このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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にわめ!

「──わぁ! ここがIS学園か~!!」

 

僕は束姉にお願いして念願の外出、そしてIS学園に連れてきてもらった。

さっき千冬姉からメールがきてて、ホントは一週間くらい自宅から通う予定だった一夏兄だけど大人の事情で今日から寮生活らしい。

それならなおさらIS学園に行くしかない!!(使命感)

 

「(あまりの可愛さについ連れてきちゃったけど……ちーちゃんにバレたら束さん死んじゃうのかな?)」

 

束姉が遠くを見つめて微笑んでるけど……どうしたんだろ?

 

「束姉? 何か向こうにあるの??」

 

「えへへ、何でもないよ? それよりもこれからどうするの??」

 

束姉は僕の頭を優しく撫でてくれながらこれからの行動を聞いてきた。

そんなこと決まってるよね?

 

「そりゃあ当然、一夏兄と千冬姉に会いに行く!!」

 

「」

 

僕の宣言に絶句している束姉。

僕は束姉の手を掴んで、まず僕は一夏兄が在籍している教室を探すことから始めた。

 

 

 

 

 

隠れる必要など全くなく、どうどうと一年生の教室がある場所までたどり着いた!

それも、

 

「たったた~、透明化シ~ル~!」

 

束姉が得意気にそう言いながら、シンプルなシールを掲げた。

このシールは名前の通りでシールを張ると、張った物質が目視できなくなるんだって!

しかも一枚張ればOK! つまり僕は着ている服すら透明になってるんだ!!

そんな束姉ならではの発明品のおかげで、苦も無く一夏兄がいる1年A組に着いたんだ。

こっそーり、こっそーり、束姉と一緒に扉の硝子(がらす)越しから覗き見る。

するとそこには一夏兄を始め真面目に授業を受ける生徒たちと、千冬姉が何やら教えている様子が窺えた。

──ふむふむ、何やらクラス代表をこれから推薦で決めるらしい。

あぁ、ものの見事に皆が一夏兄を面白半分、興味半分で推薦してるよ…。

一夏兄はどんどん青ざめてるし。

にしし! そんな一夏兄にアウェーなこの雰囲気を壊してあげちゃおう!!

 

「あ、さーくん……?!」

 

束姉が僕を小声で呼び止めるけどそんなのお構いなしに、ドアの前に立ち自動で開いた。

おぉ、この扉は自動ドアなんだ?!

なんて一瞬思っちゃったけど、そのまま教室に入る。

誰も居ないのに勝手に開いたドアに皆が注目してる。

 

「……誰だ」

 

千冬姉も警戒した口調でドアの先を呼びかける。

それも一旦スルーして、ちょっと行儀が悪いかもしれないけど思い切って教壇に上って腕を組むように立つ。

──準備は整った!

いつもは率先してこういう悪戯をする筈の束姉は何故か一夏兄とは違った青ざめ方をしてる……?

僕は勢いのままおでこに張っていたシールを剥がして、

 

「一夏兄! 初日早々から大変そうだね!!」

 

と、僕は笑顔で呼びかけた。

クラスの人達は当然、一夏兄は口を大きく開けて固まっていた。

 

「──桜ッ?!」

 

すると横から千冬姉が珍しく驚いた声で僕を見ている。

 

「千冬姉久しぶり! 退屈だったから遊びに来ちゃった!」

 

お~、千冬姉も固まってる。

にしし! どうやら悪戯成功みたいだね!!

 

「お、おい! 桜?!」

 

「そーだよ? 桜だよ??」

 

「あ、いやそりゃあ見たら分かる! それよりも一体どうやってここに……?」

 

「え? それは束姉のおか──」

 

僕がドアを指さしてそう言いかけた時、千冬姉が恐ろしいスピードでドアに向かい、

 

「にゃああああああああ?! 痛い痛いギブギブちーちゃん?! これは今までとはシャレにならいたたたたた!!」

 

「……なあ束よ。久しぶりに親友同士、朝から語り合わないか??」

 

氷よりも冷たい声で束姉に語り掛ける千冬姉は、そのまま束姉と一緒にどこか行っちゃった。

束姉の断末魔にも似た悲鳴が徐々に遠ざかっていくのが何よりの証拠だね!

それにしても束姉には悪いことしちゃったなぁ。

後でちゃんと謝らなくちゃ……!

 

 

 

 

 

それからすぐに戻ってきた千冬姉に僕も手を引かれて束姉が居る部屋に連れてこられちゃった。

……束姉は目を回しながらピクピク痙攣しながら倒れていた。

 

「はぁ、まずはそこに座ってくれ」

 

千冬姉はこめかみを押さえながら僕に指示する。

言われるがままに座った僕の正面に、テーブルを挟む形で千冬姉も座った。

 

「あらかたそのアホ兎に聞いたが、改めて桜、お前からも話を聞くとしよう」

 

「うーん、話すことってあんまりないよ? ただ一夏兄がISを起動したのが確か二月の中旬だったよね? そして今は四月。……だいたい二カ月間ずーっと家に居るのは流石に飽きちゃうよ。 むやみに近所に出歩くとそれこそ面倒事になるんだろうしって考えた結果、ある種の独立国家になりつつあるIS学園に行くのが無難かなぁって思ってさ」

 

「……一概にはお前を責めることは私にはできん。家族として、何より姉としてはお前には本当に窮屈な生活を()いていると思っている。しかし、せめて……せめて、ここに来るのなら事前に連絡してその日に来てほしかったぞ!!」

 

「事前に言ってればここに来ること自体は良いんだ……」

 

「本当なら当然駄目なことだが、桜を拒絶する者が居るのなら私は鬼となろうッ!!」

 

「………あはは、僕が言うのもなんだけど、公私混同はほどほどにね?」

 

良くも悪くも相変わらず千冬姉は平常運転だった。

一旦会話が途切れ、ちょうど良いタイミングで、

 

「──う、う~ん……ハッ?! あ、頭!! 頭はあるよね?!」

 

束姉は起き上がるやいなや、僕に詰め寄り涙声で確認してくる。

 

「う、うん、ちゃんとあるよ?」

 

「流石に今回は死んじゃうかと思った~。……そ、それなら束さんは一度お(いと)しようかな~」

 

グッと伸びをして大きな山脈を揺らしながらそう呟く。

束姉にはやるべきことが沢山あるんだろうし、今ここで(とど)めても迷惑になるよね…。

 

「束姉? 今度はいつ会えるの??」

 

「すくなくとも一週間以内にはまた会いに行くぜい!! なら、またねさーくん! ちーちゃん!」

 

すると華麗に窓を開けダイビングした束姉は、多分屋上に行ったんだろう。

 

「まったく、いつもいつも嵐のようにかき乱しおって」

 

「ねーねー千冬姉? この学校探検していい??」

 

「無論ダメだ。……と、言いたいところだがそのうるうる瞳を潤ませるのはやめてくれ……! 分かった、分かったから。……はぁ、少しの間だけ待っていてくれ」

 

そう言うと、千冬姉は席を立ち部屋から出て行っちゃった…。

千冬姉には迷惑掛けてるのは分かってるけど、(たま)には盛大に甘えても……いいよね?

 

 

 

 

 

 


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