天性の魔術師と王女   作:バロン

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今回は少し長めの投稿です


虎王族へ

ここは花の都、王都・サレマ、町の造りは中世のヨーロッパ、レンガ作りの建物が建ち並ぶ。

その中一つの行列が王城までの道のりを練り歩いていた

 

「見ろ町の衆これがあの呪われ人!そしてこの王国の秘宝を奪おうとした大罪人だ~!!!」

 

アルドルファーは有ること無いこと言いふらしている、部下達は俺に喰い殺されたやら、カリーナに騙し打ちされたやら

 

「見てあの角、気持ち悪いわ~…」

 

どこからかそんな声が聞こえてきた、同時に何処からか石が飛んできた、石は次々投げられた

 

王城は白い5メートル程の城壁に中途半端な掘り、門も一番外に近いと言うのに木製だ厚さも50㎝も無い、正直お粗末過ぎる城だ

しかし、芸術と言うのであれば素晴らしい

 

「どうだ、この美しき城は!!!」

 

アルドルファーはこの城で満足しているようだ

 

「あぁ~、スゴいなー(棒)」

 

適当に受け流すとアルドルファーはニコニコしながら

 

「そうだろう、そうだろう本当に美しき城だ!!!」

 

こんな中、馬車は王城へと入って行った俺とカリーナは王城の地下にある牢へと投獄された

 

「遅くとも明日の朝には判決が下る、早ければ夕方にもなそれまで残りの命を牢獄で楽しく過ごせ、ハッハッハ!!!」

 

アルドルファーは俺とカリーナを同じ牢に閉じ込め高笑いしながら地上へ続く階段を上がって行った、牢の前には二人の兵士が見張っている

 

「う…ん?」

 

その時カリーナが目を開けた、しかし今だ息が荒く苦しそうだ

 

「ハァハァ、あ…あなた何でここに?」

 

カリーナは今いち状況が分からないようだ、俺は何があったのか説明するとカリーナは申し訳なさそうに謝ってきた

 

「ごめんなさい、私のせいであなたまで…」

 

「いや、俺が決めてやった事だ謝る必要は無いそれに」

 

俺は手錠を横に捻ると≪バキッ!≫と言う音を立てながら粉々に砕け散った、直ぐ様錬金術≪錬成≫を使いただの石で出来た手錠を自分に着ける

 

兵士達が何の音だと覗いて来たが手錠を着けているので問題なしと思われたようだ

 

「俺の魔術、錬金術は大きく分けて三つの力がある≪解析≫≪錬成≫≪付与≫今回は解析の魔術を使い魔封綱を解析、効果を無力化した」

 

カリーナは何が何だか分からないようだ、今回の手錠は魔力を手錠の中に押さえ込む力があった

だからアルドルファーに攻撃しようと思っても魔術を使うことは出来ても放出出来ないから攻撃できなかった。

 

だから手錠内で錬金術を使いゆっくりと解析していった、最初は内側から手錠を壊すことも考えたが狭い範囲では壊すほどの火力が出せない

 

錬金術≪解析≫なら少しずつなら確実に手錠の効果を無力する事が出来た、まぁ解析に時間を多く取られこんな時間に成ったが…

 

「まぁ、先ずはお前の毒の治療からだ」

 

俺は錬金術で中に解毒薬を入れたコップを作り出した、ついでにアルドルファーの兵士達が使っていた謎の薬品も入れといた、怪我をした兵士が使うと直ぐに傷が治っていたので恐らく回復薬?

カリーナはおそるおそるコップの中身を飲み干した

 

「何…これ、体の疲れが一気に治った?」

 

カリーナはまた何が起こったのか分からず困惑していた

 

「カリーナ、もしかして魔術って知らないのか?」

 

俺がカリーナに聞くとカリーナは首をかしげた

 

「魔術?ん~聞いたこと無いわね」

 

「じゃあ何でこの島に来たんだ?」

 

それから俺はカリーナがこの島に来た経緯を聞いた、纏めるとこんな感じだ

 

・イーストブルー≪東の海≫でトレジャー海賊団の宝を盗もうとする

・ナミと言う同業者と再会

・トレジャー海賊団の隙をついて宝物奪う事に成功

・取り分でナミと喧嘩、トレジャー海賊団にバレる

・交渉により脱出成功、タイミングを見てナミを助ける

・囮になってナミを逃がす

・トレジャー海賊団に追い回される、逃げ込んだのがグランドラインのこの島

 

「まぁ、ナミから航海の基本とかグランドラインの話とか聞いてたから命をからがら島にたどり着けたわ

最初は隣の島に向かったんだけど、着いたら変な大口男に追いかけられるわ、山に逃げ込んだら大兎に追いかけられるわで、この島に逃げてきたのよ」

 

色々と危なそうな単語が聞こえてきたけど…気のせいか!

それから分かったことは魔術を使えるのはどうやらこの島の人々だけということ

そしてカリーナはこの島に狙って来た訳じゃ無いことだった

 

「ハァー、でもそんな力があるなんて初めて知ったわウシシ♪」

 

俺はそれからカリーナとどう逃げるか話した、三方を魔封綱の壁に囲まれ前には覗き窓のみの鋼鉄の扉本気でやればこんな牢屋粉々に出来ると思うけど…カリーナも粉々に成りそうだしなぁ~

 

そんなことを考えながら指をパチッとならす、同時に炎の玉・雷の玉・光の玉が指から離れてくるくる回る、暇潰しに魔術操作の練習だ

 

「わぁぁ~、綺麗ね!」

 

カリーナは目を輝かせながら光を目で追っている、薄暗い牢が幻想的な三色に満たされる

その時

 

(これは…ですが私どもは…申し訳あり…感謝…)

 

突然扉の前にあった人の気配が二つとも遠ざかって行った、同時に一つの気配が近づいて来た

 

≪ガチャ!≫

 

ギィーと音を立てながら重い鋼鉄の扉が開かれた、目の前に立っていたのは

 

「出てください」

 

銀髪の少女だった、軽くなびく髪は美しく薄暗い松明の光を反射し光を放つ

 

俺は反射的に鑑定を行った

 

セリア 9歳 人間族

レベル 5

HP 20/20

MP35/35

筋力15

耐久20

俊敏7

魔力100

 

スキル

 

・魔力伝達 レベルD

 

固有スキル

魔術・水 レベルC

 

称号

・王宮付きメイド

 

・覇者 レベルD

 

・覇道を歩む者 レベルD

 

ん?何だこの見るからにヤバそうな称号は…

まぁ出してくれると言うのだから問題ない、俺とカリーナは辺りを警戒しながら外に出た

 

「君は?」

 

俺が訪ねると少女は

 

「この城で働かせて貰っている者です、あなた達は秘宝を盗んだ罪で投獄されていますよね?」

 

「あぁ、そうだ後騎士の虐殺容疑もあるがな」

 

「少なくとも秘宝を盗んだ犯人は捕まりました、ロゼーノ王国第一騎士団団長・ミロ・カバロ様が朝方捕らえて来ました、秘宝も一緒です」

 

「ん?ならここに居ても同じじゃないか?」

 

俺が訪ねるとセリアは首を横に振った

 

「あなた達を捕らえてきたアルドルファーと言う男、この報告を受けると何とカバロ様が捕らえてきた男を偽物だ、本物は俺が捕らえてきた奴等だといい処刑を強行しようとしています、ここから逃げて!」

 

俺とカリーナはセリアの後について牢屋の階段を駆け上がる…遅かった

 

「逃がさんぞ!殺人鬼め!」

 

アルドルファーは手を上げる、同時に魔術兵が詠唱を完了させていた魔術を放った

五つの光がセリアに直撃する筈だった

 

「雷鳥!!!」

 

セリアの背中から飛び出した蒼白い鳥は五つの光にぶつかり消し飛ばした

同時に魔術を放った魔術師を吹き飛ばす

 

「おい!いきなり何するんだ?」

 

「くっ!うるさいうるさいうるさい!この怪物!化物め!この大量殺人鬼が!」

 

アルドルファーは詠唱を始めた、嘘だろ?

 

「レールガン!」

 

アルドルファーの左肩を撃ち抜くと地面に転げる、敵を前にして詠唱を始めるとかこいつは馬鹿なのか?

 

「うあぁぁぁぁぁ‼私の…私の肩がーーー!!!」

 

アルドルファーは地面を這いつくばりながら外へと逃げ出した、その時

 

≪カァーン、カァーン、カァーン、カァーン≫

 

鐘の音が王都と王宮に響き渡った、同時にアルドルファーが逃げ出した外へと続く扉から王城の城壁が砕ける姿が見えた

 

城壁が砕け舞う土煙の中現れたのは体を布で隠した黒髪の女の子しかし腹部や足等、所々露出している、それは真っ直ぐこの牢へ続く扉にむかってくる

 

「お、おい貴様…丁度良い私を助けろ!褒美は沢山やる!」

 

アルドルファーは何を勘違いしたのか明らかに自分に敵意剥き出しの少女に助けを求める

 

「何をしている!早くしろ!!!」

 

「…黙れ」

 

黒髪の少女はアルドルファーを掴むとその小さな体で持ち上げ城壁へ投げ飛ばした

 

少女はまた向きを代え俺達の方へ歩を進めた

 

「助けに来ました…ご主人様♪」

 

「へ?」

 

少女はその黄金に輝く瞳でゼロを見た、その顔は触れば溶けてしまいそうなほど白くすらりと伸びた腕と腰布から少し見えている細い足

 

そして胸布の下に除くお腹には赤い爪痕のようなものが両わき腹に二本ずつ引かれている、その顔立ちはこの世の物とは思えないほど美しく可愛らしかった

 

「君は?」

 

少女はニコリと微笑むと

 

「話は後でゆっくりと、今は」

 

少女は1歩後ずさると眩い光を放った

 

「セナカヘ」

 

光が収まり現れた姿に絶句した、それは紛れもなく虎王≪ガルドラ≫だった

伏せて俺が乗りやすいように待っている、その姿を見る限り敵意は無さそうだ

 

俺はここから逃げるためガルドラの背に股がる、ふわふわの毛が心地よく高級なソファーに座っているようだ、俺に次いでカリーナも股がる

 

「グルルル…」

 

ガルドラは渋々カリーナを乗せ駆け出した、壊れた城壁をくぐり抜け森へと駆けた、その恐ろしい程のスピードに魔術師の攻撃は空を切った

 

暫く森の中を走ると一面が青紫の花畑に出た、そこでガルドラは止まったりカリーナを振り落とし、ゼロを慎重に降ろした

 

「ここが私たち虎王族の住む聖域≪千年花の森≫です…ご主人様」

 

「所でなぜ君は俺を助けたんだ?」

 

ガルドラはゼロを見て虎王族の掟を話始めた

 

「私達虎王族は強いものが全てで族長もこの群れで一番強いものが成ります、私は族長の娘で今現在ここに住んでいる虎王族の中で二番目に当たる強さを持つ副族長の座に居ます、しかしこの地位に私は自分の爪と牙で上がってきました

そして何時ものように≪千年花の森≫を警備していたら侵入者を見つけ排除しようとしたらあなたに敗れました。」

 

「それは…何と言えば良いのか…」

 

「いえ良いのです!その代わりに私はあなたを見つけました、ここでは男に倒された女はその男の嫁に成るのがしきたりです、今まで私に戦いを申し込んできた男の方々は全て倒してきました、そしたら何時の間にか副族長です…」

 

そこでやっと俺は理解した、だが…

 

「でもお前、俺との戦いの中いきなり戦うの止めたよな?」

 

「そ、それは…あんな贈り物や大胆な事をされたら私…」

 

少女は頬を赤らめながらゼロを見た、うん可愛い

だけど贈り物何て上げたっけ?

 

俺は記憶を呼び起こした、腕折られて覇槍で怯んだ隙に首輪で……あ

 

ゼロがガルドラの首を見る、銀色に鈍い光を放つ輪がはまっていた

 

「これスゴいですね、体が大きくなると首輪も大きくなるし小さくなればこれも小さくなるし」

 

ガルドラは興奮した様子で話続けている

 

「来たか……」

 

突然森の奥から声が聞こえた、地を揺らすような声に俺は目を向けた

 

森の奥、虎王族の在るであろう集落から出てきた巨大な虎、身の丈は約8メートルをゆうに越していた、腹に刻まれた赤い爪痕は3本ずつ両わき腹にあった

 

「ワシがこの群れの長ガルドラじゃ」

 

…え?

 

「あなたがガルドラ?」

 

「左様」

 

「娘さんは?」

 

「娘はまだガルドラではない」

 

どうやらガルドラとは虎王族の長が、代々名乗る名前で一番強いものが倒されたときそいつが新しいガルドラに成るらしい、そして長に挑戦する権利を持つのは次に強いもの、つまり俺にが倒したこの少女だった

 

「だからガルドラ(仮)って成ってたのか」

 

「さて、お主は我々虎王族の中で二番目に強い我が娘を倒しその地位を勝ち取った、よってここにお主を虎王族・副族長に認める」

 

その瞬間森の奥、虎王族の集落から歓声が上がったそれからぞくぞくと凶悪そうな虎が現れた

 

「お前が新しい副族長か、宜しくな!」

 

「あの娘も頑張ってたんだけどねぇー、まぁしっかりね」

 

虎達は次々と人の姿に代わり俺を受け入れていた

 

「いやいやいやいや、良いんですか?私はあなたの娘を倒したんですよ?」

 

「勿論この集落に入る前にワシは直々にお前を観察してた、隣にいるその人間を助けようとする働きもな、その結果お前はこの村に入れても大丈夫と言うことに成った、各長にも連絡しておる」

 

俺は困惑しながらも他に行く場所はない、王都も恐らく手配書が回るだろう、他の町にも回る事を考えると…

 

「では…暫く厄介になります」

 

そう言いながらガルドラの後を着いていく、後ろからあのガルドラ(仮)の少女も付いてくる、俺は意を決してガルドラに尋ねた

 

「あの、ガルドラさん…あなたの娘さんが私と結婚すると言っているんですがそれも良いんですか?」

 

「う、うむ、強いものに嫁ぐ、それが我ら虎王族の掟、娘がそれに嫁ぎたいと言っているなら尚更だ……よろしく頼む、ただもしも我が子を不幸にしたらその命をもって償って貰うがな…」

 

俺はガルドラの後に付いて森のなかに入り青紫の花絨毯を抜ける、そして直ぐに見えてきたのは虎王族の集落だった

 

道は石畳のような物で覆われており建ち並ぶ家も木ではあるがしっかりとした作りをされていた、俺とカリーナはガルドラ(仮)の家に住むことになった

 

「カリーナ、お前は自分の故郷に帰った方が良いんじゃないか?」

 

「いいえ、私借りを作らない主義なの…それに君とも離れたくないし…」

 

「え?」

 

「う、ううん何でもないわウシシ♪」

 

俺はガルドラ(仮)を向いて話始めた

 

「なぁ、本当に俺が旦那で良いのか?まだ俺達若すぎないか?」

 

「勿論今すぐ…その、け、結婚すると言う訳じゃないです

、いや、別に嫌な訳じゃ無いですよ?

むしろ嬉しいくらいで…でもまだあなたのこと良く知らないし、だから私は婚約者と言うことにして頂けないでしょうか」

 

「う、うん、それはそうだけど…」

 

「私、嬉しかったんです…今までこの村では強さこそが全てで欲しいものは力づくで手に入れる。

でもあなたは、その人間を助けるため明らかに私の方が強いのに立ちはだかり戦いを挑んだ、そして私を倒した

その時に私はこの人を支えて生きたい、この人が困ったら私が助けてあげたいと思ったんです…だからお願いです私をあなたの婚約者にしてくれませんか?」

 

「もしかした、傷つけるかも知れないぞ?」

 

「そしたら、その分私があなたに甘えさせて貰います」

 

「他に好きな人が出来るかも知れない」

 

「そしたらその人も愛してあげてください、そんなあなたが好きです」

 

「裏切るかもしれないぞ?」

 

「その前に私があなたを助けます」

 

少女は黒髪を耳にかけながらその優しい黄金の瞳で俺の深紅の瞳を見据えている、俺の心は決まった

 

「分かった…俺は君を命を懸けて守る、決して不幸にしないと誓おう」

 

俺がこう言うと少女はニコリと微笑むとその黄金の瞳から二つの雫が流れた

 

「はい…よろしくお願いします…ご主人様♪」

 

「だがガルドラ(仮)って呼びにくいなぁ、勝手に名前って付けちゃダメなのか?」

 

「いえ、多分問題なかったと思いますけど…」

 

「なら、その嫌じゃなかったら俺が名前を付けて良いかな?」

 

「え!は、はい勿論!良いんですか?」

 

「あぁ、それじゃあ…」

 

俺は暫く考えると一つの名前が浮かんだ

 

「君の名前は≪キトラ≫何てダメかな?」

 

「キトラ?」

 

「キは俺が鬼人族だからトラは君が虎王族だから合わせてキトラ、俺と虎王族の架け橋に成ってくれるような存在」

 

「はい!私はキトラです!」

 

それから俺はキトラとガルドラの元に行き婚約したことを伝え、この種族の長年の問題である種族問題を聞かされた

 

この問題を副族長の俺に何とかしてもらいたいらしい、副族長になって初めての仕事だしっかりやりたい

 

こうして虎王族との生活が始まったのだった




次回から本編に入れそうです、よろしくお願いします!

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