艦娘にハグしてみる   作:大葉景華

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龍驤の場合

「司令官!新しい青葉月報が出来ましたよー!」

 

といいながらドアを開け部屋に飛び込んできたのは今日の秘書官補佐の青葉。俺と今日の秘書官の北上(仕事はほぼしていない。大抵は一緒に来ている大井と阿武隈が手伝ってくれている)は驚きながらも青葉月報を手に取る。

ちなみに青葉月報とはその名の通り青葉が毎月発行している鎮守府内での出来事を新聞形式で出しているものだ。その月にあった事や毎月のコラム。全星座1位のいい加減な星座占いなどが有り結構評判は良い。

 

「仕事サボってこんな事していたのか」

 

と、俺が文句を言っても

 

「いやー、今日の秘書官は北上さんですよね?じゃあ大井さんと阿武隈さんが来ているから私と北上がサボっても手伝いは足りてるしいいかなー?って思いましてね…」

 

と、この有様だ。まぁ、実際そうだしそこまで仕事が忙しい訳では無いからいいんだけど…なんだろう、この丸め込まれた感…

 

「とにかく!今回のコラムは結構人気高いんですよ!青葉自身も頑張って取材しましたし、見てください!」

「へー、どれどれ?……最強の艦娘特集ねぇ…」

 

そこに書いてあったのは最強の艦娘特集という、捻りのないわかりやすいものだった。

 

「若葉さんがケッコンカッコカリをすませさらに強くなれたところで!この鎮守府内でだれが一番強いのか?艦種別と全体でまとめてみました!」

 

「へぇ…面白そうだな。どれどれ?駆逐艦は若葉、時雨、夕立か。まぁ妥当だな。」

「皆さんあまりばらつきもなく正直あまり面白くないアンケートでしたけどね」

「ぶっちゃけたな。」

「ところで若葉さんはどうしたのですか?」

「若葉は今日は非番だ。非番の日は昼まで寝てるぞ」

「良く知ってますね」

「まぁな。軽巡は…北上、大井、阿武隈か」

「お〜?やったじゃん、大井っち。私ら3人がランクインしたよ〜」

「私は北上さんが1位だと思っていましたよ♪」

「あたし的には神通さんだと思いましたけどね」

「神通はまだ改二じゃないからな。」

「木曽っちは?あの子は改二になってるよ?」

「木曽は改二になってから日が浅いからな」

「重巡は結構意見が分かれたんですよー」

「ほう?どれどれ…加古、古鷹、熊野か」

「妙高型の人達や利根型姉妹も結構多かったんですけどね」

「青葉はどのくらいなんだ?」

「0票ですよ?」

「…なんか…ごめん…」

「気にしてないからいいですよ。青葉は戦闘より取材の方がいいですし」

「そうか。で、空母は…軽空母とまとめてあるのか」

「はい。その方が集計が楽でしたので」

「へ〜。大鳳、赤城、加賀か〜意外だねー」

「ああ。意外だな」

「あれ?そうなんですか?あたしはこの3人だと思っていましたけど…」

「阿武隈っちには分かんないんだよ。うりうりー!」

「きゃあ!北上さん!ここぞとばかりにあたしの前髪いじらないで下さいー!」

「ほらそこ二人、大井がものすごい目で見てるからやめとけ。さて、戦艦は…大和、山城、武蔵か。まぁ、これも順当だな」

「金剛型の四姉妹はまだ練度も足りませんしね。山城さんは最近結構頑張っていますしね」

「ま、こんなもんだな。あれ?潜水艦は?」

「あの人はら全員でオリョクルしてるだけなので」

「あー…なるほどね」

「総合ではどうなっているんですか?」

「ちょっとまってろ…大和、若葉、北上だって」

「おー。私が3位かー」

「北上さん。おめでとうございます♪」

「総合ではあんまりばらつきはみられませんでしたねー」

「へ〜」

「……意外だな」

「そうだね〜意外だね〜」

「ほほう?ではでわ!お二人は誰がランキングにのると思いますか?」

 

そう青葉が聞いて、俺と北上は同時に答えた

 

「「龍驤だな(ね)」」

 

その答えに青葉、阿武隈はぽかんとした。

 

「り、龍驤さんですか?確かに彼女は鎮守府でも十指に入る練度ですが…最強の3人になるとはとても思えないんですけど…」

「いやー、龍驤さんは強いよー。私でもサシで勝てるかどうか怪しいねー」

「そ、そうなんですか?いつもは駆逐艦の人らと遊んでるイメージが強いんですが」

「阿武隈っちは知らないんだね。あの人はヤバイよ。戦闘能力はそこそこだけど…なんて言うの?うーん…センス?そんな感じ」

「正直この鎮守府最強は龍驤だと思ってる」

「提督もそう思ってるんですか?」

「ああ、最近は駆逐艦や若い奴らと遊んでるばっかだからイメージ違いっぽいが…あいつを本気で怒らせるとやばい」

「へー青葉、勉強になりました!」

「なんだか意外ですね…普段はあんなにのほほんとしてるのに」

「まぁ…能ある鷹はなんとやらってやつだよ」

「へー。ところで!今の話を聞いて思ったんですけど、皆さんはこの人とは戦いたくないって人いますか?」

「私は北上さんとは絶対に戦わないです!」

「それはなんかちがうだろ…」

「あたしも北上さんかなー」

「お?じゃあ阿武隈っち。こんど私と演習やろうよ?」

「いやですよー!」

「北上はいないのか?戦いたくないやつは?」

「ふふん♪どんな奴が来てもハイパー北上様はギッタンギッタンにしてやりますよ!」

「北上さんかっこいい!最高!」

「でしょでしょ?もっと褒めていいんだよー?」

「北上さーん!」

 

また北上と大井がイチャつきだしたと思ったら阿武隈が所在なさげにしている…ちょっとはかまって欲しいのか?

 

「さて!休憩も程々に、仕事にもどるぞ。北上!青葉!わかってると思うけどサボるなよ?」

「え〜しょうがないな〜」

「ちぇー。まぁ司令官の側にいられるなら青葉頑張っちゃいます!」

 

と二人がダラダラ、シャキシャキと対照的に動きながら残りの二人も手伝ってくれながら今日の仕事を片付けていった。

 

......................................................

 

夜も更け、夜の散歩がてら、いつもの海岸に来ていた。

コートをしっかりと襟まで止めていても突き刺さる様な寒さだが、夜の散歩はそこがまたいい。

だか今日は若葉もいないから寒さが応える。今日はもう帰ろうかと思っていたら、なんの偶然か、龍驤が煙草の煙を燻らせながら夜の海をじっと見つめていた。いつもの恰好なのにまったく寒さを見せていない。

俺は驚かさないようにそっと近づいたが、流石龍驤。俺の足音に気づいたようで振り返りもせず

 

「やぁ、どうしたん?キミ」

 

と向こうから声をかけてきた。

 

「流石、俺の足音に気づくとは」

「キミのはわかりやすいんよ。で?どうしたん?」

「いや、折角会えたんだから、一服付き合おうと思ってな」

「そら嬉しいわ。今日は冷えるからな、誰かが一緒にいてくれると温いから助かるわー♪」

 

と、飄々と答える。

俺も龍驤の隣に腰を下ろしながら煙草に火をつける。

 

「今月の青葉月報見たか?」

「ああ、見た見た。最強の艦娘特集やろ?相変わらずあの子はおもろい事するなぁ。天龍がランクインしてないって怒っとったわ」

「あいつも大概だな。流石に重雷装艦に勝てないだろ」

「せやなー。あの二人もえらい強なったなー。木曽も改二になったし、阿武隈もや。軽巡組はもう十分やから次は重巡やな?」

「重ね重ね流石だな。重巡は熊野と利根を中心的に育てる予定だ」

「せやなぁ、飛行機飛ばせるあの子らおるとウチらも助かるわぁ」

「…なぁ?また前線に戻る気はないか?」

「無いね、ウチより強い子らはおる。人手が足らんかったらちゃんと出るよ?でも一航戦の二人や、瑞鳳、大鳳、二航戦や五航戦の子らが頑張ってる。鳳翔とウチらみたいなロートルはもう隠居や」

「頑固だなぁ…」

「悪いとは思ってるで?でも、ウチがもう戦場で戦うのは疲れたから解体してもう休ませて言うた時に残るだけ残って言うたんはキミやで?」

「その点は感謝してるよ…ホントに」

「…せや、ウチの検診結果出たで」

「どうだった?」

「良くはなってるみたいやで。でも、あの時みたいに戦い続けたらまた体がすぐにボロボロなるらしい」

「艤装との過剰リンク…」

「感覚神経や単純に運動性能が上がる代わりに艦娘の体にえらい大きな負担がかかる…ウチより鳳翔の方が大変や」

「アイツはもう、弓が…」

「稽古場で普通の弓を引くことは出来るらしいから趣味として弓は続けるらしいで。それに鳳翔は料理も楽しい言ってるし」

「…そうか」

「……あんなぁ!この事は別にキミが悪いんやない。鳳翔も、ウチもずっとそう言ってるやろ?」

「それはそうなんだけどな…」

「それでも自分が許せへん言うなら…今後もう同じような子を作ったたらアカンで?それでええよ。あと、若葉を大切にしてあげーよ?」

「分かってるよ」

「…司令官。キミはいっつもウチらの事を最優先に考えてくれてるな…ありがと」

 

といいながら龍驤は俺を背中からそっと抱きしめてくれた。

 

「……胸が無…」

「キミは余程死にたいらしいな?」

「いててててて!ギブ!ギブ!悪かったから!首絞めんのやめて!」

「はぁ…折角いい気分やったのに君のボケのせいで台無しやで…」

「悪かったって」

「まぁええわ。それより、キミ、あえてあの子の事無視ってるやろ?」

「ああ。あいつの事は俺じゃダメだ。ましてや若葉がいってら悪化するかもしれない」

「せやなぁ…ウチもあの子とはあんま話さんかったしなぁ…」

「あれ?そうなのか?」

「昔から顔はよー合わせるけど何だかんだでサシで話すことは無かってんよ」

「へー。ともかく、あいつの事はどうしようもないんだよ」

「あの子の事を分かってあげれる子がいればなぁ」

「待つしかないよ」

「せやな。さて!そろそろ戻ろうか」

「そうだな。そうだ、秘書官とかはやる気ないのか?」

「あはは、戦闘よりもっと無理やな。あんなめんどいの誰がやるねん!」

「だと思った」

 

そうして俺たちはゆっくりと鎮守府に戻っていった。




どうも、今回は珍しくやる気が湧き、連日投稿が出来たkeykaです。
今回は龍驤の場合なんて言いながら龍驤の登場機会の少さ…
ちなみに、艦娘特集の強さランキングは作者自身の艦これの中のデータと作者の偏見に基づいて作られています。
ではまた次回お会いしましょう。
コメント等お待ちしております。

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