次の日、昨日は千冬姉の部屋で寝た!
部屋は……うん、汚かったなぁ~。
だけど久しぶりに千冬姉と沢山話せて楽しかった!
──あ、そうそう。
それと人に迷惑をかけないっていうのを条件に暫くIS学園に居てもいいんだって!
そして今日から過ごす千冬姉の部屋を片付け終えた今、放課後になるまで一人、一夏兄の特訓について考えてたんだ。
──やっぱりコレが妥当なのかな?
「よし、覚悟はできたね?」
「あぁ、俺も男だ! どんと来い!!」
どうやら一夏兄と箒ちゃんは同じ部屋になったらしい。
それで箒ちゃんが部活(剣道部)に行ってる間、この部屋で特訓するってことになった!
「……けどさ、特訓ってどんな内容か聞いてないぜ?」
「それは今から伝えるから安心して! ──コホン。今の一夏兄の状況をまず最初に整理するよ?」
「分かった」
「一夏兄は今日を含めて六日後に専用機持ちのイギリス代表候補生とISバトルがある。一夏兄にも専用機が与えられるっていっても、届くのは当日だし……もうこの時点で一夏兄の勝ちは絶望的だって分かるよね?」
「……あぁ」
「片やISのエリート、片やISのド素人。うん、笑っちゃうくらい絶望的だよね? ──そして次に一夏兄の体力だよ」
「ISに体力なんて関係あるのか?」
「にしし、そりゃあそうだよ! 確かにメインはISの力だよ? けどさ、結局ISを動かすのは人間! ほら、中学の体力テストでシャトルランってあったの覚えてる??」
「そりゃあアレだろ? ドレミファの音楽に合わせて走って往復するテスト」
「うん、徐々に音楽が早くなって、自分の走るペースも早くしなくちゃいけない。……昨日千冬姉に聞いたら例えの一つにISバトルは意外とシャトルランに似てるって言ってたんだ」
「??」
「つまり戦闘ペースは少しずつ速くなっていって(ISの武装や操縦者の行動にもよるけど)、やっぱり高速移動を維持できるだけの体力、あとは集中力と忍耐力、何より根性が必要なんだよ!」
「ど、どんどん多くなってるぞ?!」
「それだけISバトルには必要なことだし、一夏兄に足りてないもの。──だから、この六日間でなるだけ三つの力、そして一夏兄の一番の武器、根性を同時に鍛えようと思うんだ!」
「そ、そんなことができるのか?」
と、一通りの説明を終えた僕の心は中々に満足感があった。
だけど本番はこれから! 期待半分、心配半分で僕を見る一夏兄。
「うん、できるよ! ……一夏兄しか知らない僕の秘密。僕の力を使うんだよ?」
「……ゴクリっ」
「──
「……へ?」
「言葉の意味そのままだよ! 今日と明日は通常の重力の1.5倍、
「──それしか方法がないんだろ?」
一夏兄の表情がここでキリっと変わる。
覚悟は決まったんだね。
「他にも方法はいくらでもあるかも知れない。けど、僕が考えて妥当だと思ったのが重力作戦なんだ!」
「おう、それでいいぜ。……早速頼めるか?」
シャキッと立ち上がった一夏兄は、軽く体を
一夏兄には、周りには気づかれないように日常を過ごす集中力と、それをこなしながら生活する忍耐力、ちょっとした動きでちょこっとずつ増える体力、この重力作戦を最後までやり抜く根性。
これらを改めて説明して、一夏兄の特訓が始まった!
それからあっっっという間に一夏兄とセッシーの勝負の日がやってきた!
……え? 一夏兄の壮絶な六日間?? 何で僕がセシリアさんのことをセッシーって呼んでるのって?
そ・れ・は、また今度話すよ!!
それよりも勝負が終わった一夏兄が戻ってきた!
ギリギリの勝負だったけど何とか勝ててよかったね、一夏兄!!
最後の勝負が終わって二人が握手してたのはお互いが認め合った瞬間なのかな?
千冬姉や箒ちゃんも嬉しそうなオーラを隠しながらも労いの言葉をかけてる。
さーってと、僕も一夏兄に直接おめでとう! って言いたいんだけど……。
遠くから沢山の足音が聞こえてくる。
多分試合を観戦してた人たちが一夏兄に会おうとしてるんだろうなぁ~。
大量の足音がこっちに近づいてきてるのが何よりの証拠だね。
というわけで、一夏兄たちを見捨てて僕は地獄絵図になるんだろうこの場所からスタコラ退室した。
──さてさて~、放課後だからあんまりウロチョロできないんだよね~。
……ん? あれって、
「おーい! 鈴ちゃーん!!」
遠くに見える見覚えのある背中に確信を持ちながら呼びかける。
すると、ビクッと驚いたように僕の方に振り返った!
「……へ? な、何でここに桜がいるのよ?!」
目をパチクリさせた鈴ちゃんは、幽霊を見ているかのようなリアクションで声が裏返っていた。
「にしし、一夏兄が入学した日からずっとここに泊まってるんだ!」
「ア、アンタは相変わらずの行動力ね…」
そう苦笑いした鈴ちゃんは、「……ん」、と右手を僕の方に差し出した。
……あぁ、懐かしいな~。
僕はその手を左手で掴んでそのまま歩き出した。
昔もこうやって手を繋ぎながら散歩したな~。
──鈴ちゃんは、
鈴ちゃんの両親は中国人で、鈴ちゃんも中国人なんだ!
鈴ちゃんの作る酢豚は最高なんだよね~。
そんな鈴ちゃんも両親のお仕事で中学2年、僕が中学1年の時に帰国しちゃったんだ……。
……その時にした鈴ちゃんとの約束は今でも覚えてるよ!!
「鈴ちゃんはどうしてここに?」
「それはあたしのセリフよ! ……ま、いいわ。私はこの一年間で中国の代表候補生になったのよ! しかも専用機持ちでね!」
鈴ちゃんはドヤ顔で昔と変わらないお胸を張りながら言う。
「たったの一年で……?! 凄いって言葉以外見当たらないよ……」
当然努力をしてきたのが大前提なんだろうけど、どうやら鈴ちゃんはISに関しての天賦の才があったらしい。
「もっと褒めて良いのよ? けどこういう自慢はあんまり好きじゃないから、この話しはおしまい! そうそう、何であたしがここにいるかっていうと、私がこの学園に転校してきたから」
「なるほどね~。……少なくとも鈴ちゃんだけの意思での転校じゃないことだけは分かるよ」
「ほーんと、代表候補生もかったるいのよね~。あ、そうだ。せっかくだからこの学園の受付窓口がある場所まで案内してよ、ここ広すぎて迷ってたのよね……」
「りょーかい!」
僕は鈴ちゃんの手を引きながら、懐かしい話しから最近あった話しをのんびりと語り合った!!
なんて言うかここに来てから色んな出会いや再会、ワクワクすることが目白押しでもっともっっとここに居たいなって改めて思ったよ!