天性の魔術師と王女 作:バロン
目に映ったのは澄み渡る様な美しい青空、体を起こして辺りを見回すと青々とした木々が太陽の光を浴びて光輝いている。
「…頭が痛い」
俺は転生の影響なのか頭を抱えながら立ち上がる、すぐ近くに川でもあるのか水の流れる音がする。
そちらの方へ歩くと直ぐに小さな川を見つけた、俺はそこで初めて自分の顔を見た、顔は黒い髪に赤い角が二本額から生えていた。
瞳は血のように深紅に染まっているどちらかと言うと女顔なのかもしれない。
まぁ、この世界の基準が分からないが悪い顔立ちでは無いだろう
腰には漆黒の小太刀が差してある、服装は黒と赤のローブを頭まで羽織っているが中は何故か和服である
「さて、先ずは拠点を作るか」
俺はスキルを開く
ゼロ 10歳 鬼人族 魔術師
レベル 1
HP 500/500
MP50/50(+1000)
筋力400
耐久300
俊敏20
魔力50
スキル
・経験値5倍
(敵を無力化又は撃破に伴い貰える経験値を5倍にする)
・空間魔力吸収 レベル D
(大気中に存在する魔力を吸収するレベルが上がるにつれて吸収スピードと吸収量が増加)
・属性無効化 レベル D
(様々な属性攻撃を無効化する、レベルが上がるに連れ無効化も上昇する)
固有スキル
・言語理解
(転生者に授ける固有スキル言語を理解する)
・アイテムボックス レベル D
(転生者に授ける固有スキル自分のレベル×100個のアイテムを収納可能)
・サイレント レベル A
(自分の存在を相手に悟らせない、レベルが上がるにつれてより強い魔物にも発見されにくくなる)
・鑑定眼 レベル S
(目に移る物を何でも鑑定出来る)
・伝承 レベル D
(倒した敵のスキルを一つだけ受け継ぐ事が出来る、レベルが上がるに連れ引き継ぎ出来るスキル増加、仲間に受け継がせる事も可能)
・魔術の基本 レベル D
(基本的な魔術を使える様になる、レベルが上がるにつれ使える魔術も高位に替わる)
称号
・転生者
・全能神の加護
(全てのスキルが少し上昇)
間違いなくスキルは貰ったようだ、レベルの後ろにあるのはスキルのランクのようだ
最低ランクからD→C→B→A→SとなりSが最高ランクになる。
俺は森の中を散策しながら使えそうな木をアイテムボックスに入れて歩く事にした。
もしかしたら町に出るかも知れないし
暫く川沿いに歩き続けると街道のような所にでた
「街道があるって事は…町があるのか?」
俺は異世界初めての人間との対面に心を踊らせながら街道を歩いた
街道を歩き続けると馬車に乗る行商人のような者たちが前からゆっくりとこちらに向かってきた
「こんにちは!」
俺が挨拶すると男は笑顔で挨拶を返してくれた
「あぁこんにちは、君一人かい?こんな森の中でどうした?」
見た感じは50代後半程だろうか、そりゃ森の中に十歳の子供が一人うろついていたら驚くだろう
「いや、ちょっと道に迷ってしまって…」
「あー、道に迷って…てここ町から馬車でも三日はかかるぞ?」
俺は町から先にある王都に手紙を届ける途中、川で水を汲んでいたら乗っていた馬と手紙が消えていた…何て作り話をした。
流石にバレたかと思ったが、男は胸を叩いて
「若いのに大変だな……よし!俺も王都に荷物を届けに行くんだついでに連れてってやる、乗りな!」
こうして俺は男の馬車にお邪魔した、そして俺はこの男≪ドルド≫からこの土地の事を聞いた
「お前、自分の住んでる土地の名前も知らねぇのか!」
「あはは…父と母が死んでから近所の人の畑等を手伝ってばかりだったもので」
「しょうがねぇなぁ、この島の名前はロゼーノ、ロゼーノ王国が統治しているグランドラインにある島だ
ただ今ちょっと厄介な連中に狙われているけどな…」
目に見えてドルドの顔が曇る
「この国は別名≪花の王国≫と言われる程様々な種類の花が咲き乱れる、中には他所の国には咲かない希少な薬になる花もある。
最近、海賊と山賊がこの近くの土地を荒らし回ってるって話だ、その海賊共にこの島の事がバレたら…」
俺はこっそりドルドを鑑定した
ドルド 53歳 人間族 行商人&騎士
レベル 24
HP 1350/1350
MP0/0
筋力1000
耐久600
俊敏400
魔力0
スキル
交渉術 レベルB
(人との商談や相談を上手く進められるレベルが上がるに連れより確率が上がる)
剣術 レベルB
(剣を扱い戦えるようになる、レベルが上がるに連れより上手く扱える)
馬術 レベル C
(馬や馬車等の操作が出来るようになる、レベルが上がるに連れ更に早く目的地に着けるようになる)
称号
・王宮付の商人
(王宮に入れるようになる)
・騎士道
(自分の信じた信念、主をけして裏切らない)
ドルドは俺が何をしているのか分からず首を傾げていた、てかこいつならそこらの山賊や海賊には負けないんじゃないか?
それとも山賊や海賊は俺の予想よりも強いのか?
「所でドルドさん、山賊とか海賊ってとれくらい強いんですか?」
「そうだな、まぁ十人位なら俺一人で十分だが…全員を相手にして更に飛び道具何か使われたら俺でも殺られるだろうな」
「じゃあ一対一なら負けないんですね」
「まぁここらの海賊ならな、だがな良いかゼロこの海には決して戦っては行けない海賊が四人いる。
そいつらは四皇と呼ばれていてこのグランドラインの後半新世界で争い続けてるんだ、まぁお前にはそんなに関係ない事だが覚えておけ」
そんなたわいもない会話をしながら二人を乗せた馬車は進んだ、夜に成り街道の端に馬車を止めて馬を木に繋ぐ
「んじゃゼロ、飯でも取りに行くか」
どうやらドルドは森の中に晩飯を狩りに行くようだ、馬車にのせていた剣を手にして俺を手招きしている
「はい!」
俺はこの世界で初めての狩りになる、前世で様々な国に行くことがあったからよくご飯として獣を狩って食べた、あぁライオン美味しかったな~
「所でお前何時まで頭のローブ取るんだ?会ったときからずっと被ってただろ」
そう、俺はドルドに会ったときからローブを深く被ったままだった
この世界で角が生えている人間何て居るのだろうか?
「いや、ローブはちょっと」
「俺とお前の仲だろ、別に減るもんじゃない」
ドルドはどうしてもと言って譲らない
「…分かりました、でも驚かないで下さい」
俺はゆっくりとローブに手を回しフードを外した、そこから月夜に照らし出された深紅の双角、血のような紅に染まった瞳がドルドの前に晒された
「ゼロ…お前、その姿」
明らかにドルドが動揺し始めた
「あの…ドルドさん?」
「お前…呪われ人か!」
呪われ人、この名前とドルドの反応から決して良いことでは無いだろう
「ドルドさん、呪われ人って?」
「…お前の様な異形の者の事だ、獣人とも怪物とも違う何か別の生き物」
「…俺をどうするんですか」
俺はドルドに容易に想像できる質問を投げ掛けた
「呪われ人が生まれたら…殺す事になっている」
ドルドはゆっくりと腰に差した剣に手を添えた、それに伴い俺も悪鬼王の小太刀に手を添える
暫くの沈黙、それを破ったのはドルドだった
ドルドは剣を抜きゼロの脳天目掛けて振り落とす、ゼロはそれを左に避ける事でギリギリ回避した
「何でですか!」
俺の呼び掛けにドルドは答えない、振り落とした剣を今度は俺の腹目掛けて横に凪ぎ払う
俺は悪鬼王の小太刀でその剣を受け止めた、一瞬凄まじい火花が散ったと思いきや次の瞬間ドルドの剣は真ん中から切れていた
「くそっ!」
剣が切られた事に驚いたのか俺から距離を取る
「おいおいゼロ、何だその黒剣は!これでも国王様から頂いたこの国でも上位の剣だったんだぞ!」
ドルドは俺が持つ刀を見ながら苦笑いした、そして短くなった刀を右手に懐から出した小さな曲剣を左手に持ちまた襲いかかる
右手を俺の左肩から右足の方向へ、曲剣を右肩から左足の方向へ切り抜く
「オオオォォォ!騎士花≪セイバー フラワー≫」
高速で放たれた二つの軌跡は間違いなくゼロの両肩を捉えた
刹那ゼロは考えた
このスピードの斬撃を避けられるか?否、今のスピードでは避けられたとしても深傷を負うだろう
迎え撃つか?否、剣の腕は相手の方が上一撃凌いでも次で殺られる
俺の考え出した答え……魔術
俺は頭の中でスキル≪魔術の基本≫と唱えた、すると頭の中に声が響き渡る
≪魔術の基本を行使します、YES/NO並びにYESの場合一度体の再構築を行います≫
俺は迷わずYESを選択した
その瞬間俺の体をドルドの剣が通過した
「何だと!!!」
俺の体から発せられた目映い光に辺りが照らされる、ドルドも思わず目を手で隠した
光が収まりその中心に立っていたのは…、何も変わっていないゼロだった
「な、何だビビらせやがって!」
ドルドが再び剣を握り直し俺に向かって疾走する
しかし俺には先程までの緊張は無かった。
先程の光が発していた瞬間、俺のなかに様々な知識が頭の中に雪崩れ込んで来た、俺は手をドルドに向けると
「ファイアウォール」
その瞬間俺とドルドの間だの地面から炎が吹き出した
今度はドルドの両脇そして後ろに、一辺10メートル程の炎の檻が完成しドルドを閉じ込める
俺はゆっくりと炎の壁に向かって歩き始める、俺が炎に当たる瞬間、その部分のみ横に裂けた
「…ドルドさん」
「お前、能力者だったのか」
ドルドはこちらに歩き始めるとゆっくりと剣を鞘に納めた
「やめだやめだ、俺じゃ敵わねぇわ…てか、俺はお前を殺す気無かったけどな」
その事は気が付いていた、全ての剣よる攻撃は俺に当たる瞬間全て峰打ちに変わっていた
ただ峰打ちでも相当痛いだろう
「あぁ~あ、俺の剣が真っ二つだよもう」
ドルドは自分の真っ二つに切れた剣の刃の部分と持ち手の部分を持ちながら項垂れる
「あ、それ貸してください」
俺はドルドから剣を貰うと俺はまたスキルを行使した
「錬金術・再生」
剣の節断面と持ち手の節断面をゆっくりと近づけるそして当たる瞬間、先程の光とは違いほのかに青白い光が発した
「さぁ、直りましたよ」
俺はドルドに剣を手渡す、そこには完璧に修復されたドルドの剣を渡す
「まぁありがとな、取り合えず飯取りに行くか?」
「え、でも俺は…」
「お前と剣を交え分かった…お前人を殺したことあるな?」
その瞬間俺の鼓動が早まる、なぜバレた?確かに無力化するため多少力は出したが…
「いやいや、別に王国に引き出そうって訳じゃねぇ…ただお前の力は俺なんかよりももっと激しい修羅場を渡ってきた、そんな気がしたんだ」
「ドルドさん」
「何か言えねぇ訳でもあるんだろ、お前が言ってもいいと思えたとき話してくれ」
ドルドはそう言うと俺を手招いて森へ狩りに向かった、夜飯は熊鍋だ、俺はドルドの優しさを噛み締めながら頬張った
夜飯を食べ終わるとその日は早めに寝た、先程の戦闘で気付かない内に体力を消耗していたようだ、その日は倒れる用に眠りについた
このくらいのペースで行きます、次回は少し早く投稿します