ヒナタの中で、違和感は拭えない物になって来ていた。
原作で書かれていた程、宗家と分家での対立が見られない。
子供の前ではギスギスした物を見せないようにしている、と最初は思っていたが、3歳の誕生日での宴会で分かった。
宗家のヒアシは尊敬され、宗家を分家が命を懸けて守ると言うより、宗家が分家をまとめ上げて背中を預け合うと言った感じだ。
呪印の件も、アッサリ受け入れられた。
呪印の縛り付ける機能は、あくまでも形だけのような…。
(これは…初代からの当主の手記を調べた方がいいかも。)
これだけ日向を変えるのは、少なくとも10年単位…いや、もっとかかる。
日向の様な名家は、旧くなればなるほど既存のルールを変えるのは難しい。
初代当主から、初代火影の時代の当主までで、〝内政チート〟を行った人物。
「と、いうことで手伝って?」
「うわ、めんどくさい…。なんでまた…。」
「手記で何かを記しているのなら、英語の可能性が高いからよ。
こちらの世界では暗号としか読めないし、向こうの世界の共通語よ?
私も簡単になら読めるけど、元が日本人なんだから遅くなるの。だから、ね?」
「…分かりましたよ。」
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暗号(英語)は簡単に見つかった。
初代火影の時代の日向家当主、日向ヒバナ
ヒバナの手記には、ネジとヒナタに向けての言葉が簡素に書かれていた。
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ネジ、ヒナタへ。
勝手な想像ではあるが、我が子孫である2人は恐らく転生者として産まれてくるだろう。
今ならば…こちらの世界へ送り込まれた意味が何となく分かった気がする。
とりあえず、出来るだけ2人が過ごしやすいよう整えておいた。
日向家の事も、うちはの事も、全部…。
願わくば、2人がこの手記に辿り着く事が出来ますように。
日向ヒバナ
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「なんだと…見越して…いたのか…?」
「…この調子で行くと、各里に1人は転生者が…?」
「俺らの時代だけではなく、過去も合わせると…可能性は高いな。」
「ネジ兄さん、明日…里を散策しよっか…。」
「…構わんが、まずはヒアシ様を説得すべきだな。」
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「父上、明日、里の中でネジ兄さんと一緒に遊んできてもいいですか?」
「…大丈夫なのか?」
「僕も一緒に行くので大丈夫ですよ。危ない所に近づかないようにします。」
「では、頼んだ。
門限の5時までに帰ってくるように。」
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日向家の屋敷から出て、まずすべき事は…。
「ナルトの迫害を少なくする事と、うちはは…大丈夫なの…か?」
「ヒバナが2代目火影によるうちはへの迫害を止めたからな。
それでも、もし虐殺事件が起きた場合のサスケの心のケアと、真実へ辿り着けるように仕向ける方がいいかもな。」
「この化け物め…!」
「聞こえたか?」
「あぁ、急ごう!」
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うわぁ…これは酷い。
小さな子供に、大の大人が寄ってたかって暴行を加えている。日本ではお縄になるだろう。
金のツンツンの髪にはドロが付き、頬のヒゲのようなアザも確認できる。
空色の瞳は腫れた瞼に隠されつつあるが、虚ろで焦点が合っていない。
そんな痛々しい姿に、ヒナタは思わず声を掛けていた。
「何をしている!?」
「子供は黙ってろ!化け物が彷徨いていたから駆除をして…!!日向…!」
「寄ってたかって大の大人が小さな子供を暴行して楽しい?」
「だからこいつは化け物で…!」
「違う!この子は私達と同じ年頃の子供だ!
見てわからんのか!?目が死んでいるんじゃないのか?」
「な…」
「そもそも、ここは隠れ里だ。お前らでは太刀打ちできぬ化け物なんかいくらでもいる。
オレら日向一族然り、うちは一族然り…。
忍者は化け物揃いでなければやっていけない。大人なのにそんな簡単な事もわからんのか?
それとも、なんだ。忍者は迫害されるべきだとでも?
うちは一族、日向一族、猿飛一族、油女一族…。
忍者の名門を化け物だと暴行するのか?」
「しかしっ!こいつは…」
「黙れ!!」
「ヒッ…!」
軽く殺気を向けると、男達は散っていった。
「な、なんでだってば…」
「気を失ったか。」
「ネジ兄さん、日向家の屋敷に連れていこう。」
「そうですね。」
化け物ってだけで迫害してたら、忍者はやっていけない気がするの。