これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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ユウキ編、開幕!!


第六章 紫陽花の戦姫 〜Hydrangea war princess〜
Episode122 珍客 〜Rare guest〜


「あ、あなたは……!!」

 

初々しいお客の声に、慌ててカウンターから出てきたタモン。

しかし、そこには予想しえないお客が立っていた。

 

明るい栗色の髪の毛と瞳。

すらりとした体に、ふっくらと膨らむ胸。

 

店主がこの姿を見紛うはずがない。

 

 

 

「ア、アスナ……さん!?」

 

 

 

「アスナァ!?」

「ア、アスナさんですって!?」

 

店主の声と共に、シノンとタスクが飛び出してくる。

 

「ちょ、どうしたのよアスナ……!? 来ちゃダメよこんな所……!!」

「シノンさん?」

 

ポカーンとしている店主を押しのけ、シノンがずいとアスナに詰め寄った。

 

タスクはヨレヨレと倒れかかる店主を支える。

 

「シ、シノンちゃん!! よかったぁ……」

「い、いやいやいや、そうじゃなくて!!」

 

シノンを見たアスナは、心底ほっとしたような顔を見せた。

思わずぱっとシノンの手を握るアスナ。

 

「「………!?!?」」

 

そんな光景を、店主とタスクはポカーンと眺めている。

 

すると、逆にその光景が目に入ったのか、アスナがはっ、と我に返った。

 

「あ!! そうそう……!!」

「?」

 

自分の後ろを見て、ハッとした顔をするアスナに首を傾げるシノン。

しかしアスナは、もはやそんなシノンなど目に入らなかった。

 

「て、店主……さんでよかったですか」

「う、うん……? そうだけど」

「あの、えと……」

 

すると、アスナはシノンの手を握っていた自分の手を離し、左手でウィンドウを操作して、店主にとあるファイルを送る。

 

タイトルは……

 

 

 

 

「『ALO 統一トーナメント』?」

 

 

 

 

「!!!!」

「アスナ!?」

 

近頃ある、と普段ALOにいるレックスが言っていた大きな大会、その名前だった。

 

「そうです。あの、そ、そこに……」

「まさか」

「はい、タスクさん!!」

 

すると、いきなり話の矛先がタスクにむく。

タスクはあからさまにビクリとして、ちょっと身を引く。

 

 

 

 

 

 

「あなたに、出て欲しいんです!!!!」

 

 

「……なるほど」

 

それから、数分後。

急展開過ぎて、皆立ったままであることにあまり意識が向いておらず……

 

奥からのプルームの、

 

「あの……まず座ったら、どうで……すか?」

 

という提案のおかげで一旦休戦。

 

そしてその後、かくかくしかじかとその理由を説明された。

 

概要としてはこうだ。

ユウキ、という名の凄腕剣士がいる。

彼女(らしい)の腕前は、なんとALOのほぼ全ての剣士を凌駕しうる程だそうで、あのキリトにさえ、片手縛りありとはいえ打ち勝ったとか。

 

ただその彼女、事情は言えないがもうすぐALOができなくなってしまうらしく、大会も近かったので、思い切ってアスナが提案してみたんだそうだ。

 

『キリトの本気に勝った剣士と、戦ってみたくはないか』と。

 

「……で、その舞台がこれ」

「はい」

「ほんで相手が僕」

「そうです」

 

なるほど腑に落ちた。

そう言いたげな顔とトーンで、同時に息を着く店主とタスク。

 

そんな二人を見て、緊張の面持ちで座るアスナ。

……と、後ろから見守るシノン、ラクス、プルーム。

 

「んー………」

「……」

 

たっぷり間を置いて、店主が唸った後。

 

「ま、いんじゃないですか」

「タスクくん!?」

 

タスクのあっけらかんとした声が、店主の思考を遮った。

 

その場にいる者、全員がタスクの方を見る。

アスナなんかは特に勢いよく。

 

すると、タスクはちょっと身を引き、キョトンとした顔で説明し始めた。

 

「だ、だって別に、なにか事件の最中でもないし、出たからと言って僕らの存在が明るみに出るわけじゃないし」

「ま、まあそうだけど、ALO統一トーナメントだよ!?」

「それはそうです。確かに目立ちはするでしょう。までも、そんなのはもうキリトくんとの決闘の時点で、ね」

「た、確かに……」

 

一理ある、という顔で、店主がまた考え込む。

確かに、目立ったところでALOなら「神出鬼没の謎プレイヤー」で済むかもしれない。

 

「それに……」

「……?」

 

するとその時、タスクが何かを言いかける。

店主はその声に、ぱっとタスクを見上げる。

 

そんな店主を見て、タスクは少し意志を含めた笑みを見せた。

 

「強い人がいるなら、戦いたい」

「っ……!!」

「ってね!!」

 

バチコーン、という音がしそうなウインクをかますタスク。

一瞬緊張した空気が、また緩む。

 

アスナは内心、確かに威圧がすごいけど、タスクくんって実はかわいいんだな、と思ってしまう。

 

「……アスナ」

「はっ、ごめんシノンちゃん!!」

 

その瞬間、ドスの効いたシノンの声が飛んできた。

アスナは身体をびくつかせる。

 

……もちろん、周りはキョトンとしていたが。

 

「それに、あの決闘以来、なんか僕あだ名がついてるらしいじゃないですか」

「え? そうなのアスナさん?」

 

すると、そんなことに気づきもせず、淡々と話し合っていたタスクと店主から話題が飛んでくる。

 

アスナは慌てて言葉を返した。

 

「え、あ!! はっ、はい!!」

「?」

 

 

 

「タスクくんは、ALOでは『闘剣』と」

 

 

 

 

「『闘剣』……へぇ」

「かっこいい……気に入った!!」

 

すると店主とタスクはそれを聞いて、意外と思ったのか感嘆する。

 

『闘う剣士』、略して『闘剣』。

きっとこれには、『闘犬』も掛けてあるんだろうな、と店主は勘づく。

 

格闘技と剣術を織りまぜた、彼だけのスタイル。

そして、畏怖すら覚える獰猛な戦闘意志。

 

ピッタリじゃないか?

そんな感想が漏れて出そうになる。

 

チラリとタスクを見てみる。

 

 

 

「へぇ……『闘剣』、ふふん……へへ」

 

 

 

あっ、これはやる気だ。

もう何言っても聞かないなコレ。

 

そう、察した店主は、そそくさとカウンターの奥机についた左手のウィンドウを開き、「ALO統一トーナメント エントリーフォーム」と検索。

要項やら同意事項やらを慣れた目付きで流し読みし始める。

 

するとその時。

 

「出て……くれますか?」

「ん? ああ」

 

頭上から飛んできたアスナの声に、店主はぱっと顔を上げた。

そして不安そうな顔をする彼女に、にっと笑いかける。

 

「はは、まぁ……タスクくん乗り気だし」

「え、じゃ、じゃぁ……!!」

「行きます!! タスク参戦!!」

 

タスクもノリノリで、一昔前のゲームのシーンを再現している。

いつの間にか後ろに回り込んでいたのシノンが、クルクル回る彼を止めた。

 

……ただ。

 

 

 

 

「やった……!! あ、あ、あ、ありがとうございます!!」

「……う、うん」

 

 

 

 

一番はしゃいでいたのは、アスナだった。

 

 

「やれやれ」

 

それから時が過ぎ。

 

終わるまで外で待っていたらしいキリトと二人で、アスナが帰っていった店内。

 

「ふわぁ〜……、じゃ僕、軽い依頼まとめて片付けて来ますねぇ……」

 

そんな間抜けなことを言いながら、ボスに着替えたタスクが店内をドスドスと出ていく。

もちろん、シノンを引き連れて。

 

「ん……行ってらっしゃい」

 

そしてそれを見送る店主。

その背中を見届け、首を前に戻す。

 

……するとそこには。

 

「……あ」

 

アスナに気を取られてからそのままになっていた、「ALO統一トーナメント エントリーフォーム」の画面が浮遊していた。

 

「……たしか、アスナさんタスクくんの分もしてくれるって言ってたよね」

「ええ、確かに」

「じゃ……」

 

席に座ってこちらをむくプルームに確認をとりつつ、その画面の右上、赤いバツ印に指を伸ばす。

 

……その時だった。

 

ガシ

「……!!!!」

 

突如、カウンターの向こう側から伸びてきた手に、その腕を掴まれる。

店主は驚いて顔を上げる。

 

すると、手をがっちりと掴むラクスと、テーブル席から、体もこちら側に向けて見つめてくるプルームが視界に入った。

 

そしてしばらくの沈黙の後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたも、でしょ」

「!!」

「強いヤツと戦いたい、そんな()()鹿()()は」

 

プルームが、コーヒーを啜りつつそう言って笑った。




こんにちは!!
いつもありがとうございます。

駆巡 艤宗です。

さぁ!!お待たせ致しました!!
ユウキ編、開幕!!

それに加えて、皆様にお知らせが3点ございます!!

前回尺都合で延期したやつ……(笑)
あ、全部いい話なのでご安心を。


では早速1つ目!!
『ベネットの固有ガジェット、【防弾クリアシールド】の情報を追加しました!!』

実はかなり前から公開はしていましたが、告知はしていませんでしたのでここにご報告します。



続いて2つ目!!
『あとがきのアップデートを行います!!』

今話に使われているあとがきを、全ての話に適用します。
またそれに従って、あとがきの多少の改稿も行います。



最後に3つ目!!
『公式LINEができました!!』
https://lin.ee/wGANpn2

はい!! こちらが今回の目玉になります。
この度、公式LINEを作成致しました。
あとがきの改稿も、実はこれに伴うものです。

公式LINEでは、
・各キャラの公式LINE限定セリフ
・作中オリジナル用語の意味検索
・設定集のピンポイント検索
などなど、たくさんの便利な機能があります!!

ぜひお楽しみください!!



コロナ下で、緊張の日々が続いています。
読者の皆様におかれましても、より一層の警戒をお願い致します。

1回落ち着いてからが一番危険です。
この作品の場ではありますが、同じハーメルンユーザーとして、共に感染防止に務めましょう。

ではまた。


【作者Twitter】
https://mobile.twitter.com/P6LWBtQYS9EOJbl
作者との交流、次話投稿の通知、ちょっとした裏話などはこちら!!

【作者 公式LINE】
https://lin.ee/wGANpn2
公式LINE限定セリフ、各章あらすじ、素早い作中情報検索はこちら!!

【今作紹介動画】
https://youtu.be/elqnCcV7R_0
この動画にしかない物語の鍵があります……。

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