これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode121 組織の苦悩 〜Organizational distress〜

「あーぁ……!!」

「はぁ……」

 

白い個室に、大人二人のため息が漏れる。

ここはとある政府の建物の一室。

 

もう陽も落ちようかという時間帯で、窓からはオレンジ色の槍が差し込んでくる。

観葉植物の影が大きく、床全体に広がるようだ。

 

「いやその……申し訳……ない、が……」

「いや、分かるよ。そこは君たちの信条だ、尊重する」

「しかし、そう簡単な話じゃないでしょ?」

 

2人用のソファーに腰かけているのが店主。

もといタモン。

 

対して、真反対に1人用に座るのが菊岡。

 

珍しく意見が食い違わない2人。

その理由は、ついさっき終わった、「スクワッド・ジャム」である。

 

「……『例の計画』のために実績を……のはずが」

「僕とてあんな形で終わるとは思わなんだ」

「うーん……いや、君が、タモンはもちろん、君らVRFが悪い、って訳じゃあないんだ」

「何度も聞いてる」

「ただなぁ、うーん……」

 

そう。

問題はその結果であった。

 

傭兵として、厳しい世界で戦い抜いてきた連中なら、あんな大会簡単に勝てる。

そう踏んで、店主は送り出した。

 

例の計画の実行には、実績が必要だった。

それも分かりやすく、明確な。

 

しかし。

彼らの信条故、思わぬ結果で終わってしまった。

 

「もちろん、僕とて自衛官だ、あの結果を否定したい訳では無いが、なぁ」

「うん……分かるよ、()()()()、だろ」

 

タモンの言葉に、深く頷く菊岡。

 

 

 

 

 

懐かしい……これが組織の苦悩……か。

 

 

 

タモンは内心、()()()()を思い出していた。

 

 

「……で、何とかする、と」

「うん。」

 

その後。

現実ではすっかり夜中だが、GGOでは朝であった。

 

店主は、菊岡と別れたあと、すぐにGGOに戻ってきていた。

他でもない、タスクに報告するために。

 

「どうせあれでしょう、都市で戦った連中、自衛隊でしょう」

「……!!」

 

すると、全てを見通したかのような顔と声で、タスクがそう笑いながら言った。

 

店主はびっくりした顔で彼を見つめる。

 

「あれ、気づいてませんでした?」

「い、いや……そんなことはないけど、まさかと思って言わなかった」

「ふふ、僕も最初はコスプレかと思ってました」

 

タスクが楽しそうにカクテルを回す。

店主は前かがみになり、続きを待つ。

 

「彼ら、発砲時の薬莢に意識が寄ってました。自衛隊は基本薬莢受けをつけますからね」

「……!!」

「ま普通、スルーできると思いますが、ゲームなのにこんなリアルな薬莢!? なんて言うのも加わったんじゃないですかね、たぶん」

「……はは、流石だよ」

 

そこを見るか。

店主は驚嘆して顔を伏せる。

 

VR世界では、感情を表に出さないでいることは難しい。

それ故に、もはや無意識下の意識の変動でさえ、アバターの動きに微小な変化をもたらす。

 

そこを見抜くとはやはり彼か。

そんな感情が頭をよぎる。

 

「で、彼らに証言でもさせるんじゃないですか」

「あいつら強え、って?」

「そ!!」

 

チュー、とかわいい音を立てて、タスクがカクテルを啜った。

店主は半笑いでタスクを見やる。

 

「十中八九、菊岡さんでしょ、彼らを派遣したのは」

「ああ……だろうね」

「僕らに隠すのも分かりますよ。それでもし僕らが負けちゃったら、話になりませんからね」

「実際危うかったし……事後とはいえ隠すか」

「ええ、彼はそういう人です」

 

呆れたように椅子でクルクル回り出すタスク。

 

「ええいこの!!」

「あーれー!!」

 

それを見た店主が、タスクの肩を引っ掴んでさらに回し始めた。

 

「……何してんだあいつら」

「対G訓練かなんかでしょ?」

「タスク、たまには撃ちなさいよ」

 

するとそこへ、ちょうど射撃演習を終えたプルーム、ラクス、シノンが出てくる。

 

三者揃って呆れ顔。

ただ微かながらに笑みがこぼれている。

 

のほほんとした雰囲気だった。

これが傭兵団だとは誰が思おうか。

 

……しかし、そんな雰囲気はすぐにかき消された。

 

ガチャッ

「あ、いらっしゃいませー!!」

「こ、こんにちは……!!」

「ちょ、いってくるね」

 

回り続けるタスクを放置し、店主はカウンターを回り、真ん中の通路へと出ていく。

 

そして次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

「はいはい、こんにち……っ!?」

 

店主が、明らかに声を詰まらせた。




こんにちは!!
いつもありがとうございます。

駆巡 艤宗でございます!!

いやぁ、ついに!! SJ編完結となります。

長かったなぁ……(笑)
ストーリーダイブ・キャンペーンのキャラクター達も、上手く活躍させてあげれてたか心配だったりします。

さて、物語はこれより、ユウキ編へと入っていきます。
Twitterの方では、ユウキが来るのか来ないのか、なんていう予想が飛び交っていたりいなかったりしましたが……?

おめでとうございます!!
ユウキ参戦!!

ということで。
本当は、ここで()()()()()を発表する予定でしたが、作者感想だけで終わりそうですので、発表はまた次回にします。

僕自身早く書きたくてうずうずしてるので、多分すぐ上がると思います。

お楽しみに!!

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この動画にしかない物語の鍵があります……。

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