──箒ちゃんとの勉強会!
手作り問題集は僕が今まで習った所をピックアップしてくれてたお陰で、ちゃんと理解しながら復習することができた!
そしてあと何日間かは復習問題を解いて、それから僕が遅れている学力を取り戻す方針だって箒ちゃんが教えてくれた。
「──ごちそうさま!」
「あぁ、お粗末様」
勉強が終わってから、僕は箒ちゃんの料理を食べ終わって幸せな気分に浸っていた。
箒ちゃんもお茶を飲みながら食後の一服を満喫している。
「……」
だけど。
箒ちゃんのチラッチラッと時計に目を向ける回数が多くなってきた。
──にしし、あー、なるほどね~。
「──箒ちゃんは一夏兄に告白しないの?」
「ぶふぉ?!」
僕は悪戯顔で箒ちゃんにとっての爆弾発言を投下してみた。
するとタイミングが悪かったのか、口に入れたお茶を勢いよく噴き出してしまった。
「……箒ちゃんも中々に強烈なカウンター返しができるんだね」
と、真正面に座っていた僕の顔は箒ちゃんのお茶でベタベタな状態に。
「す、すまん?!」
慌てたようにタオルを持ってきてくれた箒ちゃんに、
「いやいや、僕が悪いんだから箒ちゃんは謝らないで! 僕の方こそびっくりさせちゃってごめんね……」
受け取ったタオルで拭き取ったあと、僕は箒ちゃんに頭を下げる。
「私は平気だから気にするな。──しかしなぜ唐突にそんな発言をしたんだ……?」
凛とした表情で謝罪を受け止めてくれた箒ちゃんも、先ほどの発言を思い出したのかカーッと顔が赤くなる。
そんな箒ちゃんのリアクションに僕は微笑ましい気持ちになる。
「だってさ、小さい頃から箒ちゃんが一夏兄の事を好きって知ってるし、僕は将来の
それは千冬姉も束姉も気づいてるのに、本人同士だけが気づいてない外から見れば何ともモヤモヤする距離感。
かと言って本人が納得していないのに周りがお節介を焼くのもちょっと違う気がするんだ。
だからこうやってさり気なくさり気なく気持ちを前向きにさせていかないと、いつまで経っても二人が恋人になれる未来は来ないと思う。
一夏兄と箒ちゃんの性格を知り尽くしてる僕と千冬姉と束姉の答えがこれだった。
「そ、その言い方だと恋人を超えて夫婦になるぞ?!」
「にしし、僕はそういう意味で言ったんだよ? ……一夏兄って昔からモテてるよね? この学園には僕は例外として、一夏兄以外は全員女子。もしかしたら近いうちに勇気ある子が一夏兄にアタックして交際を始めちゃうかもしれない……。僕は一人の友達として、箒ちゃんを応援してるし僕に出来ることがあれば何でもするからさ!」
僕は自分の本心をハッキリ伝えた。
箒ちゃんは目を瞑り何かをかみ砕くように一度、大きく頷いた。
カっと開かれた瞳は決意に満ち満ちている。
それからこの話題は一旦幕を閉じ、明日の勉強会の約束をして部屋に帰った!
シャワー浴びないと流石にタオルで拭いただけだとね……?
──翌日の放課後!
今日も今日とて家事を一通り終えた僕は透明化シールを張って学園内を散歩していた。
話題は昨日と似たようなので、二番目の男性操縦者はまさに貴公子だとか、一夏兄もそろそろ一人部屋になるかも、みたいな話しで盛り上がっている。
……一夏兄が一人部屋に移れば箒ちゃんのアプローチする時間が減っちゃうのが残念だけど、こればっかりは仕方ないのかな。
「……あれって」
今日は天気も良いし風も気持ち良いから屋上に行ってみた!
するとそこには先約が居たようで、
「……はぁ」
と。
一夏兄以外に男子制服を着ている、
遠目からでも分かるくらいサラサラな金髪を首の後ろで束ねていて、紫の瞳が悩まし気に空を見つめている。
中性的な顔立ちも合わせて──シャルル・デュノアくん、本当に貴公子みたいで絵になるなぁ。
だけど……
(女の子、なんだよね)
僕は無意識のうちにシャルルくんを見つめていたのか──目が合った。
「ッ?!」
シャルルくんは幽霊でも見たような反応で僕を凝視する。
「……君が一夏が言っていた弟くん?」
だけどハッと思い出したかのように恐る恐る僕に言った。
僕も怖がらせる気持ちなんて微塵も無く早く安心させようと、
「あ、うん! 僕は織斑桜!! 桜でいいよ?」
「桜くんだね? 僕はシャルル・デュノア。僕のこともシャルルって呼んでね?」
自己紹介が済んだあと、僕はそのまま手招きされる形でシャルルくんの隣に座る。
暫く無言で気持ちの良い風を浴びながら、どことなく綺麗な空を眺める。
(初めて会った人と気まずくならない静かな時間って何気に初めてかも)
それぐらい今の時間は心地良かった。
でも……シャルルくんの表情は浮かない。
色々な物をため込んでいる、吐き出したい、そんな幻聴が聴こえるぐらいに、シャルルくんの瞳が揺れていた。
「……ん? どうしたの?」
僕の視線に気が付いたシャルルくんは、優しくて爽やかな笑みで僕を見る。
……だけどその笑顔は、僕にとっては泣いているようにしか見えなかった。
(──知ったからには僕は行動に移す。焼いていいお節介と焼いちゃいけないお節介があるとするなら、今からする僕の行動はシャルルくんにとってどっちなんだろう……)
完全な部外者な僕だけど、僕にはシャルルくんの重荷を少しでも減らせるかもしれない。
これは僕のエゴだけど、僕がこう動くことを
「──シャルルくん」
「なーに?」
「シャルルくん。いや、シャルロットちゃんの両親が男装をさせてまでIS学園に送った本当の
目を逸らさずに伝える。
シャルロットちゃんの息を呑む音が耳に届き、震えるような声で、
「なぜ君が知ってるの……?」
至極当たり前な言葉を口にされた。
──さて。
「取り合えず僕の話しを聞いてから判断してくれると嬉しいな?」
それでは、また!
※1話から14話までを最新話に近い文章に修正しました。
台詞なども気持ち程度に変わっています。