艦娘にハグしてみる   作:大葉景華

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不知火の場合

青葉の1件も無事に終わり、鎮守府にいつもの賑やかさが戻ってきた。

「……よし、今日の分終わり」

「提督、お疲れ様」

「ああ、ありがとう」

今日は仕事も終わったし、若葉を散歩に誘おうかと思っていたら……

コンコン

「叢雲よ。入るわよ」

ガチャ

「叢雲か、どうした?」

「いえ、暇だから来ただけよ。最近アンタがまた秘書艦変えてないと思ったのよ」

「そう言えば……ふむ、なら明日は他の人に頼んで見るかな」

「心当たりはあるの?」

「いや、全然だ。誰かアテがあるから俺に言ったんだろ?」

「ええ。不知火よ」

「へえ、不知火か……あんまり喋った事無かったな」

「だからじゃないのかしら?あの子、雷程じゃないけど結構頼られたがるのよ」

「なるほど、じゃあ明日は不知火を秘書艦にしてみるかな」

「ただ……あの子、実はね……」

「何かあるのか?」

「……いえ、やっぱりいいわ。その方が面白いし」

「え?」

「何でもないわ。それじゃあ、私は部屋に戻るわね。お休み」

「ああ!お休み」

パタン

「不知火か……若葉、何か不知火の事知ってるか?」

「不知火か?いや、若葉もあまり話さないからな」

「そうか、ありがとうな」

(不知火か……俺もあんまり話したことないが、冷静そうな子だった気がするな)

......................................................

[本日より不知火を秘書艦とする]

コンコン

「司令。不知火、入ります」

「ああ、入ってくれ」

ガチャ

「不知火です。ご指導ご鞭撻、宜しくお願いします」

「そんなにかしこまらなくていいよ」

「いえ、不知火はこのままで大丈夫です」

「そうか。さて、お前をなぜ秘書艦にしたのかはな……」

「大丈夫です。不知火は分かっています」

「お、そうか」

(色んな子を秘書艦にする話が結構広まっているのか?)

「それでは早速今日の仕事に取り掛かろうか」

「はい、不知火にお任せ下さい」

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「……ふぅ。今日の業務はこれで終わりだ」

「司令、お茶です」

「あ、ありがとう……」

ゴクッ

(う、薄い……絶望的に味が薄い……)

今日1日で不知火のイメージが大きく変わった。仕事ができるようではあったが、それは大きな間違いだったようだ。書類は間違え、お茶はこぼし、緊張しすぎて顔が怖くなり、遠征から帰ってきた暁達を怖がらせる始末。

「司令、お味はどうですか?」

「あ、ああ。美味しいよ……」

「……そうですか……」

(やばい……多分無理してるのがバレてる……)

「不知火に……なにか……落ち度でも?」

「い、いや。大丈夫。大丈夫だ。助かるぞ、不知火」

「そうですか!それでは、失礼します」

ガチャ

パタン

「……ふぅ」

「クスクス……大変だったわね?」

「叢雲……お前、知っていたな?」

「ええ、陽炎とたまに話すからね」

「恨むぞこの野郎」

「今回は別に深刻じゃないからいいじゃない?」

「まぁ、ダメージがあるのは俺と不知火本人だけだからな。さり気なく不知火にさとらせればどうにかなるかな?」

「まぁ、頑張りなさい。私は部屋に戻るわね」

「ああ、お休み」

(ただし……ミスする度に涙目で「何でしょうか?不知火に落ち度でも?」って言われたら、どうしようもないじゃないか……)

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次の日も、不知火は秘書艦の仕事を頑張ってはいたが、予想通りにミスの連発だった。

「不知火に何か落ち度でも?」グス

「だ、大丈夫。不知火は本当に良くやってくれているよ。ただ、ちょっと秘書艦は初めてだから勝手がわからないだけだよ」

「……お気遣い。ありがとうございます」グス

(うーん。このままではまずいけどな……そうだ!)

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[本日より秘書艦を叢雲にする]

「結局不知火のことは諦めるのか?」

「いや、そうじゃない」

「ではどうするのだ?」

「こうするんだよ」

[本日より不知火を秘書艦補佐とする]

「補佐?そんな役職あったのか?」

「俺が今日作った」

「職権乱用だな。そんなことをして大丈夫なのか?」

「まあなんとかなるだろう」

......................................................

「へぇ、考えたじゃない」

「ああ、親しいお前と一緒にいるから緊張も和らぐだろうし、基本は叢雲の仕事を手伝うくらいだからな。これならミスも減るだろう」

コンコン

「司令。不知火、入ります」

ガチャ

「不知火。お前には今日から通達通りに叢雲の補佐をやってもらう。それをしながら仕事を少しづつ覚えていってくれ」

「…………」

(あれ?なんか怒ってる?なんか不味かったか?)

「司令!司令は不知火の事をそこまで考えて下さったのですね!感激です。これからも不知火が司令の世話をし続けます!」

俺の服の裾を掴みながらキラキラしてそう言う不知火はどこか夕立や時雨に似た何かを感じた。

「お、おう。これからもよろしく頼む……」

俺は不知火の頭を撫でながらそう言った。

......................................................

それから不知火は少しづつ叢雲と共に仕事をこなしつつ、自分で出来る仕事を増やしていった。根はやはり真面目な性格だったようで慣れたら正確に仕事をこなしてくれる。ただ、仕事一つ終わる度にキラキラして俺に褒めてもらいに来る……犬4匹目だな。




なんか今回手抜き感半端ない(今回も全力ですよ?)
ちなみに、不知火に恋愛感情はありません。忠犬的な感じです。

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