問題児と力を受け継いでしまった者が異世界から来るそうですよ? 作:皐月の王
サウンドアイズの店を出ると、熱い風が頬を撫でた。いつの間にかに高台に移動した店から街一帯を見ることが出来る、その街は俺達が知る街並みじゃない。赤壁の境界壁、鉱石で彫像されたモニュメント、ゴシック調の尖塔群のアーチ、巨大な凱旋門、色彩鮮やかなカットグラスで飾られた歩廊。
「すごい・・・98000kmを離れたら世界が変わったように文化様式も違う・・・本当にすごい!」
テンションが上がってきた。初めて見る光景に心が踊る
「ふぅん。厳しい環境があってこその発展か。ハハッ、聞くからに東側より面白そうだ」
「・・・むっ?それは聞き捨てならんぞ小僧。東側だっていいものは沢山ある
。おんしらのところ所の外門が寂れているだけだわい」
拗ねるように口を尖らせる白夜叉、飛鳥は美麗な街並みを指差し
「今すぐ降りましょう! あの歩廊に行ってみたいわ!」
「そうだの。まぁ、続きは夜に話そう。それまで、遊んでくるとよい。」
白夜叉からの許可がおり飛鳥は今にも飛び出しそうだった。すると空からなにかが降って来た。
「見ィつけた―――――のですよおおおおおおおおおお!」
ドップラー効果の聞いた絶叫と爆撃のような着地で現れたのは俺達の仲間黒ウサ――――
「ふ、ふふ、フフフフ・・・・!ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児方・・・・!」
ギ・・・・・だよね?
淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまく黒ウサギは帝釈天の眷属より、悪鬼、羅刹の類にしか見えない・・・
「逃げるぞッ!」
「え、ちょっと、」
十六夜はすぐさま飛鳥を抱きかかえて高台から飛び降りる。俺も逃げるに空に飛ぶ、耀も旋風のギフトで空に逃げようとするが一足遅く、黒ウサギによりブーツを掴まれた。
「耀さん、捕まえたのです!!もう絶対逃がせません!!」
どこか壊れたように笑う黒ウサギ、耀を引き寄せて、耳元で
「後デタップリ御説教タイムナノデスヨ。御覚悟シテクダサイネ♪」
「りょ、了解」
それを聞いた瞬間、背筋が凍るような感覚を味わった、逃げようとすると
「余所見とは随分余裕だな」
後ろから声が聞えたので振り向くとそこには義理の姉のレティシアがいた。
「な、ど、どうして!?"境界門"を開くほどの蓄えは無いはず!?」
「お前の貯金と私のポケットマネーから金貨を出して"境界門"を開いた。お陰で財布が少なくなった、あ、貯金も少し残ってるぞ。さて、今はメイドとしてではなく、貴様の義姉としてお仕置きだ」
まじかよぉ・・・俺が配布分のお金を貯めていたのにあっさりバレるなんて・・・それによく見ると、口元から血がてでる
「もしかして、誰かの血を吸った?」
「ああ、ジンからな」
下を見るとジンが青ざめた顔をして仰向けに倒れていた。
「リーダー!?」
「だから余所見をして大丈夫か?」
気が付くとレティシアはもう目の前にいた。
「はぁ!」
どこからか出したハリセンで出し、殴りかかってきた、俺は寸前でガードしたが、純血の吸血鬼がフルパワーで殴られた
「うっ!?」
勢いよく地面に叩き落とされる
「うっ・・・ああ、腕が痺れる」
咄嗟に防いだからよかったがノーガードなら大怪我必死だ
「さて、それっじゃ、私は黒ウサギと共に飛鳥と主殿を捕まえに行くとする。白夜叉、耀と義弟を頼む」
「うむ」
そう言ってレティシアは再び空に飛びあがり黒ウサギを探しに行った。
「まぁ、なんじゃ、大丈夫か?」
「大丈夫?」
「・・・大丈夫じゃないかも・・・」
耀に手伝ってもらいながら、立ち上がりサウンドアイズの店に入る
「なるほどのう。おんしららしいがコミュニティの"脱退"とは穏やかではないの。ちょいと悪質ではないかのう?」
「まぁ、確かに冗談にしてもタチが悪い」
「私も少しそう思ったけど説明してくれれば私達だってこんな強硬手段に出たりしなかった」
「普段の行いが裏目に出たとは思わんのか?竜輝も止める側だと思ったんだがな」
「それはそうだけど、それも含めて信頼の無い証拠。少し焦ればいい」
「最初は反対だったが、気になっていたし、少しならいいかなぁって」
拗ねたように耀は言い、お茶と一緒に出された和菓子を食べる。
「そう言えば、大きなギフトゲームがあるらしいけど本当?」
「本当だとも。特に耀、おんしに出場して欲しいゲームがある」
着物の裾からチラシを取り出し耀に渡す。
『ギフトゲーム名:"造物主達の決闘"
・参加資格、及び概要
・参加者は創作系のギフトを所持
・サポートとして、1名までの同伴を許可
・決闘内容はその都度変化
・ギフト保持者は
創作系のギフト以外の使用を一部禁ずる
・授与される恩恵
・階層支配者の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。
"サウザンドアイズ"印
"サラマンドラ"印
創作系ギフト・・・確か、耀の"生命の目録(ゲノムツリー)"は確か父親さんが創ったものだから創作系に分類されるんだな、確かにあのギフトならこの程度のゲームなら勝ち抜くことはできるはず
「ねぇ、白夜叉」
「なにかな?」
「この恩恵で・・・・・・黒ウサギと仲直りできるかな?」
幼く端正なかおを、小動物のように小首を傾げる耀。その言葉に白夜叉は驚いたような顔をした。俺達は確かにノーネームの中でも問題児かもしれない、だけど、ノーネームが嫌いじゃない、むしろ、好きだ。だからこそ、黒ウサギと仲直りがしたい。耀も、飛鳥も、十六夜も・・・・・・多分十六夜もいい人だよね、きっとそのはず
「出来るとも。おんしにそのつもりがあるのならの」
優しく温かい笑みで白夜叉は言う
「そっか。それなら、出場してみる」
そして耀は頷いて立ち上がる。