ONE PIECE 母は強し   作:ジェイ

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生き抜きと思い付き小説でふ




 気がつけば私は船の上にいた。荒波にまみれ、海の生物を相手に同じく海の頂点を目指す海賊を相手にしながら兄であるゴール・D・ロジャーの船員として船の上で闘っていた。

 親はいない。当然だ。兄の話では親は両親共に薬物中毒でそれに嫌気が差した兄が20歳の頃に産まれたばかりの私を連れて海に出たらしいからだ。つまり私と兄は20歳離れた兄妹である。随分とおさかんな両親である。

 ちなみにその時の両親は廃人寸前だったため兄は私を連れて海へ出たそうだ。

 

 

 兄は強かった。赤子だった私に記憶はないが、私を胸に抱きながら次々と海賊や力自慢の猛者を制圧し配下に加えていった。これは副船長のレイリーから聞いた話だが私が物心つくまで常に腕に抱いていたらしい。

 

 

 

 

 私にはとあるの力があった。

 キリキリの能力。自分が認識したものをありとあらゆる物を切り裂く力。

 どうやら兄は私に与える食料として悪魔の実をすりつぶして与えていたらしい。

 後から聞けば「いやー、そんときは生きるのに必死でおめぇーに極力食いもん与えてたんだがそれが悪魔の実とは思ってなかった!」と来たもんだ。つまり私は離乳食として悪魔の実を食べてたらしい。

 

 ちなみに悪魔の実とは超上的な能力を人に与える果実であり、一口口にすれば能力を得る反面海に嫌われる、つまり海では何の力も発揮できないどころか泳ぐ力さえ失われる。つまりカナヅチになる。海賊としては致命的であるが、まぁそれなりの力はあると自負している。

 

 ともかく船長の兄を支えながら数年がたつ。少ない女船員と仲良くしながら野蛮で気の良い野郎共と航海を楽しむ日々。充実していた。海軍との闘いはあったものの、他の海賊を蹂躙していくものの、目的は変わらずあった。最果てだ。海の最後。最終目的地で兄はそれを見た。

 

 そして海賊団。最強の海賊団は解散した。

 

 兄は愛すべき人を見つけた。団員はちりじりになった。

 そして兄は処刑された。海賊王として笑って。

 

 兄を捕らえたのは海軍の英雄ガープ。幾度も私達と戦を繰り広げ戦い抜いた戦友だ。

 海賊と海軍の間ではあったがそこには友情があった。事実兄は自身の妻子をガープに、実妹の私ではなく敵であったはずのガープに任せた。

 

 まぁ仕方ない。この時私はとある男に出会い恋に落ちていた。

 

 荒くれものである私を受け入れ、処刑される海賊王の元クルーでその妹。それを受け入れるなど正気の沙汰ではない。それがその海賊王を捕らえた英雄の息子とあらばなおのことだろう。

 

 私達は立場の関係上離れて過ごした。長い月日を重ねて、そして子供が産まれた。

 

 彼、ドラゴンは世界の在り方に疑問を感じ革命軍を設立した。私も彼に賛同したが彼から「ルフィと共に健やかにすごしてくれ。俺の道は険しい。お前とこの子には、せめてやさしい時を。俺のささやかな願いだ」そう言われては何も言えなかった。おかしな話だ。世界を混沌とさせた海賊王の妹にこんな事を言えるとは。流石は我が夫だと思う。

 

 

 

 数年がたち私達はゆっくりとした日々を過ごす。

 

 息子のルフィは元気に育ち、誰に似たのか大分ヤンチャだ。まぁ時々会いにくるガープの影響もあるだろう。私が鍛えてはいるもののガープが来たときは私が貸す訓練の比ではないほどボロボロになってよく泣きついてきた。そのおかげで私はよくガープと殺し合いになった。

 

 「私の息子になにしてんだくそ爺!」

 

 「わしの孫じゃー!強い海兵にするための修行じゃ!」

 

 「だからって3歳の子供を谷に落とすなよ!?私の子じゃなけりゃ死んでるぞ!」

 

 「んむ?エースは無事じゃったんだが………死にかけてたが」

 

 「この爺!兄さんの子供に何してやがる!」

 

 この時、改めて兄の、そしてその妻の忘れ形見エースを引き取る事を決めた。エースを探しだし保護したガープには感謝するがこの義父はメチャクチャすぎる。夫があそこまで強くなり政府に疑問を持つのはこのくそ爺の影響があったのは間違いないと思う。

 

 

 

 さらに数年。息子たちがグレた。

 エースは前々から、と言うか引き取った時から私に反発的だったがルフィはとある海賊に出会ってからかなり変わった。

 まずその海賊が問題だった。いや、比較的良識的で私の後輩にあたる人物ではあったが。

 

 「姐さん!何故ここに!?」

 

 「よぉシャンクス。久々だね」

 

 「母ちゃん知り合い?」

 

 「あぁ、昔のツレだよ」

 

 たまたま夕食作るのが面倒になりルフィとエースを連れて町の酒屋、友人のマキノが営む店に出向いたところ昔馴染みの、兄の元クルーに出くわしてからだろう。

 

 「母ちゃんって!?姐さん子供がいたんすか?」

 

 「おう。今や子育ての真っ最中だぜ。兄さんの子もな」

 

 「!!船長の!?」

 

 「おい、エース。挨拶しろ。お前の親父をよく知る、お前を認めてくれる人だぞ」

 

 「!!??」

 

 この時エースは不安定だった。誰もが海賊王ゴールド・ロジャーを否定していたから。いくら私が、ルフィが親愛を注ごうともあくまでそれは親類の愛情。他人から認められない親に対してエースは父親に憎しみすら持っていたからだ。

 

 「まぁそうだよな。俺達は勿論船長も立派な悪人だ。それもあの人は世界最大の悪人海賊王だ。だが俺はそれを誇りに思う。あの人は誰にも成し遂げない偉業を成し遂げた偉人だ!誇りをもて!お前は誰より誇り高い人の血を継いだ子で、その妹に育てられてるんだぞ?まったく羨ましい!俺もそんな親父と義母に恵まれたかったぜ!」

 

 エースは困惑しただろう。何せこの時まで私はあくまでガープの息子の嫁としか認識されていなかった。だからエースの叔母であると知らなかった。教えてもいなかった。

 

 「おふくろ、なんで」

 

 「シャンクス。余計なこと言うなよ。兄さん事は知られるのはエースのことは勿論ルフィの事もまずいんだよ。まぁエースは父親の事は知ってるけど。あのくそ爺のせいで」

 

 「わ、わりぃ」

 

 「あ、マキノ!今のしぃーな?」

 

 「ふふ、このフーシャ村では知らない人のほうが少ないから安心して。貴女の事はおかげでこの村は平和なのだし気にしないで」

 

 「はは、助かる」

 

 ちなみにこの後妙にシャンクスになついたルフィとエースはちょこちょこシャンクス及びクルー達に付きまとっていた。

 これ幸いに私は子供達をシャンクスに預け近場の海を荒らす海賊共を片付け賞金稼ぎ紛いな事をしていた。そして後悔をした。

 

 私が数日離れてる間にルフィは悪魔の実をシャンクスの私物から食べてしまった。それはまだよかった。

 問題は私がいない間を見計らった山賊が村を襲い、無事撃退出来たもののシャンクスは方腕を失った。

 経緯はシャンクス達が酒場で楽しんでいるところを山賊がそこに絡む。シャンクスは穏便に済ませようとするが海賊に多大な期待を寄せていたルフィとエースがそれらに反発し、二人は海に投げ込まれた。

 ルフィは泳げなくなったためエースが必死に助けようとするが流石に鍛えていても子供の体力ではどうしようもなく、息をするために浮かぶので精一杯。そこに近海の主が、海に住む巨大な海獣、海王類が現れた。

 その時山賊の棟梁は海王類に食われたようだがそれでは足りない主はルフィとエースに食いかかり、シャンクスに助けられた。

 

 

 「シャンクス!ありがとう!本当にありがとう!子供達を助けてくれて!そしてすまない」

 

 「姐さん。泣くなよ。こいつらは新時代の鍵だ。片腕くらい惜しくねぇ」

 

 「それでもだ!こいつらが私の宝であると同時にお前だって俺の大切な弟分で、兄さんの意思を継ぐ忘れ形見だ!」

 

 「はっ!嬉しい事を言ってくれるぜ。じゃあ俺もその言葉に答えなきゃな!おいルフィ!」

 

 「ぐすっ、え?」

 

 「お前にはこれをくれてやる」

 

 「むぎ、わら帽子?」

 

 「おう。俺のお気に入りだ。つまり俺の魂が籠ってる。大切にしろよ?そしてエース」

 

 「くっ。なんだよ。お、俺は助けてなんて」

 

 「はっ、強がりな所は船長そっくりだ。そんなお前にはこれだ」

 

 「ナイフ?」

 

 「ああ、俺が船長から頂いた大切なナイフだ。俺の誇りだ!」

 

 「俺は腕を失った!だが代わりに守れたものがある!それはお前らだ!そして俺の意思を、誇りをお前らに託す!……………強くなれよ?」

 

 

 

 泣いた。皆が泣いた。

 不甲斐ない己を。強い意思を持つ男に。守られた己たちを。あまりに美しく気高いその男に村人も船員も、そして私も。

 

 「まったく良い男だよ。お前は。旦那に会ってなければ惚れてたさ」

 

 「は。光栄だよ姐さん。まっ、片腕なくても俺は強いから安心しな」

 

 強くシャンクスを抱き締めながら言う。本当に良い男だ。こいつだってまだ若いだろうに。だがこいつは腕が片方ないくらいでどうこうする輩でないのは私がよくしっている。

 

 だから

 

 「あんたが守った命。粗末にはさせない。誰より強い男に育てるよ。シャンクス、あんたよりもね」

 

 「そりゃー怖い。俺はもっと強くならなけりゃ行けねぇな。それも船長並みにね」

 

 「安心しな。少なくとも私より強い男にしてやる」

 

 「……は、はは。姐さんより、か。俺大丈夫か?」

 

 「ガープ倒せれば問題ないよ。つーかアイツ殺してきてくんない?爺馬鹿すぎてウザいんだけど」

 

 「勘弁してくれ」

 

 

 

 

 そんなこんなで息子たちは強くなると山籠りを始め家に帰って来なくなった。

 正にグレた。


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