手を取られて連れてこられた庭は、日向宗家の庭に引けを取らないほど美しいものだった。
美しい庭に見とれている私に、やぐらが話しかける。
「ヒナタ、僕は…初めて会った時からヒナタが好きだ。」
…?その言い方ではまるで…あった事があるような感じだ。
「初めて…会った時…?」
「あぁ、会ったと言っても、言葉を交わしたわけではない。
九尾の人柱力であるナルトをヒナタが助けた日、水影に就任した直後で火影殿との会談があって、僕は木の葉にいた。
…一目惚れだった。
小さいのに、周りに流されずに意見を言える姿が美しいと思った。
でも、ヒナタは日向宗家の長子だから…耐えるしかなかった。…初恋は実らないって。
僕は、ヒナタを手に入れる為にヒナタが三尾の人柱力となった事を利用した。
ヒナタ…そんな僕の事を軽蔑してもいい。
だが、いつか絶対に振り向かせて見せる。」
あぁ…だめだ。
タダでさえ、心臓が破裂しそうだったのに…イケメンにそんな事を言われるとは…。
今の私は、元来のヒナタと同じように赤面しているのだろう。
体が熱いのがわかる。
私は…前世から、人からの好意や褒められることには慣れていない。
それがlikeではなくloveであるなら尚更。
自分の価値を見い出せなかったから。
でも、本心で言っているかどうかぐらいはわかる。
やぐらの紫色の目は、本気だと物語っていた。
「やぐら様…私……。」
「結論は急がなくてもいい。時間はたっぷりあるのだから。」
「はい…。」
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「ヒナタ、ここが新しい住居だ。
一通り家具は揃えてあるが、必要な物があれば従者に言ってくれ。」
「はい、これから…よろしくお願いします。」
「宜しくな、ヒナタ。
時々顔を出すから、ヒナタも寂しくなれば会いに来てくれ。」
「は、はい。」
新しい住居は、日向家程ではないが一般的に見れば豪邸である。
里のなかでも中心街に近く、立地がいいし鍛錬所もある。
これでも結婚までの〝仮〟住居だ。
逆に言えば結婚する年ー結婚出来るのは16からーまでは住み続ける。
従者も警備も女性が多い。
アカデミー編入手続きも完了しているとのこと。
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「日向ヒナタです。よろしくお願いします。」
自己紹介をすると、教室はざわつき始めた。
教室内の空気を一言で表すと…
〝日向の人間が何故霧隠れに…〟
日向家は木の葉の名門だ。
白眼の機密を守る為、白眼を持つ者は里内で暮らす。
そんな日向家の娘が木の葉ではなく、霧隠れのアカデミーに通うことは噂になる事は間違いない。
私に関する情報ー婚約の事や人柱力の事ーは極秘扱いだ。
人柱力だと言うことは…すぐにバレる。
それまで好奇の目に耐えるしか無いだろう。
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「グレンさん!お待たせしました!」
「ヒナタ様、何もされていませんか?アカデミーには虫がいっぱいいるので…私、心配で胸が張り裂けそうになって…門に来るのが0.40秒も遅れていたのでアカデミーに突撃しようか迷っていた所でした。」
「だ、大丈夫だよ…?」
「でも…天使様であるヒナタ様にあんなことやこんなことをしようとする輩がいないとも限りません。
あぁ…私にも白眼が使えたらいいのに。
そうすればあんなことやこんなことをするようなゴミ虫に天罰を与え…」
「グレンさんストップ、分かったから!」
ヒートアップしたグレンさんに、周りの目が注がれていたのに耐えられず、途中で止める。
変態な事に目を瞑れば、元暗部大隊長であった実力者であり、護衛として優秀だ。
私との顔合わせの際「天使が降りてきた…」と泣き始め、跪く始末だった。
それからお風呂まで着いてきて必要以上に体に触られている。
その時の目が怖かったのはヒミツだ。
また、「やぐら様と床を共にする練習」と称して何処からともなく男性の〝アレ〟のリアル模型を渡された時はグレンさんの休止の点穴を着いてしまった。
その後、私に会いに来たやぐら様に報告がいっていたらしく、少し顔を赤くしながら謝られた。
…リアル模型はそのまま置いてあるのだが。
一悶着があったものの、変態を上手くあしらうスキルが上がったのは言うまでもない。