これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
シノンが、タスクにプレゼントしたもの。
それは、「
タスク本人も言った通り、彼の刀はキリトとの決戦前、街にあった小さな武器屋の手頃なやつだった。
彼自身曰く、「僕は刀だけでは戦わないからいいのいいの」とかなんとか言って、さすがにシノンもびっくりするような適当さで選んでいたため、実はずっと気にかけていたのだ。
結局、決闘は無事、言った通りほぼ関係なく終わった。
……が。
今回もそうとは限らない。
という訳で……
「私達に頼ってくれたのね!!!!」
やたら張り切ったアスナがふふん、と胸を張った。
シノンはそんな彼女に苦笑いする。
「刀かぁ……鋳造はリズがするとして」
「まいどぉ」
「素材はどうするんだ?」
いつの間にか食い付き気味なキリトが、そんなことを言いつつ歩み寄ってくる。
すると、それに答えるシノンは恥ずかしそうに下を向いた。
「そ、それも、みんなに聞こうと思って。私、ALOあんまり……」
「なるほどなるほど!!」
「採集も鋳造も、みんなになら任せられるなぁって……」
「ふんふん!!」
「だ、だからその……!!」
「まっかせなさい!!」
シノンの肩を鷲掴んだアスナは、鼻息荒く目を輝かせる。
もしかして。
そんな不安がよぎる、が。
「っしゃぁぁいこおおお!!!!」
クラインに連れられ、シノンは連れられるがまま外に出ていった。
✣
そして、その日の夜。
「で、できたぁ〜!!」
「やっとかぁ〜……あぁ……」
リズベット武具店で、一同がそんな弱々しい声を上げた。
「はい! シノノン!!」
「……!!」
その中で、唯一特段の笑顔なリズは、どすん、と音を立ててその「刀」を店のテーブルに置いた。
真っ黒い柄に、青い目釘。
金色の鍔から伸びる、美しい刀身。
「名前はね……『艤斬 雷電』、だって」
「ギゼン……ライ……デン」
リズが刀から出るウィンドウを見つつ、シノンにそう告げる。
するとシノンは、その言葉を繰り返しつつ、その刀に見入った。
キリトが提案した、大海に潜むボスモンスターを討伐し手に入れた鱗。
そしてそれを錬成し鋳造して現れたこの一品。
「こいつは一級品どころか、超一級品だよ!! どの数値も見たことないくらい高い。苦労した甲斐があったってもんさ」
「……!!」
そう言ってリズは微笑む。
キリトやアスナ達も、皆にこりと笑う。
この屈強なパーティーでも、丸一日かかったモンスターからできた刀だ、これでタスクにも引けを取るまい。
そんな自信も、その面々には浮かんでいた。
「みんな……本当にありがとう……!!」
「!!!!」
すると、シノンがその刀を抱えて涙ぐむ。
一日中戦い続け、ボロボロになった戦士達は、その顔だけで救われたような、そんな気分であった。
✣
その後しばらくして。
「しっかし、タスク……だっけか、そいつもまぁ、羨ましいなぁおい!!」
すっかり元気になった彼らの中のクラインが、そんな声を上げる。
「……どうして?」
その声を聞いたアスナが振り返って問う。
アスナと話していたシノンも、首を傾けてクラインを見る。
すると、クラインが核心を突いた一言を放った。
「シノンちゃんの愛情籠った超一級品だぜ!?」
この後。
クラインがどうなったかは言うまでもない。
✣
……時は戻って、現在。
フードを被った大柄なケットシーが、露店で買った串刺しの肉らしきものを頬張る。
「ん〜!! これおいひぃ……!!」
そんなことを言いつつ、すぐそこの配り子が配っていたチラシに目を落とした。
「AB……そしてC」
『Aブロック 優勝候補 キリト』
『Bブロック 優勝候補 ユウキ』
その二文を眺め、ふ、と少しだけ笑う。
そしてそのすぐ下。
『Cブロック 優勝候補 タスク』
「……しかしまぁ、すっかり有名人になっちゃって」
そこを読み、一段と、ニヤリと笑うその男。
「ま、せっかくもらった機会だ」
すると、その男はたん、と立ち上がった。
手に持っている串には、もう何も無い。
「楽しまなきゃぁ……損だよね」
そしてそう呟くと、目の前にある闘技所を睨んだ。
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