天性の魔術師と王女 作:バロン
「お前何者だ!どこから来た!?」
「お前達が俺達の王を呼んだんだろ?」
スノーが人形に戻る、身長163センチ蒼いショートヘアーに少しつり上がった蒼い瞳、漆黒のローブに身を包みその新雪のように透き通った美しい肌と大人びた顔立ちの中にうっすら残る幼さからは怪しい色気が漂う
突然現れた絶世の美少女と青年に少しあわただしくなる甲板、すると船室からコッコッとヒールの音が聞こえた
「何だい騒がしいね!!!」
出てきたのは先程の老婆確か≪Dr.くれは≫と言ったか?
「Dr.くれは!侵入者です!」
「侵入者だぁー?」
くれははサングラスを上にずらし俺とドームの上に集結している獣王達を見る、あいつら何してんだ?ドームの上には完全に変身した十二王達がこちらを睨んでいる、いやいや恐すぎかよ…
「あぁー、そうかいあんただねこの国の王は」
そう言ってゆっくりと近付いてくる
「そこまでだ、何が目的かも分からん奴等を王には近づけさせることは出来ない!」
スノーはその氷のような瞳を吊り上げくれはを威嚇する
「そうかい、じゃあここまでで十分さね…ドルトンちょっと来な!!」
くれはが船室へ向かって叫ぶと中からスコップのような物を背負った大男が現れた
「呼びましたかDr.くれは」
「ほら!この人達を相手するのはあたしじゃ無いだろ!」
「まさか…あなた方が!!!」
ドルトンは凄い速度で駆け寄ってくる、しかしまたしてもスノーに止められる
「お前達は誰だ?返答次第では覚悟して貰うぞ」
「これは申し訳ない、確かにいきなり貴国に押し掛けているのに紹介もまだでしたね…サクラ王国国王ドルトンです、本日は新国になったため隣国に挨拶に回っている所です。貴方の名前を伺っても?」
「あぁ、俺はこの国の国王ゼロ・ガルドラだ」
隣国?確か隣国の名はドラム王国だった筈だが…
「隣国はドラム王国だった筈だが?何かあったのか?」
俺が尋ねるとドルトンは少し苦笑いしながら一言
「ドラムは潰されたのです、一つの海賊団と一人の名医に、そして再興した…まぁ暗い話は終わりにして!やはりあなたがこのロゼーノ王国の国王ですね!」
…ん?何かおかしい気がする
「いやぁー、今まで一度も外交がありませんでしたので連絡手段も無く急に押し掛ける形になってしまい申し訳ないです」
「いや、だからその…」
「あの申し訳ないが港に入港させて頂いても宜しいか?あなたの国を見てどんな隣国なのかを深く知りたい!これからの我々の為に!!!」
あぁ、ダメだこいつ話が通じねぇ…
「分かった、入港を認めるゲートを開けろ!」
俺はドームに向かって叫ぶ、同時に轟音を上げながらその大口をあける城塞港町≪クロニー≫その迫力に思わず言葉を失うドルトンの船の乗組員
「何て事だ…」
「さぁ行くぞ」
「そう言えばここに来る途中によく分かんない島を見つけたよそれも一つの島国のような大きさだった…丁度ロゼーノとサクラ王国の中間地点辺りだったと思うけど?」
…シンのやつもう少し良いところは無かったのか?
「そうか…今度うちの方でも調査隊を派遣させるよ」
「あぁ、でもあの港の入り口にはあんたんとこのあの港に似たような物もあったんだけどねぇ本当に知らないのかい?」
くれはが怪しく笑うと俺も軽く笑い返し何も答えない、多分バレたか…この婆さん油断できねぇな
「後良い忘れたが今から行くのはロゼーノ王国じゃない」
俺は港に船を停めさせる、そして周りを見るように促す
「どういう事だ?」
ドルトンの顔が曇る
「ここは獣神王国、獣人達の住む王国だ」
港町≪クロニー≫に住む人々を見るサクラ王国一行、その目に映るのは巨大な獣が闊歩する石畳、そしてところ狭しと乱立する家々、その中には各家庭の日常が流れている
「これが…獣人の王国」
「ここはロゼーノ王国の筈だろ…何だいこの国の科学力はそれに種族も桁違いだよ」
唖然とする乗組員達を尻目に俺はバレルへと続く大門を開け話はバレルの執務室で行うことにした
「ようこそいらっしゃいました王よ、執務室は開けておりますのでごゆっくりとお使い下さいませ」
バレル代表の鹿王族・ティーノから迎えられる、巫女の服装をしたティーノを見てサクラ王国の連中は鼻の下を最大限に伸ばしている、それもその筈引き締まった肉体に茶色の髪、瞳も茶に染まり角に添えられている二個の鈴、歩く度にシャンシャンと鳴りその歩き方さえも美しい舞を見ている気持ちにさせられる
「なんとお美しい、ゼロ殿こちらの方は?」
「あぁ、この人はここ≪バレル砦≫の代表をしているティーノだ、ここバレル砦は戦闘構成員が殆んど女性だ、逆に男が女のために家事などを行う種族なんだ」
「お初にお目に掛かります、私はここバレル砦の代表の任を任せて頂いている鹿王族・族長ティーノと申します、以後お見知りおきを」
「おぉ、これはこれはご丁寧にサクラ王国のドルトンだ」
ティーノは軽く頭を下げた、俺たちは早速応接室へ向かう事にした、途中セリアに連絡を入れたこいつらの目的はロゼーノ王国だと言うからな、ティーノに足が早い奴を迎えに出した
「さぁ話を聞こうか?」
俺がドカリとソファに腰かけテーブルに腕を組む、次いでティーノは俺の後ろへ回り身の回りに不備が無いかを確認している、そのまだ20代にしか見えないプロポーションで後ろに立たれるととても緊張する
「では、今回突然の訪問の理由をお答えします私たちはこの度ドラム王国の独裁政治から解放され新しくサクラ王国と言う国民を第一に考える王国へと変わりました」
ドルトンは熱く語り始めた
「しかし、私達の王国は軍事力そして生活レベルも高くない、その為周りの隣国に助けを求めたいと考えました。
探していくなかで今まで外交が無かったここロゼーノ王国ならば私達とゼロから関係を築けるのではないかと思いここへ産業並びに軍事同盟を結んで頂きたく参りました」
「そうか、まぁセリアが来るまで飯でも食べて待とう」
俺がティーノに目配せする、ティーノは頷き外へ出た俺は何故この王国を作ったのか等を熱く語り合っていた一時間程たった頃ティーノは親衛隊と共に料理を運んできた
「素晴らしい!!!共存のための国家そして自分達の長所を生かした国家の成立感動しました!」
熱く俺の手を握るドルトン、俺はその手を握り返し親衛隊に机へ料理を運んでもらった
その中に何故かセリアがいた
「いや、セリア何してるんだ?」
「だって将来は私がゼロ様に料理を作るかも知れないし…な、何でも無いです!!!!」
セリアは顔を赤くしながら俺の隣へちょこんと座った
「おぉ、この方がロゼーノ王国の国王にして皇女様ですね」
するとセリアはハッと立ち上がると恭しくスカートの裾を持ち上げ美しいお辞儀をした
「私がロゼーノ王国国王セリア・ロゼーノです、こちらのゼロ王とは幼い頃からの付き合いです」
「そうでしたか、たった今ゼロ殿の建国に大いに共感させていただいた所です」
「そうでしたか…で、この度の訪問の理由は同盟だと伺いましたが間違いないですか?」
「えぇ、我々はロゼーノ王国、そして新たに獣神王国との同盟を結びたいと思っています」
セリアは少し顔を曇らせた
「サクラ王国、あなた方も新しく建国なさると言う事ですか…と言うことはやはり3つの条件を飲まなければいけないのですね?」
「はぁ、お見通しでしたか…ですが我々が出された条件は二つだけでした、国民を二万人以上と王の選定だけなのでもう条件は整っています」
それから俺達はサクラ王国は軍隊が無いことや建築技術が疎く安全な家を作りたいことなどを聞いた
「よし、獣神王国からの同盟条件は二つだ
一つ、建国の推薦を出すこと
二つ、そちらの医療技術の指導
これを守ってくれるのなら我々獣神王国はサクラ王国を同盟国として全力で国防に手を貸そう」
「おぉ是非とも!」
こうして我々はサクラ王国との同盟をむすんだ、これにより建国までのカウントダウンが始まった