「ヒナタ、あーん」
「あーん…」
口を開けると、ひと口サイズにカットされたリンゴが入ってきた。
口の中で甘さが広がり、目の前ではやぐらさんが蕩けるような笑顔を見せている。
「可愛い…餌付けしてる気分になるな。ヒナタ、もう1個食べるか?」
「うん」
順調に餌付けされ、やぐらさんが持ってきたリンゴが全て無くなる頃には私もやぐらさんも満足気な表情を浮かべていた。
1週間に1度のお泊まりの日、やぐらさんがリンゴ(20個入)を持ってきてくれ、一緒に(私:19個、やぐらさん:1個)食べた。
あの中忍試験から2年。
上忍として任務をこなす一方、やぐらさんとも上手くやれていた。
やたらと私を甘やかしたがるやぐらさんと、父様公認の甘えん坊である私。
…上手くいかないはずないよね。
「やぐらさん、好き…」
「くっ…可愛い…!ヒナタは俺をどうしたいんだ…!」
やぐらさんにそっと抱き締められ、やぐらさんの胸板へと顔を埋める。
やぐらさんのいい匂いが広がり、思わずスリスリと頰擦りしてしまう。
「俺を…萌え殺す気か、ヒナタ…。」
やぐらさんは何かに耐えるかのように声を絞り出している。
最近、そういう事が増えた。
顔を赤くして前かがみになり、胸を凝視する…何に耐えているかは分かる。
まぁ、巨乳だから抱き着いた時に当たるのだろう。
婚約者となって7年。
原作では1部と2部の間に当たる、ナルトが修行の旅に出ているハズの時期である。
旅には出ておらず、九尾─九喇嘛とも相棒となったナルト。
今の所人柱力狩りも起きていない。
私も身長…は伸びずに、胸が更に成長した。
やぐらさんは巨乳好きだったのか、大きくなるにつれて前かがみになる頻度が増えた。
…1週間に1度は泊まっているのに実行に移さないやぐらさんの紳士具合がかっこよすぎて辛い。
まぁ、求められたら応えるだろう。
いくら可愛いとはいえやぐらさんだって男だし、いつかはそういう事をする事になるのだから。
「ヒナタ…俺がヒナタの事襲いそうになったら全力で止めてくれ…。」
息が荒く、目を瞑りながら呟いたやぐらさんは苦しそうだ。…可哀想になって来たから、こっちから行くべきなのだろうか?
『…ヒナタちゃんから誘わないと結婚するまでこのままだと思うな。』
という磯撫先生によるアドバイスも貰った私はやぐらさんにそっとキスをした。
「…私の身体も心は全部やぐらさんの物だから…やぐらさんになら、エッチな事されても嫌じゃないよ?」
「ヒナタ…今夜は寝かさないから。」
「へ…あっ、やぐらさんっ…んんっ!」
ベッドへと連行され、押し倒された後は…お察し下さい。
----------------------------------------
何のとは言わないが初体験を終え、宣言通りに夜通しやっていたお陰で腰が痛い。
やぐらさんが名残惜しそうに水影の仕事へ行き─ヒナタを残して行きたくないとかなりぐずった─汚れたシーツの洗濯を
汚れた箇所を愛おしそうに見つめるグレンさんをチョップで正気に戻し、白眼でやぐらさんが水影として頑張っている姿を見る。
…可愛い。
成人男性が女性よりも可愛いってどういう事だ。ってか出会った時から見た目が変わってないぞ、あの人…。
やぐらさん七不思議だ。
その内の一つに、こうして白眼で覗いている事が簡単にバレるというのも私の中で連ねられている。
…白眼の持ち味は対象にバレずに視覚情報を入手可能だということが挙げられるハズなのだが。
やぐらさんの察知能力は人外レベルだというのが良くわかる。尾獣化しても勝てる気がしない。
「…磯撫、やぐらさんの弱点って何?」
『強いて言うならヒナタちゃんだね。』
「ア、ハイ。」
次回からはサラっと書かれたナルトと九喇嘛の和解編です。