このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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じゅういちわめ!

クラス対抗戦も無事に閉幕して、お月さまも雲に隠れずランランと静かな闇を照らしてる。

今頃一夏兄含めてどの学年も打ち上げでどんちゃん騒ぎしてるんだろうな~。

──僕は部屋で一人、テレビ番組のニュースをラジオ代わりにしてちょびちょびジュースを飲みながらクラス代表達の活躍を思い出す。

二年のクラス対抗戦は、断トツで楯無さんが一位だった!

簪ちゃんにちょこっと聞いたけど、楯無さんはロシアの代表操縦者なんだって!

 

「そりゃあ強いわけだよね~、まさに圧巻の一言だったな~」

 

そして一年のクラス対抗戦。

運命の悪戯なのか、一回戦で一夏兄と鈴ちゃんのカードだった……!

最初から専用機持ち同士の対戦、他の人たちも盛り上がってたな~。

結末から言えば、二人の勝負は鈴ちゃんが勝った!

いや~、一夏兄も中々食らいついてたんだけどね~。

鈴ちゃんの見えない砲撃、鈴ちゃんが一切油断していなかったこと、そして何よりも経験の差が圧倒的だった!

一夏兄の切り札を出さないように動いて倒す。

 

「……うん、僅か一年で代表候補生になれる訳だよ」

 

鈴ちゃんの戦闘センスは半端ないって改めて思ったよね。

勿論どっちも応援してて鈴ちゃんが勝ったのも嬉しいし、一夏兄が負けたのは僕も悔しい……。

だけど、一夏兄もこの戦闘で得るものがあったんじゃないかな~って思うんだ!

現に試合が終わった後の一夏兄の目、真っすぐ前を見据えてたから。

──そしてそして、一年のクラス対抗戦の決勝戦は鈴ちゃんと簪ちゃんだった!!

鈴ちゃんは二回戦から余裕を持ってトーナメントを勝ち抜いて、簪ちゃんも試合の中で初めて身に纏った専用機を徐々に体に馴染ませながら順当に勝ち上がった。

──二人の勝負の結果は、鈴ちゃんの勝利で幕を閉じた!

簪ちゃんも当然強かった。

あくまで僕の考えだけど、ある意味で結局は経験の差かな~って。

その経験っていうのも、ぶっつけ本番で専用機に乗ったか乗ってないかだと思うんだ。

もしもの話しをしても仕方ないかもだけど、簪ちゃんが鈴ちゃんと同じくらいに乗ってたらまた違った結末になってたかもしれないね?

あーあ、さっきも透明化シールを張ってそろ~りそろ~り打ち上げの様子を覗いてみたけど、みんな楽しそうだったな~!

 

「僕が参加しても誰も気づかないかな~?」

 

「気づくに決まっているだろう……」

 

「?! ち、千冬姉?」

 

ただの独り言だったのに、返事が返ってきてビックリした!!

 

「仕事が早く片付いたんでな。早々に帰ってきた」

 

パンパンになるくらいに缶ビールとおつまみが入った袋を手にした千冬姉は、ドカッとテーブルの上に置いて座る。

 

「一夏兄たちのクラスに顔出さなくて良いの?」

 

「あぁ、山田君……副担任に監督を任せているから大丈夫だ。それに私が居ても妙に盛り上がらないだろうからな」

 

澄まし顔でプシュッと缶ビールを開けながら、

 

「わわっ?!」

 

「ふっ、(たま)には姉弟水入らず、こういうのも良いだろう?」

 

僕を片手で抱き寄せた千冬姉は、そのまま胡坐の上にスポンと座らされた。

 

「ち、千冬姉……。スカートタイプのスーツなのに胡坐はだらしないよ……。それにお酒臭い!」

 

「今日まで色々と仕事が多く、明日からも仕事があるんだぞ?? 私も人間だ。こうしてストレスを発散させないといつか爆発してしまう……!」

 

「た、確かに千冬姉が暴走したら洒落にならないよ?! もう~、今日だけだからね?」

 

「ふっ、何を言っている? これからストレスを発散する度にお前に抱き着くぞ??」

 

ちょっと顔が赤くなってるお酒臭い千冬姉は、普段は出さない楽しそうな意地悪顔で笑う。

 

「千冬姉もしかしてもう酔っぱらったの?!」

 

「私がこんなすぐに酔っぱらうわけがない!」

 

「むぎゅっ?! 抱きしめる力が強くなってるよ?!」

 

「もうこのまま寝る!!」

 

「え~?! ちょっと千冬姉?!」

 

本当にこのままの状態なの……?

 

「すぅー……くぅー……」

 

もう寝息が聞こえるし!!

……まったく仕方ないなぁ、千冬姉は~。

なんだか千冬姉の温もりがちょうど眠気を誘う、お酒臭いけど!

僕もそのまま目を瞑って──

 

 

 

 

 

──翌朝、目が覚めたら既に千冬姉は部屋に居らずお仕事に行っていた。

昨日のビールの空き缶は最低限台所に置かれていて、僕は完全に目を覚ます為に食器も含めて洗う。

そして歯磨きして顔を洗う、ついでにシャワーを浴びて服も着替える。

 

「──よ~し! 目が覚めた!」

 

窓も開けて部屋の換気も忘れない!

さ~て、今日は土曜日! 今から何をしよう?

時計を見るとまだ朝の八時過ぎ。

う~ん、お腹も減ってるし朝ご飯から作ろうかな。

何て軽くストレッチをしながら今日の予定を立てる!

するとブーブーとスマホが揺れる。

 

「……電話だね、誰からだろ? ──ラウラちゃんからだ?!」

 

僕は通話ボタンを押して、

 

「もしもし? ラウラちゃん??」

 

『桜! 私だ、ラウラだ!!』

 

うわ~! 本当にラウラちゃんだ!

ドイツの軍人さんで普段は忙しいから中々連絡出来てなかったけど、まさかラウラちゃんから電話がくるとは!

 

「おぉ、久しぶり! ラウラちゃん元気だった?」

 

『あぁ、私はいつも元気だぞ! 桜は元気だったか? 風邪など引いていないか??』

 

「にしし、心配しすぎ! 普通に健康だよ!! ……それで、突然どうしたの?」

 

『いやなに、ニュースで一夏がISを動かしてIS学園に入学したと聞いてな!』

 

「やっぱりドイツでも話題になってるんだね~! その通り、一夏兄はIS学園で日々頑張ってるよ! 僕は今は中学校に通えないからIS学園で過ごしてるんだ!!」

 

『なん……だと……! それは本当か?!』

 

「え? う、うん。本当だけど……」

 

『IS学園の生徒は皆男に飢えた獣だと聞いている!! 襲われてはないか?!』

 

「お、襲われてないよ?! 平和だよ! へ・い・わ!! 新しいお友達もできたし楽しく過ごしてるよ?」

 

『だがそれも時間の問題かもしれん!! これは機密事項ではないから言えるが、私も近々転校生として通学することになる! だから、私が行くまでは何とか持ちこたえるんだぞ!!』

 

「だからラウラちゃんが思ってるような人たちじゃな──」

 

ツーツーと通話が切れちゃった……。

ラウラちゃん、どうしてあんなに勘違いしてたんだろ……?

ラウラちゃんと会えるのは楽しみだけど、会った時はちゃんと勘違いを解かないと!!

僕はそう決めると、とりあえずはお腹が空いたから朝ご飯を作ることにした!

なんたって、お腹が減っては戦もできぬって言葉もあるからね!

 

 

 

 

 

 


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