千冬姉が部屋から出て行ってから暫くして、
「──は~い、
と、千冬姉じゃない人がウインクしながら部屋に入ってきた。
水色の短髪に、千冬姉や束姉とはまた違った容姿の整った人が僕の名前を呼ぶ。
「えっと……あなたは?」
「ふふっ、私はこの学園の生徒会長、
綺麗な扇子をバッと開いて、それには一期一会て書かれてる。
「楯無さんか。……もう僕の名前は知ってるようですけど、織斑桜! 桜って呼んでください!──それで? 千冬姉は?」
「あぁ、織斑先生なら私に君のことを任されて教室に行っちゃった。あ、それとこれ」
そう言いながら、首に掛けるタイプのゲストカードを渡された。
「それを首に掛けてれば桜くんはこの学園にいても良い証になるから、失くさないようにね?」
「はい!」
早速カードを首に掛けて、僕は最初に行ってみたいところを楯無さんに伝えてみる。
「今日は朝からなーんにも食べてないから、学食に行ってみたいです!」
「りょーかいよ♪ なら行きましょうか」
どんな料理があるんだろうとワクワクしながら僕は楯無さんの後をついて行った。
「さあ、ここよ」
道中は楯無さんと他愛もない話しをしながら食堂に着いた。
やっぱり見た目通りこの学園は広いんだな~って歩いてて思ったね!
「この食券機で食券を買って、あそこで受付をしてる人に渡すの。そうしたらすぐに料理が渡されるわ」
「よ~し」
沢山ある料理に少しだけ迷ったけど今日はオムライスにしてみた!
一夏兄のオムライスは絶賛だけど、ここのオムライスはどうかな??
楯無さんはまだお腹は空いてないから食べないって。
「おぉ~! 美味しそう!」
オムライスが乗ったお盆を持って近くの席に座って早速、
「いただきま~す! ──あむっ」
っ?! 美味しい~!!!
「ふふ。桜くんが本当に幸せそうに食べるからお姉さんも小腹が空いてきちゃった」
「ぅん、ごくんっ。……食べかけで良ければだけど、食べますか?」
物欲しそうな瞳でオムライスを見つめていた楯無さんに僕は提案してみた。
「え? ……ふふ、私はいいから桜くんが食べなさい」
と、楯無さんは断った。
確かに初対面の人の食べかけなんて食べたくないよね。
……けど、キュ~って楯無さんのお腹から可愛い音が鳴った。
あ、ちょっと顔が赤くなってる。
僕は横に置いてあった綺麗なスプーンを手に取って、まだ食べていない場所を掬う。
「──はい! あ~ん」
「え?! 流石にそれはお姉さんも恥ずかしいかな~」
「にしし、早く食べちゃわないと僕が食べちゃうよ?」
「むぅ~……。あ、あ~ん」
楯無さんはさっきよりも顔を赤くして、意を決したように──パクっと食べた。
「どーお? 美味しい??」
「ごくん。……うん、そうね、美味しいわ(さ、桜くんは無自覚なのかしら?? 恥ずかしさと緊張で全然味が分からなかった……)」
……?
なんで楯無さんはもじもじしてるんだろ?
もしかして楯無さんまだまだお腹空いてるのかな?
この流れで、それからは楯無さんも僕にあ~んってしてくれて、オムライスが無くなるまで交互に食べさせあった!
ふぅ~、美味しかったな! オムライス!!
オムライスを食べ終わった後は、僕が行っていい場所は一通り連れてってくれた!
……食堂を出てから楯無さんの言動や雰囲気が他人行儀じゃなくなったけど……やっぱり美味しい料理って凄いね!!
そして楽しい時間はあっという間に過ぎちゃって、もう放課後になっちゃった!
あ、そう言えばずっと疑問に思ってたことがあったんだ。
いくら生徒会長でも、授業もあるのに何で僕なんかを案内できたのかな~って。
楯無さんが言うには千冬姉からの頼みでもあるけど、来客を案内するのは生徒会長の仕事なんだって。
そして何よりも、今習っている授業内容は既に予習済みらしい!
しかもしかも、この学園の生徒会長は誰よりも強いことが条件なんだって!!
僕のせいで授業が受けられていないことに申し訳なさがあったけど、ホッとしてるのは内緒だよ?
「ふふふ~ん♪」
楯無さんとはさっきさよならした。
放課後からは生徒会の仕事があるんだって!
別れ間際にメールアドレスと電話番号を交換した。
やった!! また一人、大切な友達ができた!
──そして僕は一番最初の部屋に移動中。
……うん?
「おーい! 桜!!」
と、向こうから一夏兄が走ってきた!
それに……あっ?!
「ほ、箒ちゃん??」
「さーくーらー!!!」
「へ? ──むぎゅッ?!?!」
「会いたかったぞ桜!! そうだ! この抱き心地こそ桜だ!!」
「ちょ、箒?! 桜がもがいてるぞ?!」
久し振りに会った束姉の妹、そして僕と一夏兄の幼馴染の
「久しぶりだね! 箒ちゃん!!」
「うむ、久しいな!」
今度は優しく僕の頭を撫でてくれる。
うん、箒ちゃんに撫でられると何でか心がほっこりするんだよね~。
「しかし桜、私も一夏と同じクラスだったというのに、気づいていなかったな?」
「え?! ご、ごめんね! 一夏兄と千冬姉に悪戯仕掛けるのに集中してたから……」
「ま、とりあえず積もる話は部屋に行ってからにしようぜ」
そう一夏兄が提案する。
僕も箒ちゃんもそれには賛成で、懐かしさを胸に部屋に向かった!
篠ノ之箒ちゃん。
一夏兄と同い年で僕の一つ上の幼馴染。
小さなころはよく一緒に遊んだんだよね~、懐かしいな!
でも、束姉が起こした“白騎士事件”を切っ掛けに、箒ちゃんは引っ越して行ったんだ……色々な思惑と理由でね。
けどこうしてまた巡り会うなんて嬉しいよ!!
「──って、ことになったんだ」
と、一夏兄はそれはそれは重い溜息を吐いた。
たった今一夏兄が話してくれたのは、一夏兄がクラス代表に推薦された後のできごとのことだった。
専用機持ちのイギリス代表候補生、セシリア・オルコットさんって人が女尊男卑の思想のタイプだったらしく、一夏兄の推薦を反対、売り言葉に買い言葉、なんと一週間後にオルコットさんと一対一のIS勝負をすることになったんだって!
ISは兵器として軍に使われてるけど、表向きはスポーツの道具として使われてるんだ。
そのスポーツにも世界大会、モンドグロッソがある。
様々な国の代表──国家代表がそれぞれの種目で自分が一番自信がある競技に参加し競い合う(因みに千冬姉は第一回目と第二回目を優勝してるんだよ!!)。
その次期国家代表になる可能性を秘めた人たちが代表候補生!
しかも専用機持ち!!
ISは束姉しか作れないISの心臓部があるらしんだけど、それがこの世に467個しかない。
束姉は政府に作らされてたけど、そこまで作って逃亡開始!
つまり、限られたISを持ってるっていうのはそれだけ知識、努力、そして実力があるってこと!
「あぁ……どーするかな……」
そう一夏兄はただただ項垂れる。
「にっしし~」
「……? どうした?」
僕が突然笑ったのに疑問をもった箒ちゃん!
お、一夏兄もいい感じに興味をもってくれてる!!
そして二人の目を交互に見ながら、
「織斑桜による! チキチキ一夏兄を一週間で鍛えよう作戦~!!」
「……は?」
僕の宣言に箒ちゃんはポカーンと呆けてる。
そして肝心の一夏兄は?
「」
あ、絶句してる?!
……けど、考えてみればそうだよね!
だってこの世界で唯一僕の力を知ってるのが一夏兄だもん!
こうして、今日から早速僕と一夏兄の秘密特訓が始まった!
あ、箒ちゃんには頭を下げて特訓中は二人でするってちゃんと話して了承してくれたよ?
仲間外れはいやだけど、今回は少しだけ力を使うし、ね?
──あ、一夏兄! こっそり逃げ出しても無駄だから!