このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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じゅうごわめ!

天気は昨日の天気予報通りに、雲一つ見当たらない快晴日。

最近はこの透明化シールがあるお陰でちょこちょこ外に出れるようになったのは本当に嬉しいし、本当に束姉に感謝!

だけど完全に透明になる訳じゃ勿論なくて、物や人にぶつかれば普通に接触することになるから、余所見をして歩いていると下手したら幽霊騒ぎになるかもしれない。

そんな事を思いながら歩いていると、

 

(ここかな?)

 

クロエちゃんと待ち合わせ予定の喫茶店に到着した。

当然入店する前に人気のない場所で透明化シールを剥がす。

 

(これで入れるね。クロエちゃんはもう来てるかな?)

 

僕は喫茶店の扉を開けてサッと店内を見渡す。

するとクロエちゃんらしき人、っていうか、クロエちゃん本人の後ろ姿が身に映った。

 

(やっぱり僕が後だったか……)

 

店員さんの案内に、「人と待ち合わせしてるんです」と、一度は言ってみたかった台詞を伝えて、クロエちゃんの元に寄る。

 

「──あ、桜さま!」

 

「お待たせ、クロエちゃん」

 

……ほんの、ほんの少しだけクロエちゃんの後ろ姿によく似た別人だったらどうしようかなって考えも(よぎ)ったけど、そんな不安はクロエちゃんの笑顔で吹き飛ぶ。

 

「いえ、私も先ほど着いたばかりです。……まずはメニューから頼みますか?」

 

「うん」

 

僕はカフェラテ、クロエちゃんは紅茶、食べ物はお互いにサンドイッチをそれぞれ注文し、他愛もない話しで盛り上がりつつ、サンドイッチも平らげた。

ここのサンドイッチは一夏兄よりも美味しいと思ったのは内緒!

 

「それで……僕を呼んだ理由をそろそろ聞いてもいいかな?」

 

話しも食事も一段落したところで、僕はクロエちゃんに本題を切り出す。

 

「──桜さま、デュノア社ってご存知でしょうか?」

 

「デ、デュノア社?? それって何かの会社の名前?」

 

初めて聞いた言葉に僕は首を傾げざるを得ないでいた……何でクロエちゃん頬が赤くなってるの?

 

「コ、コホン! ……デュノア社とは、フランスを代表するISメーカーの会社名です」

 

誤魔化す様に咳ばらいをして、真剣な顔に変わるクロエちゃん。

 

「会社の詳細は省きます──単刀直入に言えば、二人目の男性操縦者、フランスの代表候補生という肩書きで一夏様と箒様が在籍するクラスに引っ越してきた“シャルル”・デュノアという人物。実はデュノア社の社長と今は亡き妾の子、“シャルロット”・デュノアという女の子なんです」

 

……ふむ。

そう言えば今日の学校探検で、確かに二人目の男性操縦者が一夏兄のクラスに転校してきたって話題で持ち切りだったよね。

 

「ごめん、話の意図がわかんないや……」

 

僕は苦笑いでクロエちゃんに先を促す。

 

「束様が集めた情報の結果、シャルロット・デュノアは一夏様のISデータを盗むために学園に送られて来ました。社長の妻でありシャルロット・デュノアの継母が彼女を嫌っているらしく、この計画はデュノア社のこれ以上発展する余地のない未来を打開するための策として、バレてもトカゲの尻尾切りのように、シャルロット・デュノア捨てることができるから……という背景が明らかになりました」

 

「……」

 

「──表向きは、です」

 

「表向き……?」

 

「はい。束様はこの情報までしか集めていませんでした……忙しいという理由と、これ以上の材料は要らないと判断されたのでしょう。一夏様や箒様には千冬様が基本的に傍にいますが、桜さまの場合は少々特殊……よって、あくまで頭の片隅にでもという理由で、この情報をお伝えするために束様の頼みで今日はこの場にお呼び致しました」

 

(束姉も相変わらずだね……)

 

「……なるほど、僕が今日呼び出された理由は分かったよ。それで、クロエちゃんが知った情報は僕に教えてくれるのかな?」

 

今までの話だと、何だか胸がモヤモヤして複雑な気分になる。

 

「勿論です。というよりもここからが私にとっては本題となります。私が得た情報では、デュノア社長は超娘想いですし、継母に至っては超超超ツンデレだということが明らかになりました」

 

「……どゆこと???」

 

「シャルロット・デュノアを男装スパイとして学園に送り込み、一夏様のISデータを盗むというのは表向きで、本当の理由は、デュノア社内でシャルロット・デュノアを暗殺する計画を知ったデュノア社長──アルベール・デュノアは、まず彼女を世界でもっとも保護された存在であるIS操縦者にして、そしてあらゆる組織、国家が干渉することを許されないIS学園に送りこみ──暗殺計画を頓挫させるのが本来の目的だったようです」

 

「それってシャルロットさんは知ってるの? 本当の計画を……」

 

「いいえ、知らないでしょう。デュノア社長と継母はシャルロット・デュノアを守る為にあえて自らが嫌われるように仕向けた計画だった。敵を欺くにはまず味方から──などと言う言葉もありますが……」

 

そう言ったきり、クロエちゃんは黙ってしまった。

僕も浮かぶ言葉が見つからない。

もう殆どないカフェラテを飲み干し、僕たちは喫茶店を後にした。

 

 

 

 

 

「それでは桜さま、私はここで」

 

人気のない寂れた公園で少し気分転換に話した後、クロエちゃんはそう言って束姉の所に帰って行った。

……、

 

「僕も帰ろうかな」

 

額に透明化シールを張って僕はIS学園に向けて歩く。

──シャルロット・デュノア……僕に出来ることって何かあるのかな? そんなことを今日の夜、箒ちゃんとの勉強会が始まるまで、一人で悶々と考えていた。

 

 

 

 

 

 




ちょこっとシリアス? が続いておりますが、シャルロットちゃんとのフラグが立ったかなと思います。

それでは、また!

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