[本日より秘書官を叢雲とする]
その通達が青葉により鎮守府全体に届き、即座に初春型がなだれ込んで来た。
「提督!なぜじゃ!なぜ若葉を秘書官から外したのじゃ!」
「子日驚き怒りの日だよー!提督ー!なんでなの!」
「そうですよ!なんで若葉ちゃんを外したんですか!」
「お、落ち着け、お前ら。これは若葉が提案したんだ。」
「「「へ?」」」
「お前達の言いたいことは分かるが、お前達の危惧しているようなことは無い。若葉に俺はもっと色んな人と関わる方がいいと言われたんだ。」
「なんじや、そうじゃったのか。焦らせよって。」
「悪いな、そういう訳で今日も1日よろしく頼むぞ。」
「うむ。任せておくのじゃ!」
パタン
「お前は愛されているな。」
「ああ、素晴らしい姉妹だ。」
「そうだな。さて!そろそろ叢雲が来る。今日からお前には暫く休暇を出す。秘書官に、なってから休みが無かったからな、好きに休んでくれ。」
「分かった。だが、毎晩様子を見に来るぞ。」
「分かった。」
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コンコン
「叢雲よ。入るわよ。」
「ああ、入ってくれ。」
ガチャ
「あんた、なんで今更私を秘書官に戻すのよ?」
「あー、それは、その、あれだ、気まぐれだ。」
「はぁ!?気まぐれ!?そんな事で私が秘書官になったの?」
「あ、ああ。そうだ。たまには若葉以外の人も秘書官にしてみたらどうだ?って若葉に言われてな。」
「ふーん、そうなの。ま、いいわ。さあ!今日も仕事が沢山あるわよ!ちゃっちゃと終わらせるわよ!」
「ああ、分かっている。頼むぞ?」
「ふん!誰にものを言っているの?あなたが何も知らないペーペーの新米の時に秘書官を務めたのはどこの誰だったかしら?」
「ははっ!心配無用だったな。」
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カリカリ・・・カリカリ・・・ペラッ
コンッ
「はい、お茶よ。そろそろ休憩しなさい?」
「ああ、助かるよ。しかし、若葉といいお前といいお茶を出すタイミングや休暇を勧めるタイミングが完璧だな。」
「あら?知らないの?若葉が秘書官になった時に私が色々と教えたのよ。」
「へぇ、そうだったのか。でもお前は相当上手いけど、どうやって学んだんだ?」
「相手の事をよく見ていれば自然と分かるわよ。」
「なるほど。叢雲、ありがとうな。」
「ふふっ、秘書官として当たり前のことをしたまでよ。さあ!お昼にしましょ?」
(まずいな・・・叢雲と会話は出来ているが、核心的な話は出来ていない・・・どうしようか?)
「どうしたのよ?何か悩み事?」
「いや、何でもない。さ、食堂に行こうぜ。」
「あ、今日お弁当作ってきたのよ。あなたの分も作ってきたのよ。食べましょ?」
「お、マジか。助かる。」
「若葉に味見してもらったから味は保証するわよ。」
「どれどれ・・・ほう!ホントに美味いな!」
「当たり前よ!それ食べて午後の執務も頑張りましょ!」
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カリカリ・・・カリカリ・・・カリカリ・・・
「よし!終わったー!」
「お疲れ様。はい、お茶」
「おう。助かる」ズズ-
「なぁ、叢雲。」
「何よ?」
「少し散歩にでも行かないか?」
「あら、珍しいわね。」
「嫌か?」
「いいえ、行きましょ。」
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(ホントにまずいな・・・どうやって切り出すか?)
「・・・っ!・・・てば!ねえってば!」
「あっ!すまん。どうした?」
「どうしたじゃないわよ!ずっと呼んでいたじゃない!ホントに今日はどうしたのよ?」
「ああ、すまん。ちょっと考え事していた。」
「何を考えていたのよ?ちょっと言ってみなさい。」
(どうする?正直に話すべきか?)
「ちょっと、何黙っているのよ?そんなに話しにくいことなの?」
(話してみるか・・・)
「・・・叢雲。お前のことを考えていたんだ。」
「ふぇ?/////」
「若葉にお前の事が心配だと言われてな。だから今日もお前も秘書官にしたんだ。」
「そう・・・なのね。ああやっぱりあの子にはお見通しだったのね。」
「お前こそ、何か悩みがあるんじゃないのか?」
「・・・・・・」
(話してくれないか・・・そうだ!)
俺は叢雲に歩みよると、ギュッと抱きしめた。
「えっ?/////ちょっと!何してるの!?」
「いいから」
「・・・もう。なによいきなり・・・」
キュッと叢雲も俺に腕を回してきた。
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無言のまま少しの間抱き合っていた。
「・・・・・・ねぇ」
「どうした?」
「私の事・・・どう思ってるの?」
どう思っている・・・か。最近この質問ばかりな気がするな。
叢雲の事は好きだ。ただし、それは若葉に向けているような感情ではない。理由は無いが叢雲も同じことを思っていると確信している。ここでも俺の気持ちを伝えるには・・・
「・・・親友だと・・・思っている。」
「・・・親友・・・ね。」
「ああ・・・親友だ。掛け替えのない俺の親友。」
「そうね。私もそうよ、あなたは私の大切な親友。」
ああ、そうだ。俺と叢雲は友人だ。
それが正しい距離なんだ。
「・・・・・・ふふっ。なんだかスッキリしたわ。」
「そうか。」
「若葉と出会った時にあなたは若葉に一目惚れしたでしょ?」
「ば、バレていたか。」
「それから秘書官が変わって、あなたと話す機会もちょっとずつ減っていったのよ。それからなんだか、自分の事が分からなくなってきちゃった。」
「なんか、悪かったな。」
「いいのよ、もう。終わったことだから。うん、スッキリしたわ。これからもまた宜しくね。親友!」
「ああ、これからもよろしくな、親友!」
提督と叢雲との関係は難しいけど大切。
リアルでもこんな人が欲しいです