やはりセルデシアでも、俺の青春ラブコメはまちがっている。   作:カモシカ

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二話 特技確認 ハチマンのターン

 メイド姉妹や女性陣に罵られながらも寝床を確保した俺。何で自分の家でダメージ食らってんだろーなー、あっはっはっー。 ……はぁ。

 

 そんなこんなで有り余る客室をそれぞれ各自に割り振り、取り合えずの安全は確保した。俺の家の中での戦闘行為は禁止にしたし、俺が許可したプ レイヤー以外入れないようになっているのも確認した。

 

 さて、次にすることと言えば

 

 

「よし、〈特技〉を確認しよう」

 

 

 ……レッツ戦闘訓練!

 

 

 

 ****

 

 

 

 というわけで俺は我が家の屋上に来ている。十メートル×十メートルくらいの広さはあるので確認には打ってつけだ。

 

「お兄ちゃーん、確認って言ったって何するの?」

 

 柵で囲われた屋上の隅っこ。そこに俺がゲーム時代に設置した椅子に小町達が座っている。そしていきなり屋上で刀を構えた俺にもっともな疑問をぶつけてくる。

 

「いや、ここがエルダーテイルなんだとしたら町の外には敵が居る。幸い俺はレベル90だが、戦闘経験なんて欠片も無いんだ。なら使える手札は把握しとくべきだろ」

「なるほど、比企谷くんにしては考えているじゃない」

「お前俺なんていっつも色々考えてるからな?ぼっち舐めん……」

「ヒッキー?」

「ごめんなさい僕ぼっちじゃないです。友達一杯毎日たっのしー!」

 

 ガハマさんの威圧が怖い。三年に上がってからちょくちょくこういうことがあったので既に対処法は確立した。

 

「せんぱい……キモ」

「マジトーンはやめい」

 

 一色に引かれながらも何とか威圧は収まったので良しとする。

 

「さて、やるか……」

 

 とは言ったもののここで使える危なくなさそうな『特技』って何かあるか?……まあ、小町達の方に剣を向けなければ良いのか。

 

「……取り合えず〈ガストステップ〉」

 

 一瞬のタメの後、ゲームだった頃には良く使っていた〈特技〉、〈ガストステップ〉が発動する。ゲーム時代と同じ姿勢で発動させたその『特技』は、俺を一陣の風とし、視認できない速度で五メートルほどを駆ける。……うん、やっぱレベル90ってすげーな。というかアプデが適応されてたら上限は上がってるか。

 

「……〈デッドリーダンス〉……〈デッドリーダンス〉」

 

 左手の刀を仮想の敵に降り下ろし、〈デッドリーダンス〉の発動条件を満たして特技を発動させる。直前の一撃を布石とし、意識外から舞うように一撃を繰り出す。しかしこの特技は些か特殊なもので、〈再使用規制時間(リキャスト・タイム)〉は一秒と短く、連続で使用することにより、威力と精度が上昇していくのだ。

 ともかくこれで攻撃特技が使用可能なのも確認したし、連続使用も問題なく行える。

 

「……戦闘特技は使えるか、ならサブ職の方はどうなんだ?」

 

 俺のサブ職業は【調教師】。モンスターを餌付けしたりして調教(テイム)し、召喚笛を取得する事が出来る。

 というわけで検証のため、俺は【ダザネックの魔法の鞄(マジックバッグ)】から【闇狼王子(やみろうおうじ)の召喚笛】を取り出す。闇狼王子なんて大仰な名前がついてはいるが、実際は只のちょっとばかしデカくて真っ黒なだけの魔狂狼(ダイアウルフ)だ。詳しい場所は忘れたが、何処かの無人島で見つけたモンスターだ。短時間なら戦闘に参加してくれるので重用していた。

 

 俺はその笛をくわえ、静かな、それでいてどこか緊張感を孕んだ音を響かせる。良く考えたらサブ職の特技ではなくアイテムなのだが、どうせ確認するのだから同じだろう。寧ろ調教したモンスターが来てくれなければ【調教師】の特技など意味がないどころか使えもしない。

 

 俺の奇行に続く奇行に言葉もでないようで、コマチ達はただただ俺をぼうっと見つめるだけだ。

 

 数瞬の後、魔法によって屋上に闇狼王子は現れた。王子なだけあってその堂々とした立ち姿には気品すら漂う。

 

『何用か、我が主にして闇狼の友たるハチマンよ』

「……え」

『む?どうしたのだハチマンよ。何を驚いている?呼んだのはお主であろう』

「いや、えと」

『……煮えきらぬな。何かあったのか?』

 

 いや、何?これ。色々理解出来てないんだけれども。まあまずは、

 

「……喋った」

『む?何を今更。我とお主の仲であろう。言葉を交わすなど当たり前だ』

「いや、でも今までこんな饒舌じゃ無かったし」

『ふむ……言われてみればここまでお主と長く話した記憶は無いな。というかお主が喋らぬものだから我も無理に会話をしようとしなかっただけ故な』

「お、おう……何か悪いな。気を使わせたみたいで」

『何、気にすることなど無い。お主は我らを救った。その恩がある限り、我らはお主の友であり家臣だ。友の、主のことを迷惑に思うことなど有り得ぬ』

「あ、あぁ……」

 

 そう。俺がこいつを手に入れたのはとあるクエストでだ。【調教師】レベルをカンストさせる為に必要だったクエスト。詳しい内容は割愛するが、その過程で闇狼族を救うことになったのは事実だし、クエストの報酬としてこいつを調教(テイム)できたのだ。

 まあそれはさておき、

 

「えっと……もう気づいてるかもしれんが、俺達冒険者に異常事態が起こってる」

『……ふむ、確かに些か冒険者の人数が多い上にどうやら混乱しているように見える』

 

 屋上からアキバの街を覗き込み、闇狼王子はそう答える。でも覗き込むのは止めて欲しい。混乱が広がる。

 

「ああ。何が起こったのかは分からんが、結論として俺達は本来の住処に帰れなくなった」

『それはまた……』

「まあそんな異常事態だからこそ、ちゃんとお前を呼べるか試したんだ。結果としては問題ないから良かったけどな」

『はは、相も変わらず我が主は慎重だ』

「はっ、じゃなきゃ冒険者なんてできねーっつの。街から出りゃあモンスターも居るし、何より今日からは仲間がいるからな」

 

 そう言って、相変わらず放心している小町達の方を向く。それに釣られたように、闇狼王子もまた小町達の方に向き直る。

 

『ふむ、彼女達がそうであるのだな』

「おう。左から順に妹のコマチ、後輩のイロハ、後はユキノにユイだ」

『ほう……我が主も隅に置けぬな。かように見目麗しき者の仲間とは』

「からかうなっつの」

『はっはっはっ、まあ自己紹介でもしようかの』

 

 そう言うと、ゆっくりと小町達の前に歩み出て、柔らかな声で自己紹介を始める。

 

『始めましてであるな。我の名はガロウ。闇狼族の王子をやっている。ハチマンには昔我ら一族を救われてな。それ以来我はハチマンの友にして家臣をやっている。これからは何かと接する機会も増えるであろう。よろしく頼むぞ』

 

 そう言うと、闇狼王子――ガロウ――は静かに頭を下げる。俺達冒険者の挨拶に合わせてくれたのだろう。本来彼らはおじき等しないのだから。

 だが小町をはじめとした女性陣は未だに固まっている。だがそこは部長としての矜持か、はたまた彼女自身の負けず嫌いからか、雪ノ下が少しの後復活し、自己紹介を返す。

 

「始めまして、ガロウさん。私はユキノ。そこの比企谷くん……いえ、ハ、ハチマンくんとは……友達……?知り合い……というほど浅い付き合いでも無いし……」

『ふむ。ユキノ嬢は我が友の友達でも知り合いでもないのなら……要するに妻か』

「なっ、い、いやっ、違う。違うわ。仲間よ仲間」

『ふむ?そうであったか。これは失礼をした。すまぬ』

「い、いえ。別に良いのよ……妻、ね

 

 何やら勘違いも起きたようだが、取り合えず雪ノ下の自己紹介は終わった。

 

 後の小町達も大体同じ感じだったのでここでは割愛したいと思う。まだ特技の確認は終わってないしな。




何かここおかしくね?という部分があったら教えてくださると助かります。極力原作の設定に沿うようにはしてるのですが……

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