ONE PIECE 母は強し   作:ジェイ

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思い付きの続編


2

 息子たちがグレたと思ったら山猿になっていた。と言うか一匹増えてた。そして何故か女山賊ダダンのところで厄介になっていた件について。

 少し母親として自信を無くしそうになった。

 

 「すまないねダダン」

 

 「まったくだよ本当に!この糞餓鬼共があんたやガープの関係者じゃなけりゃ海に放り込んでるさ!」

 

 「そんな事したらてめぇらの四肢を切断して海王類の餌にすんぞババア!」

 

 「だからやってねぇだろ!」

 

 ダダンともこの村に来てからの馴染みで程よい付き合いをさせてもらっていた。お互い好き勝手言い合える悪友の様なものだが、まぁそう悪い仲ではない。

 息子たち山猿共はしばらくダダンの所にいるようなので物資の援助をしながら時々顔合わせと修行をさせていたある日の事だ。

 

 夫から近々この村の近くを通ると連絡がきた。今は少し離れた島にいるので中間地点で落ち合おうとの事だ。

 私は歓喜した。息子たちは愛しているし今は穏やかな日々を遅れていて幸せだと思う。しかし隣には夫がいないのはやはり寂しい。

 その夫から連絡がきたのだ。行かないわけがない。

 

 私は急ぎ準備を済ませ、村の村長、友人のマキノ、そして現在息子たちが世話になってるダダンに挨拶をして少しの間任せることをお願いした。村は比較的安全だし山はダダンの縄張りであるので大丈夫だとおもったからだ。

 

 

 そして私は再び後悔をする。私は全く学ばない糞馬鹿だって事を改めて思い知らされた。子供達を放任し過ぎていた。縛るつもりも辞めさせる事もしないが、せめて何をしているかは把握しておけば良かった。

 

 どうやら子供達は荒くれ共から金品を盗んだり、この国のゴミ棄て場、ありとあらゆる物を、人を棄てる場所で発掘等をしており其なりに金を溜め込んでいたらしい。そして少し有名な海賊に手を出してしまった。

 なんやかんやで無事生き残りはして喜んだ。流石は私の子供達だと。そして同時に悔やまれる。私は母親失格だと。

 

 私があの子達のしていることを把握していればいくら夫に会うためでも島を離れはしなかった。そもそも海賊をこの島に寄せ付ける前に壊滅させた。

 仮に海賊が上陸していようが私がいればどうとでもなったし

 

 

 

 「サボ!しっかりしなさい!まだあんたはいきてんだから!あんたが死ねばルフィが、エースが泣くわよ!」

 

 「酷い怪我だ!早く船医を呼べ!くそ、これがこの世界のやり方か!こんな、こんな事を政府は認めると言うのか!」

 

 気がついたら増えていたルフィの兄貴分でエースの相棒。私にとっては新しく出来た息子の様な存在が世界貴族の乗る船から放たれた砲弾に直撃し、瀕死の重症を負わなかっただろう。

 

 

 サボはもともとこの島の貴族の息子だった。高等な教育を受ける毎日に嫌気がさし家出をし、海に憧れ、息子たちと義兄弟の盃を交わし、ルフィ達と交戦した海賊たちによって連れ戻された。

 そして再び逃げ出し、1人一足先に小船で旅立とうとして海に出たところ、たまたま入国予定だった世界貴族の乗る船に出くわし、何故か撃たれた。

 

 

 私がいれば海賊など壊滅させた。例えサボが連れ戻されても簡単に連れ戻してやれた。何からでも守ってやれた!世界貴族が相手でも、世界を、政府を敵に回してでも守った!それを!

 

 

 「………あんた」

 

 「あぁ、行ってこい」

 

 「止めないの?」

 

 「止めても無駄だろう。それに俺も頭にきた。こんな人を人と思わぬ所業、許せる筈がない。後始末は任せろ。全て革命軍のやったことにする」

 

 「頼むよ」

 

 「任せろ」

 

 

 

 我慢の限界だった。我満に我慢を重ねて生きてきた。元々お尋ね者の私が生きていくには我慢が必要だからだ。

 ある程度は我慢できたのだ。風船の様に膨らんでいっても息抜きをすれば、空気を抜いてやればそれは萎んでいく。時間の経過が落ち着かせる。だが急激な怒りは、ましてや息子の様に思う子にこんなことされれば我慢など、風船など一気に振り切り破裂する!

 

 

 だから

 

 

 私は

 

 

 「塵1つ残さず消えろ」

 

 

 出国した世界貴族の乗る船をこの世界より跡形もなく切り刻んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後サボはどうなったか分からない。夫は直ぐに旅立ってしまったから。しかしあの傷だ。意識不明の出血多量。無事ではすまないだろう。だから私は事実をそのまま伝えた。なんで島から離れていたのかも、全てを

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんで!母ちゃんがいればサボは!」

 

 「やめろルフィ!」

 

 ルフィ殴られた。そしてそれを羽交い締めにして止めるエース。二人は泣いていた。きっと私も泣いているだろう。

 少し前までへなちょこなパンチしか出来なかったのに今のは痛かった。………心が酷く痛い。

 泣いている二人を抱き締めてやりたいのにそんな資格が私にあるのかと自問自答してしまう。抱き締められたいのにそんな資格はないと自己否定してしまう。

 

 ダダンが泣いていた。山賊達も泣いている。マキノも村長もみんなみんな泣いていた。

 悪餓鬼だった。人に迷惑もかけた。それでもあの子は皆に愛されていた。そんなあの子は私が島を離れていたばかりに

 

 

 

 「八つ当たりしてんじゃねぇ!悲しいのはお前だけじゃねぇ!おふくろだって泣いてんだぞ!」

 

 「で、でも母ちゃんすげー強くて。じいちゃんにだって負けないくらい」

 

 「だから辛いんだよ!そんくらい分かれよ!俺達の母さんだろ!」

 

 駄目だった。気がつけば膝をついて両手で顔を覆っていた。マキノが慌てた様に私に駆け寄るがエースは言い足りないと言わんばかりに叫ぶ。

 

 「おふくろがサボを見殺しにしたと思ってんのか!?んなわけねぇだろ!おふくろが旦那に会いてぇと思ってそんなにおかしいのか!?俺達の母さんはそんなに人間じゃねぇ奴なのか?ちげぇだろ!どんなに強くても、どんなに化け物みたいな奴でもおふくろは人間なんだよ!見てて分かんなかったのかよ!おふくろはサボの事も俺達みたいに大好きだったんだよ!そんくらいわかって________」

 

 「エース、もうやめて。私が悪いんだ。夫に会いたかったんだ。好きだから、愛しているからたまにしか会えないから少しでも長く一緒にいたくて」

 

 ボロボロと涙が止まらない。手のひらから溢れた涙は床に水溜まりを作り初めそれは少しずつ広がりを見せる。

 

 「あんたたちに自慢したかった。私の夫はこんなに凄いんだぞって。夫に自慢したかった。私達の子供はこんなに強く育ったって。私の甥はこんなに立派になってるって!新しい子はこんなにも賢い子なんだって!みんなみんな私の自慢な子供なんだって!!」

 

 静かだった。私だけが独り言の様に叫んでいた。

 

 暴れていたルフィとも、それを止めていたエースもみんなみんな静かだった。どんな顔をしているか、それも顔を両手で覆っている私には分からない。

 

 「あの糞共は消したのに、心が晴れない。世界貴族も、護衛の海軍達も全員塵にしたのに心が全く晴れねぇ!心にポッカリ穴が空いたみたいに虚しいよ!ねぇ!何でサボがあんな目にあうんだよ!あの子は確かに悪餓鬼だったけど良い子だ!優しい子だ!なのに!………………サボぉ。ごめんよ、私が、私が」

 

 

 ある意味で私にとっては初めての喪失だった。

 

 仲間を失ったことはある。兄だって失った。でも皆自分の中の夢を追いかけて、夢を叶えて逝った。夢半ばでもそれを全力で追いかけていた。

 でもあの子は違う。夢に踏み出そうとして踏みにじられた。それが私にとってはつらい。

 私は彼等に守られていた。あの子は私が守らなきゃいけなかった!それが、それが!

 

 

 

 「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーー!がぁぢゃ゛ん゛ごべん゛だざい゛ぃぃぃぃーーーー!」

 

 とん、と軽い衝撃はルフィのものだった。エースを振り切って私に駆け寄って、抱き締めてくれた。

 

 「お、おで、ザボがいないの嫌で!があ゛ぢゃんのぜいにじて、母ちゃんのごどずぎなのに゛殴って゛!があぢゃん悪ぐねぇのに!おで最悪だ!」

 

 「ルフィ!ごめんね、ごめんね」

 

 「おで、づよぐなるがら!なんでもぶっどばせるぐらいづよぐなる!母ちゃん泣かせるやづもみんなぶっどばしでやるから、泣かないでよ、母ちゃん!」

 

 「っ!!ありがとう、ごめんね、ありがとう、ごめんね」

 

 強く抱き締め返した。思えば久々かもしれない。長くこの子を抱き締めてあげてなかったと思える。ほんの数ヶ月の事なのに数年の様に感じる。

 そしてふと背後から暖かい温もりを感じた。

 

 「ありがとう、おふくろ。親父の事はまだ許せねぇけどあんたは俺の自慢の母親だ。俺達を愛してくれてありがとう」

 

 声で分かる。エースだ。あのひねくれた餓鬼が私を抱いている。優しく暖かく。

 

 「俺も強くなるよ。おふくろを泣かせない様に。俺達は死なない。それにサボだって死んでない。あんたの自慢の夫が匿ったんだろ?なら生きてるはずだ!だからいずれ海で再会するんだ!兄弟なんだ、いつか出会っておふくろに会わせてやる!そのためにもルフィ!」

 

 「お゛う゛!」

 

 「俺達は誰にも負けない男になる!」

 

 「お゛う゛!」

 

 まったく本当に大した子達だ。本当に自慢の子供達だよ。

 

 だから私も覚悟を決めよう。可愛い子供達と随分甘やかしてきた。

 

 「………分かったよ。あんたたち」

 

 一度強く胸に二人を抱く。二人の香りをかぎ、記憶に残す。そして順々にその額にキスをして

 

 「明日から本格的に強くしてやる。そこらの山賊も、海賊も、近海の主も、グランドラインに蔓延る猛者共にも負けない強さをこの私、海賊王ゴール・D・ロジャーの妹にしてロジャー海賊団で2番隊隊長、2つ名を殲滅姫ゴール・D・アデル、現在をモンキー・D・アデルが鍛えてやる!覚悟しな!」

 

 

 泣き顔のまま笑ってやった。

 

 

 

 




幼少へん終了

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