これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode125 完成 〜Complete〜

シノンが、タスクにプレゼントしたもの。

それは、「()」である。

 

 

タスク本人も言った通り、彼の刀はキリトとの決戦前、街にあった小さな武器屋の手頃なやつだった。

 

彼自身曰く、「僕は刀だけでは戦わないからいいのいいの」とかなんとか言って、さすがにシノンもびっくりするような適当さで選んでいたため、実はずっと気にかけていたのだ。

 

結局、決闘は無事、言った通りほぼ関係なく終わった。

 

……が。

今回もそうとは限らない。

 

という訳で……

 

「私達に頼ってくれたのね!!!!」

 

やたら張り切ったアスナがふふん、と胸を張った。

シノンはそんな彼女に苦笑いする。

 

「刀かぁ……鋳造はリズがするとして」

「まいどぉ」

「素材はどうするんだ?」

 

いつの間にか食い付き気味なキリトが、そんなことを言いつつ歩み寄ってくる。

すると、それに答えるシノンは恥ずかしそうに下を向いた。

 

「そ、それも、みんなに聞こうと思って。私、ALOあんまり……」

「なるほどなるほど!!」

「採集も鋳造も、みんなになら任せられるなぁって……」

「ふんふん!!」

「だ、だからその……!!」

「まっかせなさい!!」

 

シノンの肩を鷲掴んだアスナは、鼻息荒く目を輝かせる。

 

もしかして。

そんな不安がよぎる、が。

 

 

 

 

「っしゃぁぁいこおおお!!!!」

 

クラインに連れられ、シノンは連れられるがまま外に出ていった。

 

 

そして、その日の夜。

 

「で、できたぁ〜!!」

「やっとかぁ〜……あぁ……」

 

リズベット武具店で、一同がそんな弱々しい声を上げた。

 

「はい! シノノン!!」

「……!!」

 

その中で、唯一特段の笑顔なリズは、どすん、と音を立ててその「刀」を店のテーブルに置いた。

 

真っ黒い柄に、青い目釘。

金色の鍔から伸びる、美しい刀身。

 

「名前はね……『艤斬 雷電』、だって」

「ギゼン……ライ……デン」

 

リズが刀から出るウィンドウを見つつ、シノンにそう告げる。

するとシノンは、その言葉を繰り返しつつ、その刀に見入った。

 

キリトが提案した、大海に潜むボスモンスターを討伐し手に入れた鱗。

そしてそれを錬成し鋳造して現れたこの一品。

 

「こいつは一級品どころか、超一級品だよ!! どの数値も見たことないくらい高い。苦労した甲斐があったってもんさ」

「……!!」

 

そう言ってリズは微笑む。

キリトやアスナ達も、皆にこりと笑う。

 

この屈強なパーティーでも、丸一日かかったモンスターからできた刀だ、これでタスクにも引けを取るまい。

そんな自信も、その面々には浮かんでいた。

 

 

 

「みんな……本当にありがとう……!!」

「!!!!」

 

 

 

すると、シノンがその刀を抱えて涙ぐむ。

 

一日中戦い続け、ボロボロになった戦士達は、その顔だけで救われたような、そんな気分であった。

 

 

その後しばらくして。

 

「しっかし、タスク……だっけか、そいつもまぁ、羨ましいなぁおい!!」

 

すっかり元気になった彼らの中のクラインが、そんな声を上げる。

 

「……どうして?」

 

その声を聞いたアスナが振り返って問う。

アスナと話していたシノンも、首を傾けてクラインを見る。

 

すると、クラインが核心を突いた一言を放った。

 

 

 

 

 

 

 

「シノンちゃんの愛情籠った超一級品だぜ!?」

 

 

 

この後。

クラインがどうなったかは言うまでもない。

 

 

……時は戻って、現在。

 

フードを被った大柄なケットシーが、露店で買った串刺しの肉らしきものを頬張る。

 

「ん〜!! これおいひぃ……!!」

 

そんなことを言いつつ、すぐそこの配り子が配っていたチラシに目を落とした。

 

「AB……そしてC」

『Aブロック 優勝候補 キリト』

『Bブロック 優勝候補 ユウキ』

 

その二文を眺め、ふ、と少しだけ笑う。

そしてそのすぐ下。

 

『Cブロック 優勝候補 タスク』

「……しかしまぁ、すっかり有名人になっちゃって」

 

そこを読み、一段と、ニヤリと笑うその男。

 

「ま、せっかくもらった機会だ」

 

すると、その男はたん、と立ち上がった。

手に持っている串には、もう何も無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しまなきゃぁ……損だよね」

 

 

そしてそう呟くと、目の前にある闘技所を睨んだ。




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