これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「…………」
酒場は、沈黙に包まれていた。
一般の方は、賑わっている。
最後の最後まで、小さな戦士達が戦い、その末で男の方が負け、その後だったからだ。
彼らが、
✣
沈黙はこちら。
タスクらがいる、個室である。
相変わらずのほほんとしたタスクと、厳しめな目で床を睨み、カクテルを仰ぐ店主。
目を伏せて息をつくシノンと、最高に居心地が悪そうなキリト。
どうなるんだろう。
そんな風にしか見ていなかったディスプレイで起こった悲劇。
泣いて伏す大男の背中をさすり、無線を飛ばすナイファー。
呆気に取られ、呆然とした中、レンとの決着を待って、リザインを押した本隊。
そして肝心のレンとの試合も、
重苦しい雰囲気になるのも致し方なし、むしろ当然かもしれない。
「……して」
「っ!」
すると、店主がゆっくりと顔を上げた。
キリトはその横顔を、恐る恐る見る。
「どう、評価する? タスク君は」
「……うーん」
そんな顔を向けられながらも、のほほんとした態度を崩さないタスク。
そう問われ、飲んでいたワインをクルクルと回すと……
コト
「……ま、上出来、でしょうか」
「上出来……かい」
「ええ」
明らかにそうじゃないだろう。
そう言いたげなキリトの目が、タスクと店主を行き来する。
……するとその時だった。
「……落ち着いてキリト」
トントン
「んえ……?」
シノンが、キリトの背中をつついた。
キリトはゆっくりとそちらに振り返る。
「……彼らはよくやったわ。上出来よ」
「ええ……!?」
すると彼女まで、そんなことを言い始めた。
キリトは思わずシノンを凝視する。
そして勢いよく店主へ振り返ると。
「はぁぁぁ〜そりゃそうよなぁ〜!!」
「……えっ」
先程の雰囲気と一転。
店主がカウンターにひれ伏した。
✣
そして時は流れ、その日の晩。
すっかり日も落ち、夕食も腹に入れ、あとは寝るだけなキリト。
……否、現実世界の、桐々谷和人である。
彼は今、電気を消した自室でベッドに横になり、天井を眺めていた。
「……」
不思議な感じがまだ抜けない。
今日の試合はLMが勝った。
問題はその後。
結局、あのチームには報酬は何もなかった。
後から聞けば、ピンクのチビに負けたのも、わざとらしい。
理由は、敵チームにリザインの選択肢を与えてはいけないから。
筋が通っている。納得もできる。
……しかし。
それらに対するタスクらの反応。
不思議な感じはここからである。
シノンも含め、彼ら3人に一貫して共通していたのは、「彼らはよくやった」という意見。
よくやったなら……報酬をあげてもって思うのは、『甘い』のか。
あの後、あの店主が、すごく項垂れていた。
しかしそれはがっかりというより、そうなっちゃっかぁ、というような、笑いを含めた項垂れだ。
「任務が絶対、そう言っているのに、何も達成しなかった任務に対して、『よくやった』…………んん?」
寝返りを打ち、今度は壁を眺めつつ、そう独りごちる和人、
矛盾。
頭には、そんな単語がよぎる。
……しかし、だ。
この一見矛盾した状況の中に、
✣
それから数分後。
ピピピ……
「ん、んん……?」
いつの間にか寝ていた和人は、スマホの着信音で目を覚ます。
「誰……だ? こんな……時間……に」
そして手探りでスマホを手繰り寄せ、眩しい画面に目を凝らす。
するとそこには、「明日奈」と書かれていた。
「アスナ……!? どうしたんだ一体」
ピッ
キリトは慌てて緑色の通話ボタンを押し、スマホを耳に押し当てる。
「は、はい……もしもし」
『……もしもし!! いきなりごめんね、キリトくん』
「……ん、いやそれはいいけど……何かあったのか?」
和人は、体を起こしてベッドに座り込む。
いつものパソコンを介したテレビ電話ではなく、スマホでの通常通話な辺り、普通の電話、では無いのは確かであろう。
疑問、と言うより心配、が彼の心に染みでてくる。
『ん、いや、いまALOから帰ってきたんだけどね……』
「あぁ……うん……?」
ALO、いかにもいつも通りな単語が出てくる。
和人の心に、少し疑問が増えてきた。
……そしてしばらくの沈黙の後。
『私を……GGOに連れてってほしいの』
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