「──そうだね。まずは君のお話を聞かなくちゃ、僕も判断のしようがないからね……」
シャルロットちゃんは僕にそう言うと、深呼吸を一度して、改めて僕に向き直った。
僕の視線とシャルロットちゃんの視線が交わる。
注がれる瞳からは『嘘は見逃さない』という意志をヒシヒシと感じる……!
「──実の父親でデュノア社のアルベール・デュノアさんからの命令で、二番目の男性操縦者としてIS学園に編入。一夏兄のISデータを盗み出せって言われたんだよね?」
「……うん」
「データを盗む理由はただ一つ。IS開発の発展……その為だけにシャルロットちゃんがここに来た理由」
「……」
「それじゃあ、どうしてアルベール・デュノアさんは実の娘にそんな犯罪行為をやらせたのか……。それはシャルロットちゃんの義理のお母さんが関係しているから……だよね?」
「……っ」
「義理のお母さん……継母さんにとってシャルロットちゃんは妾の子。継母さんはシャルロットちゃんにマイナスの感情があった……だから──」
「──僕が選ばれた。都合の良い捨て駒……それが今の僕の全てだよッ」
シャルロットちゃんは自虐気味に笑みを浮かべて鼻で自分の存在を笑う。
「桜くんは本当に僕がここに来た
虚空を見つめながらシャルロットちゃんは独り言のように呟く。
「──うん。確かに僕は今、シャルロットちゃんがここに来た
「……え?」
そう言って僕は自分の携帯電話をシャルロットちゃんに渡した!
「こ、これって……?!」
「にしし。その電話番号は名前も表示されてるけど、シャルロットちゃんのお父さんの電話番号だよ!」
「いやいや……何で桜くんが……??」
「それも電話を掛けたら分かるかもよ?」
僕はそれだけを伝えて屋上を出た。
(僕って突然現れた物凄くめんどくさくてウザったい存在かもしれないね……)
だけど……あの様子だと電話を掛けるような気がしたんだ。
僕は階段を下りてその先にあるベンチに座る。
そして昨日の夜を思い出しながら、シャルロットちゃんを待つことにした!
「わーい! さーく~ん!!」
「束姉久しぶぅっ?!?!」
ステレス性能バッチリで無音で屋上に着陸したにんじん型のロケットに入った僕は、束姉からのダイナミックな挨拶に一瞬意識が遠のく……?!
「束さま、桜さまが困っていますので早くその無駄に大きな脂肪をどけてください」
「クーちゃんが辛辣?!」
クロエちゃんが何を言ったのかは聞こえなかったけど、涙目になった束姉は渋々僕から離れてくれた。
も、もう少しで窒息するところだった……!
「それで桜さま。桜さまが仰っていた相談したいこととは……?」
プチカオスな状況でも、至って冷静なクロエちゃんが僕に話しを振る。
「そうそうそうだよ! まさかさーくんから相談事があるって電話をしてくれるなんて、『さーくんを
「何その謎の会?!」
せっかく本題に入れそうだったのに思わず聞き捨てならない単語に反応しちゃったじゃん!
「(……因みに私は副会長です)──……コホン。束さま、そろそろ本題に入りましょう」
ん? 気のせいかな?? クロエちゃんボソッと呟いてなかった??
束姉はクロエちゃんの指摘に軽く頷いて僕の顔を見る、距離が近いけど……あ、クロエちゃんが束姉の腕を引っ張って距離が離れた。
「──僕の聞いて欲しい相談は、デュノア社についてなんだ」
「ふむふむつまり! デュノア社に潜んでる闇をやっつけたいんだね?」
「そ、そういうこと!」
もう流石と言いようがないぐらいに内容が一言で伝わった……!
クロエちゃんも最初から予想がついてたみたいで、
「私がお教えした情報はあくまでも桜さまの身を守る為に伝えたものだったんですが……」
そう言いながらもクロエちゃんは戸惑う様子を見せるどころか嬉しそうに笑ってる……何で??
「まぁさーくんの頼み事なら束さんが断ることなんて無いに等しいんだけどね!」
束姉の心強い了承を得た僕は、改めて僕が考えた安直な作戦を二人に話してみた!
──“俺”は今、フランスの上空で待機している。
目下に広がるのは……目的地であるデュノア社だ。
「──いーい? それじゃあ一分後に作戦開始だからね?」
と、右耳にはめている無線機から束さんの声が届く。
「了解だ」
そう返事をして、俺は自分の姿を改めて確認する。
全身黒いコートに手袋、ブーツ、フードを深く被る『無敵能力』の姿。
俺が提案した作戦は簡単なもので、俺が『無敵能力』を発動し、隠密にデュノア社長夫妻とシャルロット・デュノアを狙う暗殺集団を殲滅する。
それだけだ。
だがやはりクロエはともかく束さんは不服そうだった。
何だかんだと説得した上で、束さんのサポートを前提とした隠密及び殲滅作戦を展開することになった。
「万が一の為に私も出撃準備は出来ています」
束さん作のISを持っているクロエも保険としてにんじん型ロケットで待機している。
「──三、二、一、GO!」
束さんのカウントダウンを合図に高速で下に落ちていく。
そしてそのままデュノア社に潜入した──
──そのまま僕は束姉の指示に従いながら悪い人たちをとっちめて、シャルロットちゃんのお父さんと
……流石に「日本人の子供が何でここに?!」って当たり前の反応をされちゃったけど、束姉の翻訳を聞きながら何とか会話を成立させて、僕とアルベール・デュノアさんは電話番号を交換した!
それがまさか昨日の今日で役目を果たすとは僕の携帯電話も思ってなかっただろうなぁ~。
「ふぁ~……。シャルロットちゃんも暫くは屋上に居るだろうし、僕はここで少しお昼寝しようかな……」
本能に逆らうべからず!
僕は無意識の内に額に透明化シールを張って、そのまま寝転んで目を瞑った……。