やはりセルデシアでも、俺の青春ラブコメはまちがっている。   作:カモシカ

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四話 腹ぐろメガネ

「……知らない天井だ」

 

 何となくそう呟いてはみたものの、何故見知らぬ天井を見ているのかはすぐに分かった。昨日の事なのだから思い出せて当たり前ではあるが、それが昨日の事が夢ではないのだと認識させる。

 

 ゆっくりとベッドから這い出て、寝間着から部屋着へと着替える。普段通りならパジャマで構わないのだが、今は俺と小町の他に五人の女の子が居るのだ。下手な事は出来ない。下手したら衛兵呼ばれる。

 

 部屋のドアを開け、今日すべき事を思い浮かべる。少なくとも、生命線となる特技の使用が出来ることは確認したし、食事も味はともかく腹も膨れる。今の所体に異常も無いことから、一先ず無害なものと考えて良いだろう。下着は無いが、部屋着や寝巻きなんかは俺が持っていたのがある。衣食住の目処が着いたのなら、次に必要なのは情報だ。

 

 そして、こと情報に掛けては、あの人に頼るのが良いだろう。あの───『腹黒メガネ』に。

 

 

 

 

 

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『腹黒メガネ』

 そう呼ばれるプレイヤーが居た。本人は否定するだろうが、俺自身その二つ名は妥当だと思う。対人、対モンスター共に参謀として、或いは支援役として、超一流の人物だ。だが腹黒メガネと呼ばれる位なのだから、勿論性格悪い作戦で敵を制圧していく。『遠回りに見えて最短距離』、それが彼の立てる作戦だ。

 

『ハチマン君!?ハチマン君なのか!?』

 

 そんな評価からも分かるように、ここまで感情を露わにするのは結構少ない。ましてやその対象が自分ともなれば最早天変地異である。……それは言い過ぎか。

 

「はい。正真正銘ハチマンですよ」

『そっか……フレンドリストには表示されていたから連絡を取ろうとしていたんだけどね……遅れてゴメン』

「いえいえ。我らが参謀殿が、こんな状況で情報集めに動かないハズがありませんから。俺は気にしてませんよ」

『うっ……さ、参謀殿はやめて……』

 

 ゲーム時代と変わらないシロエさんに安心しつつも、今はそんな状況では無いことを思い出し、情報交換を進めることにする。幾つか確認したいことや知らせたい事があるのだ。

 

「それで、ここからが本題なのですが」

『うん。何かな?』

「俺達は昨日一日を使って、特技及び一部のアイテムが使用可能かを確認しました。そこで気になる事を幾つか見付けましたので、情報交換も兼ねて会いたいなと」

『そっか……分かった。ハチマン君の家に行けば良いのかな?』

「はい。俺の他にも何人か居るので紹介もしたいですし」

『そっか。了解。後、直継も連れて行って良いかな?』

「直継もって……あいつ復帰したんですか!?」

『あはは、そりゃ驚くよね……まあ、その話もおいおい』

「……分かりました」

 

 衝撃の事実が発覚したが、ともあれ、これで情報についてはある程度どうにかなるだろう。

 

 

 

 

 

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 玄関扉がノックされる。シロエさん達が到着したのだろう。ホワイトリストには入れているのでそのまま入ってくれても良いとは思うが、シロエさんは茶会でも貴重な常識人だったのでこうなるだろうとも考えていた。

 

 応接室で一緒に待機していた小町たちの視線を受け、シロエさん達を迎えに行く。遂に、対面だ。

 

「……ようこそ。シロエさん、直継」

「うん。お邪魔します」

「久しぶりだな、ハチ!」

 

 シロエさんは落ち着いて、直継は元気に。《放蕩者の茶会》にて出会った、恐らく初めての友人達。利や損得勘定の付き合いではない、友。本人達には恥ずかしくて言えないが、こうしてまた出会えた事に関しては、この事態に感謝したくなった。

 

「おう。何だ……その、変わんねぇな。直継は」

「はっはっはー!いつでも何処でもおぱんつを求める。それが俺だ!」

「そういうとこは変わっていいのに……」

 

 直継は場を明るくしようと、態とこうやってふざけている節がある。そうと分かっていてもこういう手合いは良く分からない俺にとって、直継のフォローは嬉しいものだ。

 

「じゃ、案内するよ。俺の──いや、俺達の家を」

 

 

 

 

 

 

 

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 まずは自己紹介。シロエさん達の事を知ってるのは俺だけだからな。

 

「早速だが、この二人がシロエさんと直継。俺の……その……友人だ」

 

 そう、応接室に集まった小町達に告げる。固まる小町達。雪ノ下含め全員がぽかんとしている。珍しい。そんなに俺が友人だって言ったのが驚きか。そうだね。俺もそう思う。

 

「お、おおおおお兄ちゃん!?大丈夫!?本当の本当にお兄ちゃんに友達なんか居るの!?ていうかこれ現実!?夢じゃない!?」

「……ひでぇ」

 

 小町はいきなり立ち上がると大声でそんなことを言い出す。いやまあ俺が友達連れてくるとかこの面子からしたら天変地異もいい所だろうけどそこまで言わんでも……いや、やっぱ妥当か。むしろ軽めかも。

 

「あはは、ハチマン君は相変わらずらしいね……」

「つーかハチ、お前何でこんなかわい子ちゃんを連れてんだ!?返答によっては容赦しないぞつーか羨ましいぞ!!」

「うん。取り敢えずお前は黙れ」

 

 喚く直継を放って、それぞれにそれぞれを紹介する。小町が感動の余り泣いていたので、そこだけ何か悲しかった。俺に友達が居たのがそんなに嬉しいか。

 

 だがまあ、これでこっちでも何とかなるだろう。幸いな事に、ここにはトッププレイヤーが三人居る。一人は長いブランクがあると言っても、未だに一級品のタンクだ。戦闘力でも人脈でも、頼りになるだろう。

 こうして、かつての仲間がもう一度集った。まだパーティ全員が揃ったわけでは無い。だがこれが、この世界に俺達が巻き起こす新風の、その始まりだった。




俺ガイル12巻読みました!ネタバレは好きじゃ無いので多くは語りませんが……うん。サキサキと小町が可愛ええ。

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