【おきてー、おきてー】
【うーん……もうちょっと……】
眠たいのに誰かの声がうるさくて重たいまぶたをあけるとなぜか目の前には目をキラキラさせたリーフィアがいた。嫌な予感がした次の瞬間、リジアは最悪の目覚めを体験した。
「起きたのかー!」
デレッデレの破顔一笑。気持ち悪いくらいに喜ぶヒロを見てリジアは声にならない奇声をあげすぐさま飛び退いた。
【なん、なんで!?】
しかし言葉が通じない今は疑問の声も無視されヒロが溶けきった顔でグレイシア姿のリジアを撫でる。
【さわるなー!】
「よしよしよしよし怖くないぞ~」
【気持ち悪っ……】
思わず漏れ出た本音も通じない恐怖に頭痛がしてきたリジアはこの場から逃げたいと思うもリーフィア、イヴにじゃれつかれて身動きが取れない。
【イヴの妹なの!】
【妹じゃありません!というか私は――】
人間と言いかけて下手に正体がバレたほうが厄介かもしれないと口をつぐむ。ヒロに伝わりはしないだろうが念の為。
「はぁ……二匹とも最高に可愛いな……」
写真を撮る手を止めないヒロを睨むがまったく意に介さない。リジアはイライラが募り引きつった顔でイヴを引き離すように冷気を出す。
するとイヴがとても悲しそうな顔をし、しょぼんと耳を垂らすのでリジアは邪険にできず結局まとわりつかれるというオチだ。
【はあ……どうしましょう……】
コウガたち手持ちとはぐれたのもそうだがいつどうやったら戻るのかもわからない現状、ヒロの手持ちになるなんて最悪すぎる状況だ。
「にしてもお前手持ち増えたな~」
写真を撮りまくっているヒロに声をかけた赤髪のメガネはやたら機嫌が良さそうに言う。
「やっぱそろそろ手持ちも一回整理して何匹か実家に預けたら?」
「うーん……そうだなぁ……」
実家に預ける、というワードでさっと血の気が引いてくのを感じたリジアは一刻も早く逃げねばと焦り、ダラダラと冷や汗が止まらない。
もし実家に送られてしまったらその場で元に戻っても下手すれば通報される。手持ちもいない状況でそれは勝算のない結末だった。
「みんなかわいいから悩むんだよなぁ」
「でも世話するのも大変だろ?」
そんな話をしているのが右から左にすり抜けていく。こっそり脱出してなんとか手持ちたちと合流しなければ。そう決意して扉にこっそりと近づくと幸運なことに扉が開き、しかし不幸なことに別の人物と手持ちが道を封じる。
「はあ……しんど……」
億劫そうに前髪を直している人物は長い袖を揺らしながら疲れた様子で中に入ろうとする。しかしリジアに気づいた瞬間目を細めて怪訝そうに眉を動かす。
「……ヒロの?」
「ああ、エミおかえり。そうそう、俺が新しくゲットしたグレイシア」
「君も好きだねぇ……」
呆れ半分な声。それと同じくしてオレンジ色の塊がリジアの前に立ちはだかる。
背中に寝ているアシマリを乗せながらゆっくりと入ってきたそれはウインディ。無表情の彼を見てリジアは氷のように硬直し、数秒おいてから怯えて後ずさりイヴの後ろに隠れた。
【ひぃ……!】
【グレイシアちゃんどうしたの? ウインディ君怖くないよ?】
【ん?】
アシマリをベッドに寝かせた後、ウインディは不思議そうにイヴとリジアを見る。
【なにか――】
【ち、近寄らないでください! やだやだ! こないでー!】
本能的な恐怖に抗えずイヴを盾として部屋の隅に隠れたリジア。イヴはよくわかってないもののリジアを守るようにしているが表情は困惑気味だ。
【……? よくわからないが、俺のことが怖いのだろうか……】
ちょっとしょんぼりした様子で離れ、エミのボールに収まったウインディ。早鳴る心臓が少し落ちつくとリジアは改めて現状を確認する。
まずはここから逃げること。しかしヒロ以外にもトレーナーが3、いや4人いてほかのポケモンたちもいる。しかもイヴはとても懐いており隙がない。
「とりあえずこの街から出るまでにはちゃんと手持ち整理するよ」
タイムリミットは長くてもこの街を出るまで。その前にせめて人間に戻れればとも思うが手持ちたちがいない場所で戻るのも最悪なパターンだ。
完全に手詰まりな状況にリジアは唸りながらことあるごとに撫でたり抱きかかえようとするヒロを前足で叩きながら夜を迎えた。
「そろそろ寝るぞー」
就寝の合図とともにポケモンの一部はボールへ。また一部はトレーナーと同じベッドや別の場所で眠ったりとそれぞれの居場所に向かう。寝ている間ならチャンスなのでは?と考えていたがそれを打ち砕くようにイヴがベッドの方へと引きずり、ヒロとイヴの間に挟まれて眠ることになったリジアは顔芸コンテストがあったら優勝できるほどの険しい顔をしていた。
「グレイシアの名前、もうちょっと待ってろよ。いいのがまだ浮かばなくて……」
寝転がりながらそう言われるがつけられても迷惑なのでやめろと心の中で念じるしかない。
なんとか抜け出そうにもイヴをなんとかできたらヒロが、ヒロがなんとかできてもイヴがという完全体制で逃げ場を失い、結局よく眠れないまま夜は更けていくのであった。
――――――――
目覚めると妙に不機嫌そうなグレイシアがずっと唸っている。
慣れない場所でストレスなんだろうかとちょっと心配になったがイヴがやけに気に入ってるのでついついそばに置いてしまった。
このグレイシア、昨日から野生ぽくないなぁと思っていたが朝食で改めて再確認した。昨日の夕飯でもそうだが人間の食事を強奪する子なのだ。ポケモン用のご飯には目もくれずもしゃもしゃとサンドウィッチをいただいている。
捨てられた子とかなんだろうか。それならこの不信感をあらわにした様子も頷ける。
「そういやイオト、昨日やけに機嫌よかったよな。昨日のバイト、そんなに楽しかったのか?」
ふと朝食の会話のネタにイオトに話を振ってみると笑顔で煮え切らない返事を返される。
「あ~、まあそうだな~。楽しかったよ、うん」
なんか含みがある気がするけど突っ込むのも危険そうなのでやめておこう。
エミはまだ甘えん坊のアシマリに自分で食べるように躾けているがあまり聞いていないのか結局甘えてくるアシマリに溜息をつきながら食べさせている。
「エミは大丈夫か? 今日もやめとく?」
「いや……大丈夫……ていうかさすがにほかのことしないと気が滅入りそう」
育児ノイローゼかな。冗談はさておき結構本気でしんどそうなので今日のバイトで少しは気分転換できればいいんだが。
そんなわけで今日もジムに来たのだがいつにも増して今日は騒がしい。
「ジム関係者以外で持ってる知り合いは?」
「いませんよ。というかいたとしても間に合うわけ……」
リーホさんが全身真っ黒な服装の男性と何やら会話している。あれ、ジムトレだろうか? ここは女性ばっかりの印象があったので意外だ。
すると、リーホさんは俺たちに気づいてハッとし、勢いよく肩を掴んでくる。
「あなた、そのグレイシアあなたの!?」
「え、ええ……」
腕に抱えていたグレイシアを見るなりリーホさんはまるで天の助けと言わんばかりにパアッと笑顔を咲かせ、急ぎポケフォンを取り出す。
「リーフィアもいるし完璧じゃない! あなたたち、急いで劇場に行って頂戴。ユウタロウ、あなた彼らの案内よろしく」
「えっ、こいつらどう見ても一般人じゃないですか」
「例のバイト君よ。というか本当に時間がないんだから早く!」
急かされるようにジムから追い出されると、ジムトレのユウタロウという男性に困ったような溜息をつかれながら言われる。
「えーっと……まあ、現場についたら説明あると思うんでついてきてもらってもいいすか」
あんまり喋るのが得意そうではない様子に「は、はい……」と返事すると本当に例の現場まで一言も喋らずに移動する。イオトも「無口だなー」と後ろでちゃちゃ入れするくらいだ。
ついた場所はそこそこの大きさのある建物。看板には『モミノキホール』とある。
その裏口と思われる場所、そこから入ると中は慌ただしく色んな人がバタバタと忙しなく動き回っている。
そこから少し歩くと舞台袖のような場所につき、何やら話し合っている後ろ姿が見える。
「アンリさん、連れてきま――」
ユウタロウさんがアンリエッタさんを呼ぼうとするとすぐさま早足で駆け寄ってくる。
その姿は先日見たのとはまた印象の違う、今度はまるで本物の王子様のような衣装に身を包んでおり、よく見るとほかの人らもなんらかの衣装に身を包んでいた。
「よかった!! ヒロ君だよね? ありがとう、本当にありがとう!」
「え、え?」
状況がわからずいきなりの感謝の言葉に困惑しているとユウタロウさんが「あー……」と小声でアンリエッタさんに言う。
「リーホさん一切説明してないんで準備しながらでいいんで説明お願いします」
「あ、そういえばそうだったね。ごめんごめん」
そう言って説明をしてくれたアンリエッタさんの話をまとめるとこうだ。
今日は子どもたちに向けての演劇を行う予定で、アンリエッタさんのスクール時代の後輩やOBOGを集めての舞台の準備中なのだ。
しかし、当日になって借りる予定であったポケモンが、トレーナーの急な事故で来れなくなってしまったらしい。
そのポケモンとはグレイシアとリーフィア。なんでも話をする上で外せないとかで困っていたそうだ。
急いで知り合いにあたってみたもグレイシアを持っているトレーナーが全然見つからなくて、舞台そのものを中止する瀬戸際だったという。
「僕の予定、カツカツだから今日を逃すと参加できなかったんだよね……よかった……」
なんでも、今回の演劇は利益もないほとんどボランティアでの公演とのことで、今日を逃すわけにはいかないらしい。
プロの役者が子どもたちに演劇の面白さを知ってほしいということで企画し、ギリギリの日程調整の末に今日本番にこぎつけたというのに不幸が重なってしまうアンリエッタさんはさすがに一度お祓いをするべきなんじゃないかと真剣に心配になった。
「イヴたちを貸すのはいいんですが……グレイシア、昨日捕まえたばっかりで言うこと聞かないんですよね……」
「うーん……そこは僕らがなんとかしてみよう。ああ、君たちももちろん舞台を見ていって……」
アンリエッタさんが言いかけ、その直後俺の後ろにいた疲れた様子のエミに視線が行く。
視線に気づいたエミは顔を上げるとまじまじと見つめられていることに困惑し少しだけ眉根を寄せた。
「なに?」
「いや……すごいかわいいなと思って……いやでも、男……かな?」
すごい、一発でエミを男だと見抜いた。リコリスさんといいジムリーダーたちの看破力尋常じゃない。
「男だよ。まあ、僕の顔がいいのは事実だし」
素直に褒められたからかあんまり悪い気はしないのかエミは得意げに言う。まあそうだな、顔はいいな、うん。多分男とわかった上で容姿を褒められたから上機嫌なんだろうな。
「容姿で優劣をつけるつもりはないんだけれどね、これだけ印象に残る顔立ちだからなにか芸能関係に所属しているのかと思って」
今日のエミ、べた褒めで妙に機嫌が良さそうだ。よかった、最近ノイローゼ気味だったし。
「さて、そろそろリーフィアとグレイシアを預かってもいいかな? 一度リハを――」
そう言いかけたところで最近良く聞く高笑いが聞こえてくる。
嫌な予感がして振り向くとバーンという効果音が似合いそうなサーラが足早に近づいてきた。
「アタシ参上~! って、なーんだ。もう解決したの?」
俺の姿を確認するなりつまらなさそうに言うが腕に抱えたグレイシアを見るなりニタァというに相応しい意地の悪い顔をする。
「おっやぁ? こっりゃまたかわいいグレイシアだこと」
腕の中でグレイシアが唸り声をあげて前足をばたつかせてサーラに飛びかかろうとする。それをなんとか抑えるとサーラは愉快そうに笑った。
「ごめんねぇ~アタシポケモンの言葉ぜんっぜんわかんないからさぁ~」
まるで煽るように不思議なことを言い出したサーラ。じたばた暴れるグレイシアをなだめているとアンリエッタさんが渋い顔で諭す。
「これ以上余計なことはしないでくれよ? 今本当にギリギリなんだから」
「しませ~ん。ま、せっかくだし改良したポケモンになる魔法薬持ってきてみたけど手は足りてみたいだし?」
手にしたなにかをこれ見よがしに見せびらかすがアンリエッタさんは呆れた様子だ。
「……それ、絶対にランダムに変化するとかだろう? 頼むから余計なことは――」
その時、腕の中にいたグレイシアが俺を振り払い、サーラのところに勢いよくぶつかっていった。
妙にスローモーションに見える光景はその時点で何かを悟っていたんだろう。
タックルしたせいでサーラの手にしていた謎の瓶が手からすっぽぬけ、舞台で準備をしていた役者たちに向かっていく。
気づいていない役者勢はともかく、舞台袖でそれを目にしていた全員は奇声を上げ逃げろと訴えるも時すでに遅し。
ボンッという絶望的な状況に似合わないコミカルな音を立て、舞台一面に煙が広がり、アンリエッタさんの表情が青ざめる通り越して色が消えている。
「チョッゲプリイイイイイイ!?」
「ぐわ、ガァー!?」
「ダネフシャッ!?」
舞台の真ん中であがる悲鳴。それは紛れもなくポケモンのもの。
恐る恐る煙が晴れてきた舞台を見るとそこには困惑しているポケモンたちの姿、そして、目を回しているグレイシアとタックルされて倒れているサーラ。
ハッとして振り返るとアンリエッタさんの表情は完全な無であった。取り返しがつかない。そんな目をしている。
「あ……あはは……」
ちょっと声が震えているサーラもこれはやばいと思ったのかアンリエッタさんから離れようと後ずさるもアンリエッタさんは大股でサーラに近づいて聞いたこともないような声で言った。
「責任取るのは当然だよね」
疑問形ですらない断定。サーラは「あい……」と泣きそうな声で返事をし、俺たち部外者は成り行きを呆然と見守るしかなかった。
――――――――
とりあえずポケモンになってしまった人たちを集めてどの役の人がだめになったのかを確認し、アンリエッタさんは不機嫌さを隠そうともしない声でサーラに言う。
「戻るまでどれくらいかかるの」
「えーっと……そのぉ……」
なぜかチラりと目を回しているグレイシアを介抱している俺の方を見てきたかと思うとテヘッとごまかそうとするような声を出す。
「今日は戻らないんじゃないかなー……多分……」
クソデカ溜息という言葉がこれ以上似合う溜息を見たことがないくらい深い深い溜息をつくアンリエッタさんは困ったように髪をぐしゃぐしゃと乱す。
「役者4人に裏方が6人……しかも王子3人ともに姫1人とか……」
どうやらメインの役者がロストしたらしく声は切羽詰まっているのがよく伝わってくる。
アンリエッタさん以外の人たちも困ったように戸惑いの声が漏れてくる。
「どうしましょう……」
「こんな状況じゃとても本番なんて……」
ポケモンもそうだがここからすぐ本番までに人数を集めるなんて無理だろう。ややあきらめモードが漂ってきている。
アンリエッタさんを見ると、うつむいた横顔はどこか泣きそうで、凛とした王子様という雰囲気はかき消えている。
よっぽど、舞台をやり遂げたかったんだろう。
そう思うと俺は自然と無責任かもしれない言葉が出ていた。
「まだ時間はあるんですよね? どうにか代役を探しましょう!」
「ヒロ君……」
「俺たちもなにか協力できることがあるならなんでも協力するので……」
「ん? なんでも協力してくれるのかい?」
さっきまでの様子とはうって変わってアンリエッタさんの表情が黒い。あれ、なんか嫌な予感がするぞ。
「衣装班!」
「はいっ!」
アンリエッタさんの声に衣装担当の女性が元気よく返事をする。
「4人分の代わりの衣装、なんとかなる?」
「合わせがギリギリになるかもしれないですけどなんとか!」
嫌な予感がしたのは俺だけじゃないらしく、エミが無言で後ずさっている。しかし、それを逃すまいと裏方の誰かの手持ちかモンジャラがつるのムチでエミを捕らえた。
「確保ォ!」
「は、放せ! ちょ、マジ僕は手伝うなんて一言も――」
そのまま連れ去られたエミは決して他人事ではなく、ぽかーんとしているゴウトも腕を捕まれ引きずられていく。
「え? えっ? なになに俺もー!?」
なぜか1人ノリノリのイオトが引きずられることなくむしろちょっと楽しそうについていき、俺を見るアンリエッタさんは笑顔なのにまったく笑っていない。
「なんでも協力してくれるんだろう?」
右手にサーラを。左手に俺を掴んでアンリエッタさんは控室へと俺たちを引きずり、急遽役者として仕立て上げようとしていた。
――――――――
「無理無理! 絶対俺たちに演技とか無理ですって!」
無理やり着せられた窮屈な衣装に戸惑いながら最後の抵抗を試みるがアンリエッタさんはにっこりと笑う。
「大丈夫、今回の舞台はプロのものじゃないしそんな難しく考えないでくれ」
台本を少しいじっているのか脚本担当の青年が赤線を引きながらゴウトに説明している。最初こそ戸惑っていたゴウトもいい経験だと割り切っているのかちゃんと真面目に話を聞いていた。
「セリフも大幅に減らすしそこは君たちのポケモンも使ってカバーするつもりだから」
元々ポケモンも出演する舞台なのでそこは人だけではなくポケモンも目立たせればいいということらしい。エミのサーナイトと俺のエルドのことがわかると「これはいい!」と脚本担当が早速組み込んでいるくらいだ。
「あのー、ボクだけ蚊帳の外なんですが」
唯一役者に任命されなかったシアンがお手伝いをしている。いや……まあ、だってお前、絶対セリフにですよとかつけるじゃん……棒とか以前の問題だし……。
まあ、アンリエッタさんが言うようにアマチュアの、しかも学生混じりの劇だし気負いすぎないでやることやればいいんだろうけど……。
「おー、そっちも決まってんな」
衣装を着たイオトがようやく舞台袖に現れる。髪型を少しいじって、いつもより少しだけ落ち着いた印象になっている。
背が高いのもあってかキチッとした格好が思いの外似合っていてなんかむかつく。
「エミは?」
「えっちゃんだけおせぇですねぇ」
シアンがきょろきょろ見回すがエミの姿はどこにもいない。衣装合わせで手間取っているんだろうか。
「おまたせしましたー!」
とても楽しそうな衣装担当の女性の声がし、一斉に振り返る。すると、そこにいた人物を見て全員硬直した。
オレンジ色の髪は綺麗に整えられており、化粧のせいかいつもより少しだけ大人っぽくなった顔は引きつった顔で歪んでいるものの顔立ちそのものが整っているのは間違いなくわかる。
清楚な衣装だと言うのに当人の動きが男のもので妙なアンバランスさがあり、ヒールの足音は隠そうともしない。
そう、完璧に女の姿にされたエミがそこにいた。
シアン「紅一点のボクが姫役じゃねーのおかしいですよ」
ヒロ「えっ?」
イオト「えっ?」
ずっと書きたかった演劇編