望んだ世界   作:(´鋼`)

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矛盾の正体

「……………………天井よね」

 

 

 目が覚めれば少女の視界には見慣れた天井。そして背には柔らかな感触、どうやらベッドのようだと気付いた。

 

 

 ーーー…………そういえば、あれは夢だったのかしら?

 

 ーーーそういえば……あの男は何だったのだろうか?

 

 ーーー……あの男は、この世に居るのだろうか?

 

 ーーーそういえば………ッ!!!

 

 

 少女は何かを思い出したかの様に飛び起き、思考を回復させる。回復させた思考からは自分の妹への罪の意識と、無慈悲で素直になれなかった自分への後悔であった。そして何よりも、あの男“矢狙照平”の存在を思い出す。

 

 

「あれでは幻想郷もただでは済まない筈だ!!外は……外は!?」

 

 

 外に出ようとベッドから起き上がり出ようとするが、何故か体がベッドから出ようとしなかった為動けずにいた。

 

 

 ーーー体が……何で!?

 

 ーーー動けッ!!…………動けぇ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暫く動けないわよ、その体」

 

 

 ーーーッ!?誰だッ!?

 

 

 少女の目の前が不気味な光景を写す。無数の目が少女を覗いている様な景色から、1人の者が現れる。

 

 美しく長い金髪、紫を基調とした服装、口元を扇子で隠し、その“妖怪”は現れた。

 

 

「八雲……紫」

 

「御機嫌よう吸血鬼のお嬢様。それともレミリアと言えば宜しいかしら?」

 

 

 彼女の名は『八雲紫』。この幻想郷の管理者にして創造主である1000年以上前から生き続けている存在であり、【境界を操る】という能力の持ち主。

 

 そして、先程レミリアと呼ばれた少女。彼女はこの館の主。『レミリア・スカーレット』500年以上生きているが、体型や容姿は少女である。

 

 このレミリア・スカーレットの部屋に管理者であり創造主である八雲紫が訪れている。何故来ているのかすら分からないレミリアは思考が追い付かなくなっていた。

 

 しかしそれを無視するかの様に八雲紫は話をする。レミリアが寝ているベッドに座り込んで。

 

 

 ーーー八雲紫……何故貴様が此処に居る?

 

 ーーー何故殺意もなく、警戒もせず

 

 ーーー何故……座った?

 

 

「さて……貴女たちには先ず2つ程告げなければならない事があるわ」

 

「……それは何かしら?」

 

「……貴女も戦った人間『矢狙照平』について。といったら?」

 

 

 ーーーッ!!?

 

 ーーー何故その男を知っている!?

 

 ーーーあの男……矢狙照平というのか

 

 ーーーだが、その前に此方も聞きたい事が山ほどある

 

 ーーー答えてもらおうか。八雲紫

 

 

「……先ず私から1つ聞きたいわ。八雲紫」

 

「何かしら?」

 

 

 彼女-レミリア・スカーレット-の口から出た疑問。それは……

 

 

「あの男は……本当に人間なのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ、人間よ。“体だけは”」

 

 

 ーーー体……だけ?

 

 ーーー人間の能力では無いにしろあの男は……矢狙照平は、腹も空かす、眠気も存在すると豪語していた

 

 ーーー人間の力ではないにせよ、人間の持つ治癒力でないにせよ、あの男の身体能力は正しく人間だ

 

 ーーーでは何故、八雲紫は体“だけ”と豪語した?

 

 ーーーあの男はどんな秘密が存在するんだ?

 

 

 レミリア・スカーレットは不思議に思う。矢狙照平は人間と豪語し、その証拠さえも豪語した。しかし堕天使に変身したり妖力を持っていた事を踏まえると、不思議と納得がゆくものだ。

 

 八雲紫がこれから話す事は『真実』であり『絶対不変の事実』である。レミリア・スカーレットはどの様に受け止めるか?

 

 

「貴女の疑問に思う所は分かるわ。この私ですら、この目であの姿をハッキリと見た時は不思議に思ったわ」

 

「そして直感で分かったわ。こんな鈍った直感でさえも簡単に反応する彼……いや【あれ】は恐ろしいと」

 

「能書きは良い。早く答えろ」

 

「せっかちね……まぁ話すのだけれども」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【あれ】は私たち妖怪の原初にして、私たちの祖である存在。【あれ】には……【原初の恐怖】には、誰も勝てない」

 

 

 ーーー【原初の恐怖】?

 

 ーーーあの男の正体が…………【感情】とでもいうのか?

 

 ーーーしかし、あの男には肉体も存在する…………

 

 ーーーいや、男は“器”なのか?

 

 ーーーしかし、そうまでして……何故この世界に居る?

 

 

「さて、次なんだけど……貴女の家族は無事よ。知り合いに医者がいるから治療させといたわ。流石に【原初の恐怖】の器と……貴女の妹は存在そのものだけど、戦ったからね」

 

 

 ーーー……【原初の恐怖】

 

 ーーーどうやら……聞く必要があるわね

 

 ーーーあの男……器の中にいる存在を

 

 

 

 レミリアが真剣な顔つきで八雲紫を見る。八雲紫はレミリアの顔を確認した後、話を続ける。

 

 

「そうね……あれの事を聞く権利ぐらいはあるわよね。貴女にも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━そうね。彼……いや、あの存在は昔から存在していたわ。恐らく『生物に天敵が生まれた瞬間から』。そう考えると、あの存在は軽く億越えで生きてる事になるのよ。

 

━━しかし、何故人間を器として生きているのか。疑問に持つのは分かるわ。私もよく知りたいし。

 

━━……えっ?知っているのではないのかって?

 

━━残念だけど、私が知っているのは【億越えの存在】と【私たちが束になっても勝てない】という事実だけ。

 

━━ここからは私の昔耳に挟んだ事と憶測を交えて物を言うわ。本当なのかどうかは、あの存在に聞きなさい。

 

━━大丈夫よ。あの存在の暴走の原因は器の破壊と恐怖を与える思想が暴発しただけ。今の『彼』には害はないわ。

 

━━さて、話を戻しましょうか。

 

━━あの存在が何故人間という【脆い器】にいるのか。

 

━━噂では“あらゆる驚異となる存在”のみに憑依するらしいわ。それを考えると、私は驚異とみなしてないらしいわね。

 

━━とと、また脱線したわね。

 

━━その器に憑依する際は生物の元々持っていた能力は扱えるし、その場所での恐怖の対象の力も扱える。

 

━━この幻想郷ではあらゆる存在が跋扈している。でもそれは日本だけの話。本来ならばこの“日本”での恐怖だけに変身できる筈が、貴女方が来た影響で恐怖の対象が増えてしまったわ。

 

━━まぁ暴走させなければ良い話だから良いとして。

 

━━それと……これは昔聞いた話の1つで、私が幻想郷を作るきっかけとなった事よ。あれだけは他の妖怪の話を立ち聞きした中でも何故か共感を持てたわ。

 

━━その話というのが【人間】が【妖怪】を生み出したという事。

 

━━それは有名だったわ。その妖怪は直ぐに陰陽師、今でいう退治屋に消滅させられたって聞いたけど。

 

━━そして、人間がその陰陽師を殺した事も。

 

━━その人間が妖力を使用していた事も。全て聞いたわ。

 

━━それが昔の【原初の恐怖】がした行いと考えているわ。

 

━━いや、もう確定ね。あんな力を見せられては信じざるをえない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という所かしら?」

 

 

 ーーー……【原初の恐怖】、聞けば聞くほど納得してしまう箇所もあれば疑問に思う箇所もある

 

 ーーー何故人間たちの中で生き続けているのか?

 

 ーーー何故器を変えないのか?

 

 ーーー力が強いのは私たちの祖であるから

 

 ーーーだからこそ誰にも勝てない

 

 ーーーそうなれば【私たちの恐怖】にも…………

 

 ーーー否、もう【全ての恐怖】なのか

 

 ーーー……明日、咲夜に頼んで呼びましょうか

 

 ーーー敵わない存在と分かった

 

 ーーーこの吸血鬼である私でさえ、敗北を素直に認めるしかない

 

 ーーーだったら、少しでも交流を持てば良い

 

 ーーー私たちの命を……私たちの存在を保たせる為に

 

 

 そして、八雲紫は不気味な空間へと入っていき姿を消した。レミリアは再度横になり、体を労るかの様に眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい皆様遅れてすいません。うぷ主の鬼の半妖です。

中々内容が思い付かないので手間取りました。そして急に電波を受信して新しい小説書きました。始めたばっかなのに!!

では、皆様また次回で

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