これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
ヒュン!!
その時は、風の音しかしなかった。
……が、その次の瞬間。
ドシュウ!!
「んぐっ……!?」
彼ら……VRFの1人、レックスが、太もも内側からポリゴンの血を吐いた。
「レックスさん!!」
「こっちを見るな!! 周りを……!!」
「あっ……クソ!!」
咄嗟に反応してしまったライトが、今度は首筋からポリゴンの血を吐く。
「あいつだ……
ライトはそう叫びながら膝を着いた。
「クソ野郎……どこ行きやがった……?」
プルームとベネットは、銃を握り締めて当たりを見回す。
一面に広がる荒野。
地面から生えるように点在する岩。
申し訳程度に生えた雑草。
パッと見は普通の荒野だが、この視界のどこかに、
するとその時だった。
ヒュン!!
「っ!?」
「プルーム!!」
プルームの向いていた方向から横に90度。
右側だから、およそ3時の方向。
「……ぬん!!」
バキッ
「あっ……!?」
だがそこはプルーム。
思い切り銃のストックを突き上げ、彼女の腕のリーチに入る前にその小さな悪魔を突き放す。
「……今だ!! 早く2人を連れて後退を……!!」
すると、タウイがそんな2人を見つつ、ライトを背負って走り出す。
それにならい、ベネットとギフトがレックスの肩を担いで走り出した。
銃を突きつけプルームが対峙するは、かの有名なピンクの悪魔。
「……へぇ、銃はお持ちじゃないのかい、お嬢ちゃん」
「さっきの戦闘で壊されちゃってね。今はこの子だけなの」
向き合い、流れる緊張の時間に、プルームはレンにそう話しかける。
それに対しレンは、意外と普通に言葉を返した。
通常であれば、勝負ありとなるこの状況。
一方が銃を突きつけ、一方は銃を失いナイフのみ。
ただそれが
たとえ引き金を引いたとしても、避けられる確率は正直五分五分。
そしてもし仮に避けられた場合、自分に彼女のナイフが刺さるのはもはや間違いない。
「……ふ」
「?」
すると、プルームが一息、そう笑うと、ゆっくり銃を下ろした。
レンはそんな彼を見て、キョトンとした顔を横に傾ける。
ただ次の瞬間。
「
「……!! そういうことね……!!」
プルームは、しゃっ、と後ろ腰からナイフを取りだした。
レンも改めて、ナイフをギリッと握りなおす。
じりっ、そう聞こえてきそうなほど、張り詰めた空気が荒野に流れた。
✣
一方、プルーム以外のVRFである。
「……もう、大丈夫。なんとか……」
「無理するなライト、まだ出血は続いてる」
一際大きな岩山の裏に座った彼らは、治療キットを惜しみなく使い、救急活動に勤しんでいた。
首筋を切られたライトは、出血のデバフのせいで、あまり視界がはっきりしていない。
対し、太もも裏を切られたレックスは、これも出血のデバフのせいで、足に力が入らず座り込んだまま。
時間の問題ではあるが、これではこの2人はまだ戦えない。
状況はこちらが圧倒的に有利。
人数的にも、経験的にも。
……しかし。
「ひとつだけ……不安材料がある」
「っ……!?」
するとその時、不意にタウイがそう言った。
全員の視線が、タウイに向く。
それに対してタウイの視線は、
「あのスナイパー、だ」
「!!」
そして次の一言で、今度は視線が全てベネットに移る。
「約束……したって言ってたよね」
「……ええ」
「こういう界隈ではよくある話さ。だから内容は聞かない」
「……」
「でもね。その代わり、してあげられることは何もない。むしろ、チームのためにしてもらわなければならない。君、1人で」
「……はい、分かってます」
タウイの目はあくまでやさしい。
だがしかし、その奥に見えるのは、真っ直ぐとした揺るぎない芯。
のほほんとしていて、時々冷たいプルームの諌め役で、そして我らVRFの
ベネットには分かる。
これは、信頼の証なのだ、と。
新参者の、実力も足らない、そんな自分が勝手にしてしまった約束を守らせてくれた。
チームの勝敗を分けるかもしれないこの事態を、ベネットにも肩代わりさせてくれた。
その信頼を、裏切る訳にはいかない。
「任せてください。必ず終わらせて、帰ってきます」
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