このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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それと題名は仕様です。




ろく話目!

ガチャリと生徒会室の扉が開いた。

 

「……何をしているんですか? 会長」

 

そこには、眼鏡をかけたヘアバンドに三つ編みの真面目そうなお姉さんが、楯無さんに呆れ顔で言った。

 

「えっと……?」

 

「あぁ、ごめんなさい。私は本音の姉で生徒会会計の布仏虚(のほとけうつほ)と言います。虚でいいですよ?」

 

「僕は織斑桜! 桜って呼んでください、虚さん!」

 

「桜くんですね。……ほら、会長。桜くんから離れて仕事してください」

 

「うわぁ~ん!」

 

僕に抱き着いていた楯無さんを掴んで、虚さんはニコニコ微笑みながら引きずる?!

 

「あはは~、私たちはそこでお菓子でも食べてよ~?」

 

「本音ちゃんはお仕事しなくてもいいの??」

 

「私がいないほうが(はかど)るんだって~」

 

と、のほほんと笑いながら本音ちゃんに僕はふかふかの座り心地が良いソファーに座らされて、オレンジジュースを淹れてもらった。

ここまでおもてなしされたなら、僕も遠慮なく甘えさせてもらおっと!

僕は本音ちゃんと、楯無さんの悲鳴と虚さんの檄をBGMにのんびりと親睦を深めたと思える時間を過ごした!

 

 

 

 

 

夕日も完全に落ちた頃!

楯無さんたちとメアド、電話番号を交換した僕は生徒会室をあとにして一夏兄たちにお礼を言いに行った!

それから僕は今、移動用にんじん型のロケット? の中に居る!

気づいたら束姉が居たんだよ?!

ビックリしたよ~。

 

「それでいきなりどうしたの、束姉?」

 

さっきから束姉は僕のことをムスッと頬っぺたを膨らませたまま、私、怒ってますってしてくるんだよね~……。

う~ん、束姉がこんなに頑固に怒ってるのは初対面以来……かな?

懐かしいな~、初めて会ったときは肌がピリピリするくらい殺気全開だったからね……。

だけど、今日はまた違うベクトルの怒り方なんだよね。

 

「う~ん、束姉。何をそんなに怒ってるのか話してくれないと伝わらないよ?」

 

「……この映像」

 

不貞腐れた声で渡された一枚のメモリーカード。

それと一緒に束姉専用パソコンを渡された僕は、意味分からず、けどこの映像にヒント、もしくは答えがあるのは確かだと思う。

早速、僕はその映像を観てみた──けど、思わず途中でストップさせた。

……それにしても、

 

「束姉、何でこんな映像を持ってるの? 束姉の態度を見るに最近手に入れたんだろうけどさ」

 

「さーくんこそ、何で今まで黙ってたの??」

 

ひんやりと冷たい声が束姉の口から零れる。

……ほ~んと、無表情の束姉は恐ろしいくらい美人なのもあって尚更怖いよね……。

 

「……それよりさ、さっきも聞いたけどその映像はどうや──」

 

「──話し逸らさないでよっ! さーくんあの時言ったじゃん? いっくんが誘拐されたとき、さーくんはひたすらいっくんを“探してた”ってっ!! その時私はさーくんの言葉を信じたんだよ? 現にドイツの軍がいっくんを見つけて救出したのも事実だった……でも、あの時ドイツ軍が言ってた。いっくんを誘拐した連中は既に見当たらなかったって」

 

そしてバッと映像を指さして、

 

「この映像。全身黒いコートに手袋、ブーツ、フードを深く被ってる人物がISを難なく倒してる。これって明らかにさーくんだよね? 映像を拡大して私が作った分析ソフトでその人物のデータを調べた結果、99%さーくんと一致したんだ。それだけじゃないよ。実際にいっくんに聞いてみたんだ、流石に誘拐されたときの話しを今になって蒸し返すのも嫌だったよ? でもやっぱり、この映像の人物がさーくんだったら話しは別、別なんだよ!!」

 

「一夏兄が……?」

 

僕が呟いたタイミングで、申し訳なさそうに奥の部屋から一夏兄が出てきた。

 

「桜、ごめん。お前との約束だから喋らないように頑張ったんだけど……束さんの迫力に負けちまった……」

 

と、頭を下げた。

 

「頭上げてよ一夏兄。……しょうがないよ、一夏兄は悪くない。結局は僕が嘘をついたのが原因で、僕が悪いんだから……!」

 

「……」

 

「──それじゃあ、認めるんだね?」

 

束姉は事実を確認するように僕に問いかけた。

……まさかこんなタイミングで知られちゃうとはねぇ。

──四年前、ISの第二回世界大会、モンドグロッソが行われていた時。

当時千冬姉は日本代表で、第一回の優勝者でもあったから日本中から応援されていた。

千冬姉は強かった、刀一つで順調に決勝戦まで勝ち上がったんだ。

だけど決勝戦が始まる直前に一夏兄が誘拐された。

その時束姉も変装して傍にいたことから、結論、千冬姉には教えなかった。

その際にドイツ軍の協力もあり一夏兄を救出できたんだ。

──表向きはね?

僕も人間だ。

兄が誘拐されたと知った時、居ても立っても居られなかった。

だから、束姉たちには周辺で一夏兄を探すと伝えて……、

 

「……うん、そうだよ。その映像の黒コートの人間は僕。──今まで黙ってて、嘘ついてごめんなさい、束姉」

 

僕はせめてもの誠意を込めて束姉に謝罪し、頭を深く下げた。

どんな理由であれ、親しい人に嘘を言うのは悪いこと。

それもいつも支えてくれる人になら尚更だよね。

……束姉は静かに黙ったまま。

僕は今も頭を下げている。

だからこそ、ある資料が目に入った。

そこにはドイツにある極秘実験の内容が書かれていた。

遺伝子強化試験って大きく。

その資料の周りにも各国の極秘試験資料が散らばっていて、ほとんどが赤色でバツって書かれてた。

流し読みで確認できる範囲を素早く読み上げる。

……これって、

 

「束姉? その散らばってる資料って、ISに関する道徳に反した実験が行われている、行われていた内容の資料?」

 

束姉は僕の問いかけにハッと我に返り、高速で資料を回収し始めた。

見るからに焦ってるのが分かる。

……うん、多分だけど、

 

「そのバツ印がついた資料に書かれてる実験場は既に束姉が消したってことでいいのかな?」

 

この言葉でビクッと動きが止まった。

 

「……束姉が僕たちの知らない所でどんなことをしてるのかはこの際聞かないよ。僕も一夏兄が誘拐された時のことを今まで嘘ついてまで黙ってた訳だからさ……。それにその実験場での実験内容は確かに……消すべきっていうのは分かる」

 

そう伝えて僕は当時と同じ全身真っ黒な格好に万物を操る能力で変身した。

──これで人生二回目の変身だね。

 

「さ、桜??」

 

一夏兄の戸惑う声が静かな室内によく響いた。

その声に釣られて、束姉も僕を見た。

 

「──っ?! さ、さーくん?? 何で今その格好になるのかな???」

 

「自分自身の罰、そして束姉にせめてもの罪滅ぼし。これは自分の勝手な我儘だから、束姉は気にしないでね? 勿論、一夏兄も」

 

「ま、待って!! もしかしてさーく──」

 

途中で束姉の言葉を手で遮る。

ホント束姉は気づくのが早すぎるよ……。

 

「──これからちょっと、まだバツ印がついてないドイツの実験場に行ってくる。もう開き直っちゃったっていうのもあるけど、実際にこの力、使うなら今かなって思ったから。当然いくつか理由もあるんだ。さっきも言った自分勝手な束姉への嘘ついちゃったことへの罪滅ぼし。そして束姉の夢へ繋ぐISをふさげた理由で悪用する人たちに制裁を。……最後は、うん。僕も一夏兄と千冬姉の弟なんだなって改めて思うよね。その実験場、まだ被害者が生きてるんだよね? ……どんな理由であれ、助けれる時に、助けられる力があるなら、知っちゃった今、僕は助けに行くよッ!!」

 

「待ってくれ、桜! 行くんなら俺も一緒に行くぞ!! 一緒にお前の秘密を黙ってた俺にも非はあるし、何より弟一人をんな危険な場所に黙って見送れるかよッ!!!」

 

「え?! いっくんも?!」

 

一夏兄は今にもISを装着しそうな勢いだった。

一夏兄の気持ちは嬉しいに決まってるよ? けどさ、

 

「はぁ……いい? 一夏兄は今や世界で一番有名な人間なんだよ? それはなんでかわかるよね??」

 

「……ゆ、唯一男でISに乗れるから」

 

「その通り! だから一夏兄がISに乗ってそんなところに行ったら、色んな意味でまずいことになるんだよ??」

 

「た、確かに……」

 

「うん。だから一夏兄の気持ちだけで十分だから!」

 

僕の言葉に冷静になって、自身の危うい立場を理解してくれた一夏兄。

最後に、チラッと束姉と見る。

すると、束姉にも予想外な展開だったのか、とにかく涙目で僕を睨んできた。

 

「それじゃあ、また後で」

 

僕はそう二人に言い残し、この場から去った。

そして、

 

「『無敵能力、発動』──あぁ。やっぱこれ慣れねえわ」

 

この時だけは性格が変わる。

それも含めて知られたくなかったが、俺はそんな気持ちを即座に押し殺し、さっさとここから移動した。

まぁアレだ。

束さんに叱られんのは、帰ってきてから沢山受けるからさ。

 

 

 

 

 

 


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