このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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じゅうはちわめ!

「ぅ……ん……?」

 

僕は首の後ろに感じる柔らかい感触に違和感を覚えて目が覚めた。

欠伸を噛み殺して瞼を開けば、シャルロットちゃんが穏やかな笑みを浮かべて僕を見ていた。

 

「──?! シ、シャルロットちゃん……? 何してるの??」

 

つまり僕は何故か知らないけどシャルロットちゃんに膝枕されてるみたい……!

眠気は一気に消え去り、起き上がりながら僕の頭を押さえつけて膝枕を継続させるシャルロットちゃんに問いかける。

 

「ん? 何って膝枕だよ?」

 

当たり前のように答えられた?! いや、確かに膝枕なんだけどさ!

しかも僕の頭を押さえている手で今度は頭を撫でてきた……?

 

「あ、そうだ。はいコレ。携帯ありがとね」

 

僕が反応を起こす前にシャルロットちゃんは僕が貸した携帯を取り出す。

 

「……話しは終わったんだね?」

 

「うん……。まだ受け入れるのに時間は掛かるし、また〝会った”時に改めて話すことになったんだ」

 

シャルロットちゃんは苦笑いでそう言った。

──それでもそんな表情も重々しい感じじゃないのは僕にでも理解はできた。

 

「……シャルロットちゃんはこれからも男装を続けていくの?」

 

「あれ? もしかしてお父さんから聞いてないの?」

 

「えっと……?」

 

「お父さんが言うには僕の事情を学園には話しを通してるんだって。だからもともとは一定期間が過ぎれば僕は男装を解く予定だったらしいんだ」

 

「な、なるほど」

 

僕は思わず感心した。

最後の最後まで手を抜かずに娘の為に策を講じてたなんて……いや、大企業の社長さんなんだから抜かりはないんだね。

 

「だから僕は明日から男装を解いて生活することに決めたんだ。桜くんが寝てる間に織斑先生や学園長には伝えたよ?」

 

僕はシャルロットちゃんの報告に二重の意味で驚いた。

一つはシャルロットちゃんの行動力!

自分の人生観が変わる出来事を知ってまだ半日すら経ってないのに、それを一度受け入れて、自分の未来への選択を自分自身で進んだこと。

いずれにしてもこれ以上僕に関わる権利も資格も無いから、僕は友達として影から支えていけたらなって心の中で思った!

──そしてもう一つは、

 

「……もしかして僕、結構寝てた??」

 

「うん、もうすぐ20時になるよ?」

 

僕はその言葉に慌てて飛び起きた! 勿論シャルロットちゃんの負担にならないように!!

 

「ど、どうしたの?!」

 

シャルロットちゃんは目を白黒させながら驚く。

 

「ごめんよ、この後予定があるんだ……! ……また明日お話ししない?」

 

「勿論!」

 

僕はシャルロットちゃんと電話番号とメアドを交換した後、急いで箒ちゃんの部屋に向かった!

予定は当然、勉強会のことだよ??

 

 

 

 

 

──翌日!

昨日は箒ちゃんとの勉強会が終わった後、寝るまでシャルロットちゃんとメールでお話ししてたんだ!

その際に確認程度に聞いたけど、シャルロット家を暗殺しようとしていた人たちと僕が関わった件に関しては、千冬姉にも学園長にも伝えてないって。

学園長もそうだけど、千冬姉にバレたらどうなるか……。

千冬姉に秘密にしてるのは罪悪感や申し訳なさで一杯だけど、心配かけたくないからね……。

だけどいつかは千冬姉にもきとんと話さないといけないよね?

 

(今日はシャルロットちゃんとは話せそうにないかな……)

 

恒例の放課後学園散歩をしてるんだけど、今日の話題は何といっても『シャルロットちゃんが女の子だった?!』って話しで持ち切りだよね。

チラッと教室を覗いてみたら楽しそうにクラスメイトたちと談笑してるシャルロットちゃんを確認できて、内心ホッとしたのは内緒だよ?

 

(後は……)

 

『来週にまた一年に転校生が来る?!』みたいな話しもチラホラと耳にした!

……多分だけど、いや100パーセントの確率でラウラちゃんなんだろうな~。

今日の朝メールで『来週からIS学園に通うぞ!』って送られてきたし。

 

(一夏兄たちもISの練習で忙しそうだし、これから何しようかな~?)

 

一通り散歩が終わった僕はそのまま寄り道せずに部屋に戻ることにした。

家事やって、勉強して、それから簡単に能力の練習でもしようかなって予定を建てる!

 

「よし、到着~」

 

部屋の前に着いた僕は、透明化シールを剥がして扉を開けようとした時、

 

「あ、桜ー!」

 

遠くから聞き覚えのある声が僕の名前を呼ぶ。

声がした方に顔を向ければ、

 

「鈴ちゃん!」

 

右手に頭から半分が無い(たい)焼きを持っていて、左手には袋を持っている鈴ちゃんが僕に近づいていた。

 

「桜、これから暇?」

 

猫のような笑顔で笑いながら食べ終わって空いた右手で僕の手を掴む。

 

「う、うん。僕は暇だけど……鈴ちゃんは一夏兄たちとIS訓練しなくていいの?」

 

「前にも言ったけど、あたしはあたしのペースがあるのよ。だから今日はお休み。(たま)にはこういう日もなくちゃ体を壊しちゃうのよね~」

 

そう言いながら自然に僕の手を引いて鈴ちゃんは歩き出した。

 

「今からどこに行くの??」

 

「今日は天気も良いし、外で鯛焼きでも食べない?」

 

鈴ちゃんは袋を僕に見せながらそう言った。

僕も小腹が空いてたし、鈴ちゃんの誘いを断る理由は特に無い!

 

「うん! 食べる食べる!」

 

僕は大きく頷いて鈴ちゃんに連れられるままに中庭に向かう。

中庭に着くまでの道中で、今週の休日に〝約束”した遊園地に行くことになった!

クラス対抗戦も無事に終わったし、鈴ちゃんの予定も今週の休日なら空いてるからってことで、楽しみがまた一つ増えたなぁ~。

 

 

 

 

 

 




それではまた!

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