最低系チートオリ主がライブでサイリウムを振るお話   作:hotice

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その2

 さて、俺がこの世界がアイマスの世界だと気づいたわけだが、これから原作の彼女達と仲良くなるために、チートフル活用…はしないです。

 アイマスは前世でも好きだったゲームであるが、特に原作に介入したりするつもりはない。

 

 ぶっちゃけた話アイマス世界ならば原作介入をせずとも大した問題は起きないのだ。余り言い方はよくないが、原作で起きる問題なぞちょっとした喧嘩程度だ。

 原作通りにいかなかった結果何十万もの死者が出たりだとか、最悪世界が滅んだりだとかする危険性もない。

 その上彼女達はアイドル。一般人が介入するのにも簡単ではない。

 

 

 え?超絶美形で身体能力チートだからアイドルしたらって?

 正直アイドルなんて若さで突っ走った十代の頃じゃなきゃ目指さないでしょ(暴言)。さすがに前世含めるともうじき50なのにアイドルは、いや~きついっす。

 それに高位の黄金律持ってるから働かなくても一生暮らせるし…。

 

 なので、俺は普通にファンとして応援することにした。765プロのアイドル達を見るだけなら普通にライブに行けばいい話だしな。

 まあ天海はクラスメイトだから色々話しかけるけど。

 

 

 

 それから俺は天海によく話しかけるようにした。もちろん友達の範疇として節度を保った範囲内での話だが。

 それでも天海春香から直接765プロの話を聞けるというのはアイマスファンとして至福の時間であった。

 

 貴音さんがどこどこのラーメンに感動して最近通い詰めているだとか、響ちゃんが新しく飼い始めたペットが可愛らしいとか、伊織が、美希がとかその他いろいろと。

 メディアでは流れていないちょっとした裏事情も教えてもらった。前世の記憶に残っていたものもあったが、大半は知らないことであった。画面外で起こった、前世では決して知りようのない彼女達の物語。

 恐らく俺は前世においても現世においても最も幸せなファンであろう。

 

 

 そして、俺は今驚愕に目を見開いていた。

 

 「春香ちゃん、これって…。」

 「うん、私達の次のライブのチケット。もし良かったら来てくれないかな?」

 そういって差し出されたのは今月の末に行われる765プロのライブのチケットだった。金に飽かせてでも見に行くつもりであったが、まさか最前列のチケットを貰えるとは。それもアイドル直々に。

 

 「もちろん!絶対見に行くって!」

 アイドルのファンとして最高に幸せな状況であった。俺のテンションはこの時少し吹っ切れてしまったのだ。

 転生しようがチートだろうが、俺はなんだかんだいってオタクなのだ。そりゃこんな状況じゃ嬉しくてたまらないに決まってるだろ。

 いつもならしないだろうが、俺はこの時決めたのだ。最高のオタ芸を打つのだと。キレッキレでアクロバティックなオタ芸を最前列で、だ。

 

 そう、括目するがよい。チートの神髄を見せてやろうではないか。

 

 

 

 織谷君にアイドルとして活動していることを知られておらず落ち込みはしたものの、けれど私は直ぐに立ち直った。知られてはいなかったけど、見てくれたならこれからが勝負なのだ。うじうじしてたままじゃ私の輝きで彼を惹きつけることなど出来やしない。

 

 次の日から織谷君は私によく話しかけてくるようになった。恐らく前日のことで私に気を使ってなんだろうけれども、私によく765プロの話をしてきた。昨日は傍から見てもかなり落ち込んでいるように見えたらしく、どうやら織谷君に余計な気を掛けさせてしまったらしかった。

 けれどもさすがは織谷君というべきなのか、恐らく私たちのことなんてちょっと前までほとんど知らなかったはずなのに、すぐに私どころか765プロの他の子たちのことまで把握し始めていた。最近いっきに有名になって765プロの顔となってきた美希や千早だけでなく、所属している全員について大体把握しているのが凄かった。

 

 色んな話をしていたのだけれど途中で少し気になったことがあった。

 多分アイドルの話をしていたら自然と出る言葉だと思う。

 

 「一番好みの人って誰?」なんてことは。

 

 でも私はその言葉を言えなかった。確かにアイドルの私には聞きづらいことだ。織谷君だって他の人が好みでも言いづらいだろう。

 しかし、私が言えなかったのは多分それが理由じゃない…。多分きっとアイドルとしての理由じゃなかった。

 

 胸の中に灯った小さな火を私は見て見ぬ振りをした。きっと止まれないから。本気になってしまうから…。

 だから彼は私の友達で私のファンなのだ。きっとそれでいい。

 

 

 

 「あ、プロデューサーさん。すみませんが次のライブのチケット一枚譲って貰えませんか?」

 関係者の場合多少コネでチケットを譲って貰う事が出来る。私の場合あまりそういうことはしなかったのだが、織谷君にはぜひ一度生のライブを見てほしかった。

 きっとアイドルの私が一番輝いている時だから。

 

 「春香が?珍しいね。家族にあげるのかい?」

 「あ、いや、友達にあげるつもりです。」

 「う~ん、まあ春香なら大丈夫だと思うけど一応気を付けてね?」

 「はい。大丈夫ですよ!」

 

 プロデューサーが言ってるのは友達関係に気を付けろってことで、有名になったアイドルはどうしてもそういったことに気を遣う必要が出てくる。アイドル自身もそうだし、アイドルと仲のいい子もよくやっかみを受けるのだ。だから友達にチケットを渡すだとかそういったことは、別に禁止されているわけではないけどあまりいい顔をされることは少ない。

 

 まあ今回に限ってはそんな心配はいらないけれども。

 織谷君に限って言えば、むしろ私の方がやっかみを受けている。アイドルの私よりも、織谷君の方が高嶺の花扱いされている。まあ本気で狙っている子もかなりいるから高嶺の花とは少し違うのかもしれないけれども。

 

 そうつい先日も隣のクラスに転校生がやって来たのだけれど、これがすごい綺麗な外国人の人なのだ。確かフランスの貴族の子孫らしいのだけれど、何故そんな彼女が日本に来たか。その理由は詳しくは分からないけれどもどうやら織谷君らしい。何やら彼女どころか一族の命の恩人だとか、マフィアとの全面戦争がどうとかちょっと想像のつかない言葉がぽろぽろと出てくるのだ。彼女も全部話すつもりはないらしいのだけれど、それでも漏れ出てくる言葉が不穏すぎてどう考えても高校生が関わった事件には思えないのだ。

 

 しかも、彼女だけじゃない。他にも何人か織谷君に助けてもらったらしい子がいるのだけれど、どれも色々可笑しいというか事件の匂いがするというか。

 これアイマスの話なのに、裏で色々起こりすぎじゃないとかそんな電波がどこかから飛んでくる。

 

 まあ、そんなこんなで学校において私は一応アイドルとして普通の扱いは受けているのだが、それでもまあ織谷君がやっかみをうけることはないだろう。正直アイドルと仲良くなっても織谷君だしで皆済ますだろうし。それに織谷君ならアイドルと仲良くなるくらい写真を事務所に送り付けるだけでアイドルと話せるようになるし…。

 

 結局織谷君にチケットを渡すことに問題はなかった。けれどまさかライブがあんなことになるなんて…。

 


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