これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode100 とんでもないこと 〜Ridiculous thing〜

「ふむ……」

 

薄暗い部屋の中で、2人のプレイヤーがサテライトスキャン端末を眺めている。

 

1人は、全身が目立つピンクの小柄なプレイヤー。

対してもう1人は、全身が迷彩の大柄なプレイヤー。

 

そう、レンとエムである。

 

「……エムさん、どう?」

「うむ」

 

何やら神妙な顔をして、スキャンされていくマップを見ているエムに、レンは不安そうな顔でそう尋ねる。

 

するとエムは、淡々と話し始めた。

 

「まず我々がいないエリアだが……」

「う、うん」

「順調に数が減ってきている。これはいい傾向だ」

「確かに」

 

エムの言葉に、レンはコクリと頷く。

 

自分達が戦わなくても、順位という結果で見れば「勝った」ことになる。

ようは何もしなくても勝ち続けているということだ。

 

広々とした解釈かもしれないが、レンにとってはそうしないとやっていけないのである。

 

「それで……俺たちの周辺だ」

「う……うん」

「分かるだろ、レン」

「と、()()()()()()()()が……」

「ああ、起きてる」

 

すると、エムがすっと指をホログラムの地図に当てて、声を一段と低くした。

それを感じ、レンも息を飲む。

 

この地図が示す、いつの間にか起こっていた、『()()()()()()()()』。

 

それは……

 

「まさか()()()()()()()()なんて……」

「うむ……」

 

そう。

彼らが知らない間に、大番狂わせが起こっていたのだ。

 

場所は、都市部中央。

 

「恐らくこれが……プロチームのリーダーの位置だったやつだろう」

「……」

 

エムが、道路脇の点を指す。

 

「それで……これらが屠られる予定だった3チーム」

「……」

 

そして次に、少し移動した先の3点が密集している場所を指した。

 

エムの予想としては、最初に指した道路脇のチームが生き残り、密集した3点のチームが全滅する、というものだった。

 

……が、現実はそうではない。

 

「まさか……とは思ってたけど……」

「ああ。どうやったのかは知らないが、プロが漁夫の利チームに負けた」

 

レンが明らかに動揺し、青ざめていく。

 

生存を示す光点は、密集した3点のうちのひとつであった。

少し離れて独立した点、要はプロチームを表す点は、その代わりのように、灰色に変わっているのである。

 

「ね、ねぇ、エムさん」

「ん……?」

「こ、これってつまり……さ」

「ああ……」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()がいる……って事だよね?」

 

 

 

 

 

「そういう事だ」

 

レンの恐る恐るな質問に、エムは頷いて答える。

そんなエムもどこか、厳しそうな目をしていた。

 

 

「それで、俺たちの進路だが……」

 

それから、数分後。

現状、生存しているチーム全ての予想進路を立てた後。

 

レンとエムは、最後に自分達の進路を決めようとしていた。

 

「彼らはおそらく、こちらへ来るだろう」

 

そう言って、エムは都市部にある光点……『VRF』を指差す。

 

「なんで?」

 

そんなこと言えるの?

そう言いたげなトーンで、レンはその言葉に返した。

 

するとエムは、レンの方を向きもせず、おもむろに室内を見渡しながらその言葉に言葉を返す。

 

「都市部は不利だろう?」

「確かに……って、それだけ!?」

「いや、問題は……敵の数だ」

「……!!」

 

なるほどそういう事か。

レンは納得して地図をまた見る。

 

現状、都市部から見て北の森や南の砂漠、もしくはその周辺地域には、少なくとも敵チームが2チーム以上はいる。

 

だが、西の居住区にはレン達1チームしかいないし、周辺地域にも敵チームがあまりいない。

 

さらに奥の沼地の1チームが来ると想定もできるが、マップを見る限り、1か2回前のスキャンの時からずっと宇宙船から離れていない。

 

さらにはその周辺には全滅を示す灰色の点が複数ある。

これは、ここに陣取っている証拠で、つまりはそこから動きがあるとは考えられない。

 

「標的を1つに絞れるエリアに進撃してくる……と」

「そうだ」

 

そこまで考えが至ったレンが、そう呟いてマップを閉じる。

であらば、レンが思いついた行動はただ一つ。

 

「ねえエムさん」

「ん?」

「もちろん私たちはさ」

「……ふ、その通りだ」

 

すると、エムもその考えに同意するかのように、少し笑ってレンを見る。

 

「我々は、ここに潜伏し迎撃する」

「そうこなくっちゃ!!」

 

レンはつい、嬉しくなってそう叫んでしまった。

 

「……ただし、だ」

「?」

 

するとその時、そんなレンを気に求めず、エムが後ろを向ききつつその叫びを遮る。

レンは両手を突き上げたまま、エムの方に胴体ごと向く。

 

そして次の瞬間。

 

 

 

 

「普通の迎撃じゃ、つまらないだろう」

「!!」

 

 

 

 

そう言って振り返ったエムの手には、()()()()()()()()()が携えられていた。




新年あけましておめでとうございます!!
駆巡 艤宗です!!

ついに始まりましたね、2020年!!
オリンピックがやって来ることを始め、2010年代からちょっと未来に進んだ感じがして、なんだか楽しみです(笑)

この作品も、あと半年で3周年を迎えるというところまで来ておりますし、今話、記念すべき第100話となります。

これも全て、皆様の応援のおかげです。
改めて感謝を申し上げます。

ありがとうございます!!

本来は年末に後書きにて感謝を申し上げるつもりだったのですが、気づいたら年を越してしまっていたので、新年最初の投稿にて、このように書かせて頂きました。

新しい年、みなさんは何か変わったことがあるでしょうか?

是非、その変化を大切に。
実はこの作品、思いついたのは5年前の年越しシーズンだったりします(笑)

この作品が、どこかの誰かの心にとまっていていてくれれば、僕は幸いです。

今年も僕とこの作品を、どうぞよろしくお願いします。

駆巡 艤宗

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