やはりセルデシアでも、俺の青春ラブコメはまちがっている。 作:カモシカ
書きたいとこまではぽんぽん進めます。ご容赦ください。
「ねえヒッキー、《エルダーテイル》って知ってる?」
それぞれ志望の大学に合格し、ほっと一息吐いた今日この頃。俺たち(奉仕部三人プラス一色と小町)は部室に集まり、ささやかなパーティーをしていた。ここ一年でメキメキ力をつけ、一番の心配だった由比ヶ浜も志望大学に受かり、俺達は揃いも揃って喜んだ。もうホントに。毎日雪ノ下にしごかれてたのに受からなかったら不憫すぎる。
さて、そんな由比ヶ浜だったが、何故か俺にとって馴染み深いタイトルを話題にしてきたのである。
「ああ、勿論だ。ていうかやってた」
「あー何か聞いたことあると思ったらお兄ちゃんがやってたゲームだねー。いつもはろくに喋れないくせしてチャットだと饒舌だったり……そんなお兄ちゃんが今やこんな美人さん達と……」
「おい、やめろ。そんな生暖かい目で見るな」
小町が二年前、つまり高校一年生の頃の俺を思い出しながら、染々と言う。
とは言え俺も、曲がりなりにもあのゲームで勇名を馳せたゲーマー集団の端くれであった誇りがある。確かに画面の中の出来事でしか無いし、世間の大多数の人は無駄だと断じるであろう事だ。だが、バカだらけのあの世界で、いつも戦友達と見た新しい景色というのは今も俺の大切な思い出となっている。
「……ていうか、何で由比ヶ浜は《エルダーテイル》のこと知ってんだ?」
「あー、お父さんが《エルダーテイル》の体験チケット貰ってきてさ。お父さんもお母さんもゲームとかしないし、あたしも良く分かんないからヒッキーにあげよっかなーって」
「ほーん。気持ちは嬉しいが、俺は既にキャラクター作っちまってるからいらんわ」
「そっかー。ならどうしよっか」
「結衣先輩、そのチケットって何枚ぐらいあるんですかね?」
由比ヶ浜がチケットの処分に悩んでいると、それまで雪ノ下と話していた一色が唐突に聞いてくる。
「え?えーっと、いち、にい、さん、よん……四枚だよ?」
「何故疑問形なの……」
「普通に数えてただろ……」
「まあまあ良いじゃないですか。折角のパーティーですし、細かいことはどーでも」
「はぁ……まあ良いわ。それで、チケットの枚数が何か関係あるのかしら?」
「ええまあ。丁度四枚あるみたいですし、折角だからこの場の皆でやってみましょうよ」
とまあそんなこんなで俺たち五人で《エルダーテイル》をやることになった。
その日は卒業式前の最後の金曜日と言うこともあり、全員で深夜までゲームしてやろうぜということになった。何の偶然か、今日は十二番目の拡張パック《ノウアスフィアの開墾》の導入日だったのである。とまあそんな訳で雪ノ下の家に集まり、それぞれが持ち込んだPCで《エルダーテイル》をプレイすることになった。
だがこのときの俺たちは、よもやあんな事が起きるとは夢にも思わなかったのである。