陰陽師ハオ(偽)   作:ふんばり温泉卵

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九話 ハオ様と学校②

第10話

 

 

 

「あ~ああ~!!悪霊ターザン(退散)!!」

 

「おお!!さすが鳴介、ハイセンスだぜ!!」

 

あれから休み時間の度に氷河期を迎える事になる我がクラス。

初めはニューヨークの話やチョコラブの霊能力について知りたがっていたクラスメイト達であったが、楽しそうに寒いギャグを連発する二人の間に誰も入る事が出来ず聞けないでいた。

 

そんな中に一人の勇者が現れる。

 

「よう!二人とも盛り上がってるな」

 

「オウ!鳴介は日本で初めて出来た友人であり、俺のファンだからな!!

テンションも鰻登りよ!!」

 

「ぶふっ!!」

 

「お…おお、とりあえず楽しそうで何よりだ」

 

ファンと言った瞬間にポケットからパンを出したチョコラブに笑う鵺野と引きつった笑いを浮かべる勇者ホロホロ。

クラスメイト達は三人の会話を聞いてこれ以上耳を冷やさないように塞いだり、寒さを我慢してチョコラブの能力を探ろうと必死だ。

 

まあ、必死になっているクラスメイト達の目標は芸能界で活躍する霊能力者だからな……。

コメディアンになると言っているチョコラブをそれなりに意識しているのだろう。

ギャグが壊滅的でも、霊能力が高ければ心霊番組で使ってもらえるからね。

 

「へぇ。将来は芸能界に行くって事はホロホロも俺と同じようにコメディアンになるのか?」

 

「ちげぇよ!!いいか…俺の夢はコメディアンになる事じゃない。

俺の夢は時空先生のように芸能界で活躍し、貯まった貯金で故郷の周りに東京ドーム3個分のふき畑を作る事だ!!」

 

クラスメイト達に意識を向けていると三人の話題は夢の話になり、ホロホロは入学当初から言っている自身の夢を誇らしげに語る。

そんな彼の姿を見て、ふき畑が何なのかわかっていないが大事な夢なのであろうと感心するチョコラブと、時空の名前を聞いて席を立つ鵺野。

 

「ん?どうしたんだ鳴介?」

 

「ごめん。ちょっとトイレに行ってくる」

 

「?」

 

時空の話題を避けるように教室を出ていく鵺野とやっちまったと後悔するホロホロ。

事情を知らないチョコラブは不思議がっている。

 

「鳴介のヤツはどうしたんだ?トイレって割には表情がよろしくない感じだったが……ウン〇か?」

 

「あ~。アイツは時空先生が苦手っつうか好きじゃないっつうか……。

まあ、何があったかは俺も知らないんだけど……なんか、避けてるんだよ。

忙しいからたまにだけど、時空先生がやって来る授業は毎回欠席だしな。」

 

「へ?でも無限界時空ってこの学校の特別講師で日本で活躍する人気の霊能力者だろ?

ファンなら分かるけど…もしかして何かあるのか?テレビでは依頼者に優しい除霊料で悪霊に取り憑かれた依頼者にも気を遣える人格者だと思っていたんだが……。

なに?もしかして生徒には厳しいの?裏と表があるの?」

 

「いや、そんな事はないぞ?霊能力を悪用するなときつく言われているけど注意のレベルだし、指導はそれなりに厳しいが、霊能力の扱い方を間違わない為の必要最低限の厳しさだと思うぞ?

それに、学校でのあの人はテレビ以上にフレンドリーで生徒にも人気なんだよ」

 

「じゃあ、何で鳴介は避けるんだ?」

 

「さぁな。入学当初からの謎なんだよ。

噂じゃあ、時空と鵺野の実家が何か関係あるんじゃないかとか言われているが……」

 

鵺野の事情に頭を悩ます二人を尻目に、僕は何とも言えない気持ちになっていた。

彼が時空を避けるようになったのは麻倉と僕が少なからず関係している。

 

今から10年以上も昔。

麻倉家の分家『鵺野』の長男が、除霊の依頼を受け報酬を受け取る一族に嫌気がさして家出した。

もちろん鵺野の家は、モグリの霊能力者のように法外な値段設定はしていない。

依頼者が貰っている給料や生活状況などを考慮し、生活に問題のない範囲で請求している。

 

ただ、彼は正義の味方に憧れており、困っている人すべてを無償で救いたかったのだ。

そう…かつて全国を渡り歩き、平安時代にて活躍した大陰陽師、麻倉葉王のように……。

 

僕としては正直勘弁してほしい話であるのだが、現代において平安時代の僕は神やヒーローの類のように認識されている。

つまり、鵺野の長男は僕の影響を受け、正義の味方になる為に家出をしたのだ。

 

それから数年。

かつての僕のように、全国を旅して困った人々を助けていた彼は、助けた女性と恋をして結婚。

旅をやめて、女性と共に小さな村で生活するようになる。

 

子供も生まれ、村のヒーローとなった彼は、村人から感謝の印として食料をもらいながら、貧しくも順風満帆な生活を送っていた。

だが……。

 

妻が病気で倒れてしまったのだ。

 

治療の為に大金が必要になり、村人たちに助けを求めたが、手のひらを返されるように裏切られてしまう。

日々、弱っていく妻を見ながら絶望を感じていた彼に、救いの手が差し伸べられた。

 

彼の父親で鵺野家当主である鵺野 一心(いっしん)と、麻倉家当主の妻である麻倉 キリコが、麻倉家の分家が運営する病院の特別医療チームを連れてやって来たのだ。

なんと息子に訪れる不幸を霊水晶で感知した鵺野家当主は、麻倉家当主に土下座で頼みこみ、世界最高の占い師であり心霊治療を行えるキリコと分家が運営する病院の医療チームを動かしてくれたのだ。

医療チームによって行われる心霊治療と現代医療を合わせた、患者に負担のない治療によって妻を救ってもらった彼は、父親と麻倉に感謝したと同時に、家族を守る為にはお金が必要である事を痛感した。

彼は父親に謝罪し、妻と子供を鵺野家に雇われている侍女達に任せ、父親と麻倉家当主に感謝の言葉を述べた。

 

その後、彼は鵺野家に戻り、妻の治療費の返済と共に麻倉と父と家族の為に芸能界で働く事を決意した。

芸能界に入れば、麻倉が経営する学校のPRが出来る。

そして、活躍すれば困っている人々が助けを求めてテレビ局に連絡してくれる。

 

こうして、生活に支障をきたさないレベルの報酬で人々を助ける良心的な霊能力者『無限界時空』が誕生した。

 

ただ……その息子はテレビで活躍し報酬をもらうようになった父親に戸惑いを覚えているのだろうか?

 

それとも……小学生の頃テレビの仕事にかまけて自分の恩師が自分のせいで苦しんでいる時や、その恩師が亡くなって辛い思いをしていた時に傍に居てくれなかった事に何か思う所があるのかもしれない。

 

僕自身、祖父に聞いただけであり、本人の話を一度も聞いたことがないので想像にしかすぎない。

 

ただ、息子…鵺野鳴介の夢はかつての父の様に弱い人を無償で助け、村の近くの小学校に通っていた時にいじめられたり悪霊に取り憑かれたりする度に助けてくれた恩師のようになりたいと語っている。

そのことから父親である時空を嫌っているわけではないと思うのだが……。

 

正直僕は関係ないとも思えるし、根底的な部分で僕の名前が出ている以上は無関係とも言えない彼との関係に複雑な感情を抱きつつ。

とりあえず、今まで通り親子間には深入りせずに静観する事を決めるヘタレな僕であった。

 

 




どうやらエラーが治ったようです。

誤字脱字が目立つと思いますが、これからも応援よろしくお願いします。

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