『では、ヴァルトシュタインに関して、話を続けましょうか』
「ああ」
光の剣を納め、そう返す
手を握り締めた時、光の剣は強く輝いていた。維持は出来ている、問題ない。寧ろ問題は……このまま光の剣を顕現する修行を続ければ感情の昂りにより暴走し、フェイを傷つけかねないこと。俺の掌がまた傷付いているのはどうでも良いが、フェイにまで被害が及ぶのは避けたい
『とはいっても、ヴァルトシュタインについての資料も多いですし、何について話しましょうか』
「ならば……ヴァルトシュタインが呼んだというサーヴァント達について」
俺の中に居るだろうジークフリート等を呼んだのか否か等、気になる部分は多い
『ええ、良いでしょう。といっても、真名等まで残ってたりはしませんけどね』
「まあ、そこまで期待はしてない」
『アヴァロンの魔術師☆M位ですかね、名前が明確に残っているのは。アヴァロンで魔術師でMといえば、まあマーリンでしょう。どうしてか妖精郷から引きずり出され、こんな大掛かりな聖杯戦争を仕組んだ訳ですね
第二次に呼ばれたのはライダー。騎馬民族の王だか何だったからしいですね』
「第三次、セイバーは?」
『残念ながらジークフリートではありません。もしもそうならば、と思ったならば期待には添えませんね』
「そう、か。俺の中のサーヴァント……もしもかつて呼ばれていたならばとは思ったが」
そうすれば、ずっと俺の中で眠っている彼……いや彼女?に力を借りれるかもしれないと思ったのだが。一度PCというもので調べてみたが、ジークフリート女性説が頭の中に生まれるだけで終わってしまったのだし。ひょっとしてあの英霊は実は女性だったりするのだろうか、それすらも、俺には分からない
稀に見る夢は、銀髪の少女が草原を眺めるもの。俺の中のサーヴァントと俺は、かくも遠い。これでは思ったほど強くないとシュタールに言われるのも当然だろう
『セイバーは、和装の少女を連れた剣士だったらしいですね。恐らくは日本系列でしょう』
「少女……」
『気になるのはそこなんですか。ひょっとして、少女趣味とかあります?』
「無いよ。というか、
『案外残ってるんですね、その記憶』
「俺の中に散らばってる記憶の欠片を拾い集めてみたら、案外な」
『なら、話が終わったらその時の事でも聞きましょうか』
少し悪戯っぽく、フェイは笑う
「そういうの、好きなのか」
『女の子は誰しも、恋の話が大好きなんですよ』
「俺は、愛と勇気のお伽噺の方が好きだけどな」
お伽噺ならば、俺になって消えてしまうなんて理不尽で終わる人間なんていないだろう。最後にはハッピーエンド、全部丸く収まって、不幸は取り除かれて、悪は滅びる。そんな綺麗事。良いじゃないか、最高だ、その何が悪い。御都合主義の奇跡でも、理不尽な現実よりもよっぽど素晴らしい
だから、聖杯をもって御都合主義な奇跡を起こしたくもなる。今の俺には不可能かもしれないが、出来る手立てがあるならば……
『彼については、あまり資料はありませんね。神剣一閃、呪縛を断つ。とりあえず、従えた恋人らしい呪術師と合わせて他のサーヴァントを圧倒したらしいということだけは確かです。まあ、セイバーに関しては、資料にも「ケモミミ萌えのはしり……きゃー進んでます未来先取りしすぎです」とか、よく分からない走り書きだけは多いので』
「一気に胡散臭い資料になったな……」
ケモミミ……。少しだけ考えてみる
例えば、フェイに狼の耳があったら、ミラに猫の耳があったら……
妄想を振り払う。案外行けるとか、寧ろそれが良いとか、何を考えている俺。そんな幸福な事を考えている何て許されるのか。彼はもう、そんな幸福を感じれないというのに
『ひょっとして、考えました?』
「進めてくれ」
『ワタシの狐耳か何かですか?まあ、考えるのは自由ですよ。付けませんが』
「先に行ってくれ」
『感想は』
「進めてくれないか」
『「ふわふわもふもふの尻尾、何時もより幼」』
「頼むから進めてくれ」
『まあ、からかうのはこれくらいにしましょうか』
フェイはそこで止まる。あくまでもからかい。軽口のレベル。それが、有り難くて
だから今の俺は……こんなにも弱い
『とはいっても、残りのサーヴァント、ランサーとアーチャーに関しては、話すこともあまり無いんですよね。資料はあまりありませんし』
「アサシンに関しては?」
『円卓の騎士に関しての方が多いですね。セイバーとしてパーシヴァルが呼ばれていたようですね。ブリテン領域による補正を受けられて、真っ向からボコられたみたいです』
「……そうなるのか」
『ええ。円卓の騎士関連は、貴方も読んでたりしますし割愛しましょうか』
フェイが立ち上がる
『では、そろそろ昼食の準備があるので。余り物を持ってくるので、その時にでも貴方になった者の話を続けましょうか』
そういって、フェイは去っていった