これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
『逃がしてやる。その代わり、この後必ず俺と勝負しろ』
ベネットの真剣な眼差しと共に、この言葉が脳裏に蘇る。
少し前。
居住区で、彼と鉢合わせた時の「
彼はナイフを持つ手を掴まれてもなお力を入れ続けながら、そう言ってきた。
最初のエムは、もちろん困惑した。
だが、よくよく考えてみれば理にかなっているのである。
まず今のこの状況。
もし戦うか、逃げるかを選ぶことができるなら、間違いなく逃げるを選ぶ。
敵の増援が迫る中、のうのうとつかみ合っている場合ではないからだ。
ただ、そう簡単に逃がしてもらえるわけが無い。
そこには何かしら、
そう、それが、
これは、レンを孤立させ、かつ、ベネットを倒さないと合流できないことを意味している。
紐解いてみれば実に簡単な話だ。
ようはただの時間稼ぎである。
エムは逃げたい。
ベネットはレンとエムを遠ざけたい。
そのどちらをも取れる策。
それが、この提案なのである。
ただ実に利口な案なのも事実なのだ。
レンの孤立はエムの孤立を意味するが……
ベネットの孤立は、その他の孤立を意味できない。
もしこれが赤の他人なら、約束を裏切って合流するか、そもそもここで自決するかもしれない。
だがこれが戦友となると、話が変わる。
今後の関係に影響を出すかもしれないという恐怖が付随する。
これはただのゲーム、遊びであるが、本物の戦闘。
間違いなく相手は敵であって、また間違いなく相手は友人である。
この、ゲームであるが故に生まれる特異な状況を、上手く利用してきた手が、この提案なのだ。
お互い譲歩しているように見えつつ、実際は微々たるところでベネットに有利。
さすがは歴戦。
様々なスクアッドを渡り歩いてきた程はある。
……ただ、気がかりなのがそのスクアッドである。
ベネットは、様々なスクアッドを渡り歩いてきたが故に、チームワーク重視の傾向が強い。
そんな彼が、1人で勝負を挑んでくる?
チームメイトに相談もせずに?
そんな疑問も無くはないのだ。
そのスクアッドが、取るに足らないほどなのか。
考えられなくはないが、ベネットはそもそもそんな連中の輪には入らないことを、エムはよく知っている。
彼は、いくら金を積まれたとしても、そのスクアッドに納得できる強さ、あるいは面白さがなければ、絶対に仲間に入らない。
と、言うことはだ。
恐らく、彼が入っているのは……
そう、考えられるのである。
✣
ボゴン!!
その考えが、確信に変わった。
今まで一度も聞いたことがない音がしたから。
「なっ……!!」
パパパン!!
反撃の音が消えてきて、エムは反射的に顔を下げる。
防壁があるのでその必要は無いのだが。
それより今、確かに見たもの。
相手の銃の上に確かにあった、
「なるほど……な」
彼が入ったスクアッドが、やはり並ならぬものであると確信する。
彼は基本に忠実だ。
そして絶対、自己流に走らない。
そんな彼が、あんな見た事ないものを使うわけが無い。
ということはつまり、そういう事だ。
仲間に触発されたのだろう。
その、
「……ふっ」
面倒なことになった。
そう言いたげに、エムは少し笑った。
✣
「すごいぞ……これ……!!」
対して、岩の裏のベネットである。
そんなことを呟きつつ、弾痕で真っ白にひび割れたパネルを、半ば強引に殴るように切り離す。
そしてまた虚空から現れた新しいものを取り付ける。
想像していたより、遥かにいい。
「これが固有ガジェットか……!!」
そう呟きながら、岩に背中を密着させて少し笑う。
彼は、初めて自分が、
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