそう言ってタスクを急かす。

 

タスクは、それにハイハイ、と言わんばかりにまた笑って、選手入場口に向かった。

 

 

「プレイヤーネーム、タスクさーん?」

「はぁーい!!」

 

入口直前の係員のキャラクターが、タスクの名前を声高に呼ぶ。

それに反応し、ぴょんぴょん跳ねながら選手の中から出ていくタスク。

 

心なしか、他の選手の視線が異様に集まっている気がする。

 

「ちょ、ちょっとタスク!! TPOってものを……!!」

「ええ〜いいじゃないですかぁ。楽しみなんですもん!!」

 

シノンが必死に諌めるが、タスクはウズウズが止まらないらしく、まだかまだかとそわそわしてる。

 

「あと1分後、名前が呼ばれますから、タスクさんのみが闘技場内へ入ってください」

「りょーかいです!!」

「付き添いの方はこちらへ」

「ああ、いえ。私は見送ったあと、観客席に戻ります」

 

係員のキャラクターがテキパキと指示を飛ばし、二人はそれに聞き入り、了解する。

 

……そして。

 

「あ……」

オオオオオ!!!!

 

タスクの名前が呼ばれ、タスクが振り返る。

そんな彼の背中を、シノンはグイと押した。

 

 

 

 

 

 

 

「いってらっしゃい、タスク」




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