「今日は暇だなー……」
「そう思うなら仕事しなさい。まだ残ってるのよ」
「提督!暇なら青葉とお散歩に行きましょう!」
「青葉、暑い……抱きつかないで……」
「がーん!」
「何やってるのよ2人とも……」
今日は特に猛暑日らしく鎮守府全体が阿鼻叫喚の地獄絵図になってる。かく言う俺も暑さにやられて仕事が思うように進まない。
「しょうがない。さっさと仕事を終わらせて海岸でも行くか……」
「そうね、ならさっさと終わらせるわよ」
「青葉も手伝います!」
「よし、3人でやればそこそこ早く終わるだろ」
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「…………よし!終わったー!」
「お疲れ様」
「結構早く終わりましたねー」
「そうだな。よし!海岸に散歩に行こう!」
「あ、せっかくだけど私は遠慮しとくわ」
「え?どうして?」
「ちょっと今読んでる本が面白くて、続きが気になるのよ」
「そうか、じゃあ青葉。二人で行こうぜ?」
「はい!是非是非!」
「そう言えば若葉はどうしたのかしら?」
「今日は初春型は全員非番で皆で若葉を愛でているらしい」
「…………ちょっと興味あるわね」
「青葉も気になりますね。姉妹3人に撫でくりまわされる若葉さん……」
「俺もだ、まあ感想は明日聞けばいいさ。青葉、行こう?」
「はい!」
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「こうして二人で歩くのも久しぶりだな」
「そうですねー」
「最近書類仕事が多めだったから青葉がずっと暇ー!暇ー!って叫んでたからな」
「わ、私はそんなこと言ってません!」
「くっくっくっ。そうだったな」
「もう……」
「怒るなよー」
「怒ってはいませんよ。むしろ、私は嬉しいです。人間をやめた私が、愛する人と共にこうやって心の底から笑いながら散歩出来るなんて思ってもみませんでしたからね」
「そうだな」
と、言いつつ俺は青葉の頭をくしゃっと撫でた
「わわっ!びっくりしました!」
「これでいいんだよ……これで……」
「そう……ですね……」
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翌日、俺は若葉に昨日のことを聞きながら仕事をしていた。
「昨日はゆっくり出来たか?」
「いや、初春姉達に一日中頭を撫でられた」
「それは……大変だったな」
「だが、悪くはなかった」
「そうか……よし!今日も一日頑張るか!」
「ああ、今日はまず演習からだな」
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「艦隊が帰投したぞ」
「了解だ。若葉、皆を連れてきてくれ」
「分かった」
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コンコン
「曙よ、入るわよ」
ガチャ
「皆、お疲れ様。遠征は無事に成功したようだな」
「当たり前よ!私を誰だと思ってるの?」
「曙だな」
「そんなことを聞いてるんじゃないわ!このクソ提督!」
「悪かったよ、冗談だ。それじゃぁ皆休んでくれ」
「ふんっ!失礼するわ!」
バタン!
「忙しいやつだな」
「いや、今のは提督が悪い」
「最近曙と喋ってなかったから接し方を忘れてな、場を和ませようとしたんだがな」
「逆効果だったか」
「あいつちょっと怖いんだよなー。口調きついし」
「叢雲も口調はきつくないか?」
「うーん。叢雲はなんというか、トゲがない罵倒って感じ?曙はとにかくグサグサくる」
「そうなのか」
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「失敗したー!」
「大丈夫?曙ちゃん?」
「全然大丈夫じゃないわよ!せっかく提督が褒めてくれたのに私ったらまた緊張してクソ提督なんて言っちゃった!もうー!ほんとにどうしよう」
「いっそそのキャラを貫くのは?」
「ダメよ!絶対提督に負担をかけているんだからこんなんじゃダメなのよ!」
(曙ちゃん、乙女してるねー)
(しかしこの声。絶対部屋の外まで聞こえてるよね。ご主人のとこまでコレが聞こえるのが一番楽なんだけどなー)
「グス……グス……」
「ああ、曙ちゃん!泣かないで!大丈夫だから!」
「ここままじゃほんとに提督に嫌われる……」
「ご主人はそんなことでボノたんを嫌いにならないよ」
「ボノたん言うな……グス……」
「あ、そこはきっちり反応するんだ」
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「ふーん。曙、そうだったのね。でも今回はアイツ自身で気づかないとね」
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あれから数日が経ち、特に何事も無かった。
「あ、ご主人!おはようございます!」
「漣か、おはよう」
「今日は私達が演習する日でしたよね?」
「ああ、全員よろしく頼むぞ」
「お任せ下さい!あ」
「うん?どうした?」
「ボノたん、出ておいでよ。お話しようよー」
「曙いるのか?」
「誰がボノたんよ。べ、別に私はクソ提督と話したいことなんてないし」
「おや?私はただお話しようと言っただけで別にご主人とお話しようとは言ってないですよ?」
「な/////なにを言ってるのよ!」
「ま、まあまあ2人とも。漣も曙で遊ぶなよ」
「はーい」
「ふんっ!もう行くわよ!」
「ああ、演習、頑張れよ」
「アンタなんかに言われなくてもやってやるわよ!」
(うーん、曙の悩みかー……)
「なあ、曙」
「なによ?」
「お前最近悩んでることないか?」
(どストレートに、しかもご主人本人から聞きますか!?でもこれでボノたんが正直に話せば楽になるんだけどなー)
「……何も無いわよ……」
(ほらこうなったー)
「嘘だな。何か悩んでる顔をしてるぞ」
(お!ご主人から攻めてきましたか)
「何も無いってば」
「俺じゃ役者不足か?話してみてくれよ」
「何もないってば!ウルサイわよ!このクソ提督!……あ!」
(やっちゃったー)
「……そうか、余計な詮索して悪かったな。曙」
「あ……ち、違……」
「それじゃぁ演習、頑張れよ」
スタスタ
(ボノたん……)
「……………………」
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曙にこっぴどく言われた俺はちょっと凹みながらも執務室に向かっていた。
「あら?今から仕事?」
「叢雲か、おはよう。ああ、ただ、ちょっと凹むことがあってなー」
「へー、何があったの?」
「曙の事なんだが……」
と今朝あったことを話した。
「あー」
(コイツ、そんなことがあってまだ気づいてないの?ホンットに鈍感。若葉も苦労するわね)
「なあ、俺やっぱり曙に嫌われてるのかな?」
「さあ?そこんところは本人に聞いてみないと分からないわ」
「そうだよなぁ、でもやっぱり曙本人にグサッと嫌いって言われるのはなんかやだなー」
「やっぱり女の子にはモテたいからねー?」
「そんなんじゃねぇよ。曙は……いつも俺の事を思って遠征や演習を頑張っているんだと思ってたけど、あそこまでボロクソに言われたらちょっと自信無くなってきてな」
「あらら……」
(これは曙のツンデレが逆効果になってるじゃない…)
「……気にしてもしょうがないよ。さ、仕事に取り掛かろうぜ」
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「艦隊が帰投したしたわ」
「分かった。戦果を報告してくれ」
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「そうか、MVPは曙か」
「ええ、そうよ」
「曙、よく頑張ったな、お疲れ様」
「……ええ」
「…………それじゃあ各自この後は自由だ、解散」
「失礼します」
(ボノたん……)
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「……グス……ヒック……ヒック……」
「曙ちゃんどうしたの?」ヒソヒソ
「ご主人と色々あったんですよ」ヒソヒソ
「もうダメ……もう絶対提督に嫌われた……無理……」
「ああっ!曙ちゃん!大丈夫だよ、きっと」
「もうご主人も許してくれますよ」
「だって……だって……グス……」
「相当落ち込んでるね」ヒソヒソ
「今回のは大分応えたみたいですね」ヒソヒソ
「もうイヤ……提督と話したいのに……仲良くしたいのに……いつも口が悪いせいで、もう提督とお話できない……」
「ああっ!曙ちゃんー!」
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「あ、曙」
「…………提督……」
「今日はクソはつかないんだな」
「…………いいでしょ、別に何でも……」
「まあ、そうだな。なあ、曙」
「何?」
「ちょっと海岸まで散歩しないか?」
「…………いいわよ」
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「………………」
「曙の悩んでいることは俺に関することでいいんだよな?」
「え?」
「あれだけ露骨に凹まれたら嫌でも分かるさ」
「……」
「だが、俺はその内容までは分からない。曙、話してくれないか?」
「……私は、もっとアンタと一緒に話してみたい。良くやったと褒めてもらいたいのに、アンタの前に立つといつも緊張していつもクソ提督なんか言っちゃうの。それで提督のことを傷付けちゃうと思って……」
「そうか……よく話してくれたな」
「いつも……ひどい事言ってごめんなさい。許してちょうだい。私はもっとアナタと一緒にいたいの。お願い!」
「許すも何も、俺は最初から怒ってないさ」
「え?」
「別に罵倒されたくらいじゃ怒りはしないさ、こうやってボノたんの本音を聞けたしな」
「ボノたん言うな」
「はは!そうそう、曙はその口調が一番似合うよ。曙の本音は俺が分かってるからゆっくりと変わればいいよ」
そう言って俺は曙の頭をそっと撫でた。
「……この、クソ提督……」
といいながら曙も俺に抱きついてきた。
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「今日のMVPは曙だ」
「最近調子いいじゃない、曙」
「当たり前よ!私を誰だと思っているの?」
「ボノたんだな」
「ボノたん言うな!この、クソ提督!」
こうして、曙の罵倒はあんまりグサグサ来なくなった。そして
「ちくしょー、通り雨なんてついてないぜ」
「て、提督!」
「曙?どうしたんだ?」
「あ、あの、その、か、傘!傘持ってきたわ!」
「お!ありがたい。助かるよ。ありがとうな、曙」
こうやって少しづつ、自分の思いを行動でしめしてくれるようになった。
投稿がだんだん遅れていく……!
それはそうと梅雨グラのボノたん可愛いですね