繰り広げられたスローネたちとエクシア、ヴァーチェ、デュナメとの戦闘。しかしそれは向こうが引いたことで両者とも特に深い損傷はなく戦いは終わる。しかしそれは機体であってパイロットではない。
「うわぁ、ギスギスしてますねぇ」
「まぁ、仕方ないだろう。あれは……」
潔く戦闘開始からそうそうに引いていった彼らであったが彼らは大きな爆弾を残していった。まずはロックオンの家族が巻き込まれたテロ事件を起こしたKPSAに刹那が所属していたこと、そして彼らがウェーダのレベル7の情報を閲覧できるということだ。
「ティエリアさんもあれだし」
「まぁ、そのうちなんとかなるだろ」
「のび太は相変わらずだな」
俺はふと自分の探知機に反応を感じ、この場から離れる。リヒは自分の部屋に戻っていく。俺も時間を止めて前にトリニティたちの映像を出すと三人が彼らの基地で留美たちと接触しているところが映し出していた。トリニティたちの動向の確認も怠らない。
そしてそろそろ大規模な戦闘が始まるはずだ。この艦の整備にも力をいれなくては。
時間を再び動かすとスメラギさんから連絡が来てシエラたちに合流するように指示がくる。俺は目的の場所に向かい歩き出した。
「あっ、きたきた」
「待たせた。それでどうすればいい?」
「私とフェルトはイアンの方にいくからクリスとここをお願い」
「了解」
スメラギさんはさらに細かい指示を出すと、フェルトと共にこの部屋から出ていく。すると、シエラが話しかけてきた。
「聞いてよ、のび太。スメラギさんったらまたお酒飲んでたのよ」
「……ぶれないな」
そんなことをしていても予定通りに仕事を終わらせることのできるスメラギさんはさすがとしかいいようがない。
彼女は誰に言われてもお酒を飲むことをやめることはないだろう。
「さて、じゃあ俺も仕事するか」
「ああ、ファイルはこっちにあるからそこからとっていって」
「はいよ」
俺は黙々と作業を続ける。作業の最中は俺もシエラも集中しているので基本的に作業関係以外の会話は行わない。
作業が終わると気づけば一時間が過ぎていた。俺は思わず背筋を伸ばす。
「お疲れ」
「そっちもな」
「フェルトたちはまだ時間がかかるみたいだし、先に食事にしない?」
「そうだな。しかし宇宙にいると時間の感覚がおかしくなるときがあるから困る」
「それは確かに」
俺とシエラは食堂に向かって歩き出した。
「しかしのび太も随分とプログラミングの腕が上がったのね。教えたのは私だけどとても驚いちゃったよ」
「そうでもない。まだまだだよ」
「最近はパイロットの訓練もやってるし、もうとても雑用という域を越えてるよ」
「……そうでもない。俺はやれることを精一杯やるだけさ」
「すごいね、のび太は」
「……」
秘密道具を使って俺の技術の吸収力をあげたりしたがありのままを出しすぎたか。
俺はこれからのありかたについて考えようとするがシエラは話しを続ける。
「そういえばのび太は何でこの組織に入ろうと思ったの?」
「あの状況で入る以外の選択しはなかったしな。それに拾ってくれた恩というところか」
「あはは、そうだったね」
シエラは俺がこの組織に加わったときのことを思い出したのか苦笑いを浮かべる。
「そいうシエラはどうしてこの組織に入ったんだ?」
「私はね、家出してこの組織に入ったの」
「それは……」
この組織にいる人たちは皆大抵なにかしらの大きな理由があって所属している。それ故に珍しいと感じてしまった。
「でも、この世界を変えたいと思ってこの組織に入ったのは変わらないわ」
「やっぱり両親とはもう会ってないのか?」
「まぁね」
恐らくこの組織のことだ、表向き事故死で消息不明みたいなことになっているんだろう。
しかし、家出ね……。
「あっ、ごめん。のび太は孤児だったよね」
「大丈夫、気にしてないよ」
思えば俺も似たようなものか。いや、それよりひどいな。こののび太に憑依する前の両親はともかく。のび太の両親やドラえもん、その友人などはもうこののび太という存在をなかったこととして認識している。これはもしもボックスや独裁スイッチをうまく使うことでこの状況を作り出した。さらに俺の持つスペアポケットもドラえもんが持つ四次元ポケットと切り離してある。恐らくドラえもんは自身の道具が全てなくなって驚いていることだろう。
俺はあの世界の人間からのび太という存在を奪った。俺は俺が決めたやり方で生きていく。もう俺は止まることは出来ない。
「そういえばのび太はどうして私のことをシエラって呼ぶの?」
「えっ……まぁ、呼びやすいから?」
「もう最初にクリスでいいって言ってなかったっけ?」
まぁ、ほとんどの人を名前で呼んでいるのにその中でも親しい間柄の彼女を名前で呼ばないのは変か。
「分かったよ……クリス。これでいいか?」
「まったくもう……」
なにやら嬉しそうなクリスを横目に食堂にたどり着く。この後は相変わらず料理味は微妙だったがクリスとの食事を楽しんだ。