ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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業者との癒着をする提督

彼の野望に向かって走り続けます。

彼を応援してくださいね。


第27話 雨

≪カリカリカリ、カリカリカリ≫

雨音のに混じって、ペンを走らせる音しかしない執務室。

 

≪カリカリカリ、カリカリカリ≫

 

≪カリカリカリ、カリカリカリ≫

 

≪カリカリカリ、カリカリカリ≫

 

≪カリカリカリ、カリ≫

 

「ふー、一服するか」

≪ボーン、ボーン、ボーン≫

「お、ちょうど3時か」

 

執務机を占領していた書類もあと半分というところまで片付いた。

 

肩を回すとゴキゴキと音がする。

「あー、まじめに働くのは、いーやーだー」

駄々っ子のように机に突っ伏す。

 

「・・・・」

眼鏡が黙ったまま、ソファに座っている。

 

今座っている提督専用のひじ掛け椅子をくるりと回して、窓の外を眺める。

「雨は、大地を潤してくれるから嫌いじゃないんだよな」

この言葉に嘘はない。

俺は変わり者なのだろう。

 

雨は嫌いじゃない。

ただ、カッパを着るとか雨対策をしたうえでの話だ。

兵学校の訓練で、行軍野戦課程の天候がたまたま台風だった。

暴風雨の中、ポンチョに包まって、一晩明かした時、周りは落ち込んだり愚痴をこぼしたりしていた。

その中で、結構ノリノリだったのを思い出すと口元が緩む。

「変なヤツだな、俺は」

 

天候は一個人がどうにかできるものじゃない。

したがって、どう向き合うかが大事なのだ。

 

どうにもならない状況では【どう向き合うかが大事】だと、行動するようになったと思う。

 

「眼鏡、お前は雨は嫌いか?」

別に答えて欲しいわけではなく、何気なく口から出ていた。

 

「あの・・」

「答えなくていい。

 口から出ただけだ。

 何でもない、気にするな」

「・・・・雨は、きらいじゃないですけど、洗濯ものが乾かないので困ります!」

「ふふ、困るな。

 確かに俺も困る」

「クスッ」

 

「おっと。

 眼鏡、今、俺に惚れそうになっただろ」

 

「な! そんなことありません!」

「油断するんじゃないぞ。

 俺は時々、カッコいいからな。

 お前らが惚れてしまったら、大変だ」

 

眼鏡がどんな顔をしているか想像しなかった。

もう少しの間、雨降りの景色を楽しむことにした。

 

 = = = = =

 

「終わったー」

「終わりましたー」

執務机の机上から書類が消えた。

 

思ったより早く片付いた。

左の3段目から、ウイスキーの瓶を取り出した。

「てーとく、勤務中です。

 控えてください」

「今日だけだ。

 細かいこと言うな」

 

「範を垂れるお立場です」

「俺は不良なんだよ。

 ごちゃごちゃ言うなら、襲うぞ」

「ふん、凄んでも怖くありません。

 てーとくは、きっといい人で、変なことは、できません」

「ほほー。

 ほーほー。

 いいのかぁ、小娘ぇ。

 今朝、誰だったのか、気にならないかぁ」

 

「え、はっ!」

眼鏡は今朝の会話を思い出して固まった。

私室に自分以外の誰かの残り香に気がついた事実。

香りが残るほど濃い、残るほど長い時間、艦娘があの部屋で過ごした可能性。

 

眼鏡は半分後悔している。

目の前の男を信用していると言ってしまった。

少なからず好感を抱いているということの裏返し。

そして、挑発してしまった。

 

昼食の時、食堂はいつもと変わらなかった。

誰も犠牲者になった素振りはなかった。

もしかしたら、納得したうえで提督との関係を持ったかもしれない。

 

失敗だった。

状況を忘れて考え込んでしまった。

 

両肩に何かが被さったような錯覚の後、それが男の手だとわかった次の瞬間、頭が真っ白になった。




さあ、眼鏡巡洋艦の運命は。

スケベスカートは活躍するのか。

R15に収まるのか!

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